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選挙の情勢というのは、実は候補者がいちばん知っているものである。昨日、『読売新聞』の記事を基に現在の選挙情勢を概観した。与党とりわけ自民党にとっては想像を超えるほど厳しい状態だと私は判断した。そのためであろうか、自公“合体”政権はとんでもないことをやらかした。旧憲法下で官憲の選挙干渉があったと歴史で習ったが、私は今回のことには同じようなものを感じた。やはり安倍首相には、明治憲法的な価値観が染み付いているのだ。
何のことを指しているのか、ほとんどの読者にはお判りであろう。全国的に折り込まれた“政府広報のチラシ”のことである。わが家ではチラシの管理は家内がやっている。残念ながら私は現物を見ることができなかったし、すでに捨てられていて手元にもない。だが、報道等でおおよその姿を私は推定できる。これは、相当に露骨であり、ひどい内容の政府広報であるようだ。昨日、さっそく民主党は鳩山由紀夫幹事長名で、安倍首相が公職選挙法に違反した疑いがあるとの告発状を東京地検に提出した。告発状では、首相について「公務員の地位を利用して選挙運動をした」などとしているという。
民主党が安倍首相を告発するにあたっては、当然弁護士と相談し実際はその弁護士たちが告発状を提出したのだろう。告訴・告発は無闇矢鱈にできるものではない。告訴状や告発状に記載された事実を、告発された者が行ったと認められるある程度の証明できる証拠がなければ、逆に誣告罪に問われるからである。今回の件は、行ったことには争いがないだろう。そうすると告発された事実が公職選挙法に違反するかどうかが問題となる。民主党が提出した告発状では、首相について「公務員の地位を利用して選挙運動をした」などとされているようだ。私はその可能性は十分あると思う。少なくとも告発したことに、理由がないとはいえないであろう。
まず事実関係を見てみよう。珍しく産経新聞のWeb判の登場である(笑)。そこには次のように書かれている。新聞などのマスコミは、こうした事実をもっと報道してもらいたいものである。
新聞朝刊各紙に折り込まれた政府広報は、基礎年金番号に統合されず宙に浮いた形となっている約5000万件の記録の照合と通知について、本年度中をめどに完了するなどの対応策を掲載。6月から実施された住民税(地方税)引き上げについても「所得税の減と住民税の増を合わせた負担は基本的に変わらない」などとした。
年金問題もさることながら、「所得税の減と住民税の増を合わせた負担は基本的に変わらない」ことまで書いてあるところが、なんともいじましい。姑息である。政府広報のチラシは、次の記事で明らかのように6月下旬に15000万部発行されたのだそうだ。そうだとしたら何でそこでその問題や定率減税の廃止について“広報”しなかったのだろうか。住民税の通知がきて多くの国民が怒っていることも、今回与党が苦戦している原因のひとつだ。だから、このことを書いたのだろうが、そうなると選挙を意識した政府広報ということになる。この記事の次の部分を読むともっと胡散臭くなる。
内閣府政府広報室によると、折り込み形式の政府広報は年3回の発行を予定し、約3億2000万円で広告代理店と事業契約。第1号は6月下旬に1500万部を発行した。今回は「なるべく多くの国民に伝えたい」(担当者)として2倍の3000万部を発行。予算を使い切ったため、新たに入札・契約しない限り第3号は発行しない予定という。
テレビなどで政府広報を見ることはよくある。しかし、折り込み形式のチラシの政府広報というのはあまり見た記憶がない。まあ、これはいいだろう。しかし、年3回発行する予定だったのに今回3000万部を発行したために、予算を使い果たしてしまい予定していたもう1回を発行する予算がなくなったという。これには笑っちっう。えらい力の入れようだ(笑)。役人にはこういうことは絶対にできない。いったい誰がこのことを指示したのだ。指示した者は、明らかに選挙を意識していたのだろう。この奴もいずれ告発すべきであろう。
民主党の主張は、次のようなものである。
年金記録不備問題への対応などを掲載した今回の政府広報チラシについて「与党の主張をそのまま記載しており、政府の名を借りた選挙運動への税金流用だ」。鳩山由紀夫幹事長名の談話では、「参院選の最大争点について、このようなことが許されるのなら、公選法は有名無実となる。究極の選挙違反だ」と批判している。
これに対する安倍首相や塩崎官房長官の反論には驚いた。
安倍首相は20日、徳島市内で行った街頭演説の中で「(年金記録確認)第三者委員会のこと、年金時効がなくなってすべて支払いができるようになったことを政府として通知している。当たり前のことだ。民主党は、政府がそういうお知らせを出すことが選挙違反だと言い始めた。まさに政争の具に使っている。残念でならない」と批判した。
塩崎恭久官房長官は同日午後、民主党が安倍内閣を公選法違反容疑で告発する方針を固めたことについて「選挙目当てのパフォーマンス」と反論した。参院選中盤の新たな火種に浮上した形だが、攻防は泥仕合の様相も呈してきた。塩崎氏は民主党が「究極の選挙違反だ」(鳩山由紀夫幹事長)などと批判していることに関し、記者団に「一刻も早く国民の不安解消のため周知徹底するのは、政府として当然の責任」と強調。
完全な開き直りである。時効延長も第三者委員会のことも連日の報道でもう十分に周知徹底されている。なにもチラシまで作って広報する必要はないだろう。一歩譲っても、それは参議院選挙の真っ最中にやることではないだろう。疑いをもたれるのは当然である。彼らは「瓜田に履(くつ)を納(い)れず、李下に冠を正さず」ということを知らないのであろうか。少なくともかつての自民党は、こういう愚かなことはやらなかった。いつもいっているように、現在の自民党は昔の自民党とは別物なのである。公明党との連立により、自民党は創価学会党化してしまったのだ。恥じも外聞もない政党になり下がってしまったのだ。自公“合体”政権には、もう鉄槌を下すしかあるまい。
それでは、また明日。
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