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「経済コラムマガジン 07/7/31(492号)
07年参議院選挙の結果
・自民の一人区での大敗
注目の参議院選挙が終わった。ご存じの通り、自民党の大敗、民主党の大躍進という結果になった。参議院選の大事な点は、参議院議員の任期が6年と長く、大敗や大勝の結果がその後の政局に長く影響することである。自民党は、たとえ与党の立場にいたとしても3年後の参議員選でよほどの大勝(これは無理)をしない限り、6年間という長い間参議院の運営で苦労することになる。
一方民主党は、3年後の参議院選挙で仮に単独で過半数の議席を取れなくことも他党と連立を組めば、6年間の間に衆議院選挙で勝つことによって、比較的簡単に両院を制することができる。つまり今後6年間の間に民主党が政権党に就く可能性が極めて大きくなったのである。反対に自民党が野党に転落する可能性が出てきた。この意味で今回の参議員選は重要であった。
今回の選挙結果について、各種のメディアは各方面から分析をしている。これらはそれなりに面白く興味深い。一方、データもあまり揃ってなく、時間もないので、本誌が大手メディア並の分析を行うことは無理である。そこでまず先週号で取上げた「参議員選の注目点」のフォローを行うことにしたい。
第一の注目点は、自民党の支持層がどうなったかである。従来の自民党支持者の自民党離れが進んだことは確実である。地方の一人区の苦戦を見ればこのことがはっきりしている。これまで自民党にしか投票していなった人々が、かなり民主党などの他党に票を移している。
ところが比例区に限った場合、自民党の退潮現象がはっきり見えない。自民党の今回の獲得投票数は1,655万票であり、04年の前回の選挙に比べ、わずか25万票しか減っていない。たしかに投票率が少し上がっているので苦戦しているのは事実であるが、当選者はわずか一人減った程度であった。
筆者は、これは先の衆議院選挙の名残りの影響と見ている。05年の郵政改革選挙で自民党は、空前の大勝利を得た。この時に自民党は比例区で2,604万票というとんでもない大量票を獲得した。比例区は衆議院と参議院で制度が違い単純に比較できないが、先の衆議院選挙で自民党と書いた人が極めて多かったことは事実である。
これは先の衆議院選で自民党が大量の浮動票の獲得に成功したからである。この選挙で自民党は従来からの票を減らしていたが、新規の票を大量に得た。いわゆるB層の大量投票が自民党に流れたのである。過去に投票したこともない人々がこぞって自民党に投票したのである。筆者は、千万票までは行かないとしてもそれに近い新規の票を自民党が獲得したと見ている。
このにわか自民党支持者の投票が今回の選挙でいきなりゼロになったとは考えられない。2割から3割くらいは、今回の参議院選挙でも自民党に入ったのではないかと推測している。しかしこの筆者の推測が正しければ、自民党は従来からの支持層の方の票をさらに失っていることになる。
B層などの新規の支持者は主に複数区の都会に住んでおり、従来からの自民党支持者が一人区の地方に住んでいるとしたなら、この説明が今回の選挙結果と符合する。もっとも自民党は、地方を切捨てて、公明党と都会の浮動票に頼る選挙戦術を採るようになった。そして地方の人々はこの自民党の戦術転換に気がついているのである。しかしこの戦術転換は自民党の自滅への道になる。次回の選挙ではもっと地方の票を失い、あてにならない浮動票に頼ることになる。
筆者は、小泉政権下の前回の04年の参議院選挙でも今回と同じ流れになっていたと見ている。自民党は前回の選挙で一人区は辛うじて半分の議席を得たが、これは公明党が最後に強力なテコ入れを行ったからである。今回の選挙はさらに地方の自民党離れがもっと進み、公明党の助けぐらいではとてもカバーできなかったという話である。
・国民新党の行方
第二の注目点は公明党に起っている異変である。公明党は今回の選挙で議席を減らしている。表面的には大敗と言わないまでも敗北である。たしかに投票率が多少上がったことが不利に働いたのも事実である。しかし固い組織票のことを考えれば、負けるはずがないと思われたのである。
今回の参議院選で公明党の比例区票は86万票減っている。しかし中味を見ると大きな異変に気付く。比例区は政党名と個人名に別れる。公明党の場合、なんと政党名の投票が逆に100万票くらい増えているのである。したがって反対に個人名による票が180万も減少している。
これに対してマスコミの適切な説明がない。筆者が推測するには、今回の選挙で公明党の活動家があまり動いていなかったということになる。個人名票の激減がこの結果と考える。一方、政党名による投票は、他党候補の「選挙区は私に、比例区は公明党に」という例のバータ票が増えたからと見ている。
筆者の推測が正しければ、公明党は表面的にはそれほどではないが、実質は大敗北ということになる。あれだけ固い組織力を誇る公明党に何かが起っていると考える他はないのである。やはり自民党との連立に無理があると考えるのが妥当なのかもしれない。
第三の注目点は、国民新党の行方であった。国民新党は選挙区と比例区でそれぞれ1名の当選者であった。やはり自民党と民主党の二大政党の闘いの間に埋没したと言える。もっと保守層の票を獲得すると思ったが、現実は厳しい。地方の保守層の票が国民新党ではなく民主党に流れたのである。
比例区で同じ新党の新党日本が177万票獲得したのに対して、国民新党は129万票しか得てない。これは先の衆議院選で新党日本が投票数の多い大都会を中心に活動したのに対して、国民新党が地方に軸足を置いたことがある程度影響している。今回の選挙で国民新党は都会にも進出したが、迫力不足は否めない。一方の新党日本は昔の二院クラブ的存在となった。
国民新党は組織政党ではなく、自民党に代わる保守層の受け皿を目指した。しかし民主党が保守的な政策を取込んだため、国民新党の存在が霞んでしまったのである。それでも議席を得たのだから、善戦したと言えるかもしれない。
国民新党が全国的な組織政党を目指すには無理がある。しかし国民新党には違った活路がある。筆者は自民党が崩壊前夜と見ている。国民新党がある程度その受け皿になり得ると考える。北海道の新党大地があれだけ活躍しているのだから、国民新党にもチャンスはある。
細かく見ると国民新党も活躍している地域がある。日本人の投票行動は、政党より人で選ぶという傾向が強い。したがって集票能力の高い立候補者を確保すれば、まだまだ国民新党の伸びる余地はあると見る。島根がその良い例である。
来週は、今回の選挙の感想を述べたい。」
http://adpweb.com/eco/eco492.html
そういえば、この公明党の「異変」についてはこちらでも触れられていました。
ナンミョーにも見捨てられたアベ内閣 [きっこのブログ]
http://www.asyura2.com/07/senkyo39/msg/886.html
投稿者 中田英寿 日時 2007 年 7 月 30 日 19:24:42: McoerUaxt7HLY
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