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久間辞任、アメリカ・メディア少ない関心 反核の根深さへの驚きと、核の傘の矛盾突く〈鈴木顕介〉(ちきゅう座)
http://www.asyura2.com/07/senkyo38/msg/747.html
投稿者 天木ファン 日時 2007 年 7 月 19 日 11:42:08: 2nLReFHhGZ7P6
 

http://chikyuza.net/modules/news1/article.php?storyid=170

内外知性の眼―時代の流れを読む
久間辞任、アメリカ・メディア少ない関心 反核の根深さへの驚きと、核の傘の矛盾突く〈鈴木顕介〉


〈すずき・けんすけ:元共同通信記者〉

久間防衛相の「しょうがない」発言による辞任は、広島、長崎への原爆投下をめぐり、戦後長らく封印されてきた日米間の最も機微にわたる問題のふたを開けることになった。この問題は、唯一の被爆国としての核廃絶の主張と、アメリカの核の傘に頼る安全保障の矛盾;日中戦争・太平洋戦争で日本が与えた加害と、原爆をはじめとする日本が受けた被害──突き詰めると、太平洋戦争の総括と、戦後の日米関係の根幹にかかわる点に行き着く。同時に日本がこれからどのような世界戦略をもって世界と向き合っていくかが問われる問題でもある。ここではその論議の前段として、久間辞任をめぐる主としてアメリカのメディアの報道から、これらの点にかかわるものを紹介する。

現時点で入手できたアメリカ・メディアの報道を一言でまとめると、「発言と世論の反応自体にはほとんど大きな関心を示していない」と言える。報道されたものは、参議院選挙と絡めた安倍政権への打撃が中心となっている。

その中でニューヨーク・タイムズ紙の7月3日の電子版のAP通信社電と、タイム誌の同日の電子版が、それぞれ次のように辞任の背景にある日本人の核に対する考え方を紹介している。

ニューヨーク・タイムズ電子版
久間発言は原爆投下が必要であったどうかという、積年の論議に跳ね返った。アメリカ政府は予想された侵攻による流血を避けるため必要であったと主張する。しかしながら、多くの人はアメリカが、ソ連の日本侵攻前に戦争を終わらせたかったと推測している。

この発言は被爆者とその支持者が断固として守っている、核兵器の使用は決して認められないという、日本の立場を否定するものである。核兵器の保有禁止は戦後日本の平和主義政権の大黒柱である。

原爆の恐るべき弔鐘は、戦後日本の平和主義アイデンティティーの核心である。政府は非核3原則を堅持している。被爆60年以上を経ても、日本人は原子力と軍事力にかかわるどんなことにも敏感である。しかしながら、核兵器に反対する日本は、同時にこの国を米国の核の傘の下に置く安保条約によって守られている。

タイム誌電子版
久間発言は米国の主流歴史家の考えであるが、原爆の恐ろしい結末が戦後のアイデンティティーと不可分になっている日本においては、久間の辞任になった。

久間は原爆投下が、日本人が教えられたような単に許しがたい戦争犯罪としてだけでなく、歴史的に正当と認められると示唆したとして、同僚の閣僚を含む全政界から直ちにたたかれた。久間は、影響力のある被爆者グループを含む日本政治の第三軌道(注:電気が流れている)に触れてしまったのだ。

平和主義の日本を世界の舞台で自国と同盟国を守れる普通の国にする、と公約した安倍にとって、久間のへまは深い打撃となった。安倍は久間の防衛庁を省に昇格し、日本の平和憲法改定を公約していた。

久間のどちらかといえば、穏健な発言─歴史的というよりも、大部分が政治的正義に対する違反─に対する猛烈な反発は、次のことを思い出させるのに説得力がある。平和主義は、日本で今も続いている、軍事に関係するものには何に対してでも起こす予想にたがわぬ反応であり、国内の神経過敏さは、核兵器が避けがたい現実となっている地政学的な現実への切り札でもある。安倍は日本政治の戦略を変えたかったが、古いルールがなお働き、いままでのところ彼の負けである。

ニューヨーク・タイムズ本誌と、同じ編集のインターナショナル・ヘラルド・トリビューンは、7月4日付の紙面に東京電を載せ、次のように背景を伝えている。

発言は世界で唯一の被爆国としての日本の立場をないがしろにした、と怒りを呼んだ。核兵器の使用について論議は、かつてのようにタブーではなくなっているが、日本を第2次大戦の特別の犠牲者と自らをみなすことは、日本の軍国主義的過去を出来るだけ小さくさせようとする、安部氏のような政治家にでさえ深く根付いている。

しかし、ワシントン・ポスト本紙は、1日遅れの7月5日付で事実関係だけを「世界短信」の一項として短く伝えただけだった。ウオールストリート・ジャーナル紙アジア版は、辞任の背景について「発言が、原爆投下が必要であったかどうかという歴史的な論議を反映しているが、投下を不当とする日本人一般の考え方に反している」と伝えるにとどまった。

英国のフィナンシャル・タイムズ紙アジア版も、辞任を大きく1面で伝え、別ページに解説記事もあるが、内容はもっぱら参議院選挙への影響と選挙予想で、辞任の背景には触れられていない。

最も目立ったアメリカからの反応は、ニューズ・ウイーク誌日本版(7月18日付)である。「久間発言の誤解と正解」と題して歴史・軍事研究家ネッド・バーネットの署名記事を見開き2ページで載せた。この記事は国際版にはない。

この記事のさわりの部分は次のようだ。

アメリカ側から見た歴史的事実からすれば、久間はまちがっていなかったのかも知れない。
原爆投下を人道的見地から批判する人々は以前から存在する。常に少数派ではあったが、原爆開発に協力した科学者も少なくとも数人含まれている。しかし、人道的な観点から原爆投下を批判する歴史学者は比較的少ない。

原爆批判と反核運動にはいくつかの特徴がある。第一に、原爆は他の攻撃方法よりも道徳的に糾弾されるべきだ、という考え方だ。

歴史家としては「正しい戦争」の重要性が理解できるし、戦争中の真の道徳的義務とは、最小限の犠牲で戦争を終わらせることだと考えている。

第二に原爆投下の批判者はえてして、反核感情をより広範な反体制感情や反米感情と結び付けていた。核不拡散がアメリカの公式政策となった今日、世界で反核運動があまり見られないことがそれを裏付けている。

アメリカではむしろ、原爆投下の「真の」目的をめぐって、長年激論が交わされてきた。これには二つの歴史観が存在する。従来の歴史観によれば、トルーマンが原爆投下を命じたのは日本に衝撃を与えて降伏に追い込み、日米双方に無数の戦死者が出ると予想された日本本土への侵攻を避けるためだった。

一方、修正主義の歴史観は、原爆投下はソ連のスターリンに対して、戦後唯一の超大国はアメリカであると明らかにするためだったというもの。

原爆の唯一の利点は、その衝撃の大きさだった(戦争を終わらせる兵器という意味で)。

結論として、従来の歴史観の正しさは、資料によって裏づけられている。本土進攻によって日米双方に膨大な数の犠牲者を出したくなかったという以外に、別の動機が存在したという証拠はない。(下線筆者)

アメリカ政府の久間辞任に対する唯一公にされた反応は、ロバート・ジョセフ核不拡散問担当特使(前国務次官)の3日の記者会見での発言だけである。アメリカとロシアの核軍縮枠組みづくりに関する会見で、たまたま質問に答えた形で次のように語った。広島・長崎への原爆投下について「原爆の使用が終戦をもたらし、連合国側の万単位の人命だけでなく、文字通り、何百万人もの日本人の命を救ったという点では、ほとんどの歴史家の見解は一致する」(朝日新聞)。アメリカ側は政府、マスコミともに久間辞任をめぐって日本の世論が沸騰するのあえて黙殺した。その結果、全米で各紙が電子版では伝えた通信社電を見たアメリカ人以外は、この事実すら知らない。辞任当日のCNN、BBCテレビもともに事実だけを簡単に伝えただけだった。

一方、日本の新聞各紙は久間発言に対して期せずして核廃絶で一致した反応を見せた。もちろん、それぞれの新聞の主張から、そのトーンには大きな違いがあるが、少なくとも、アメリカの原爆投下をいかなる形であれ容認した論調はなかった。ニューズ・ウイーク誌があえて日本語版に上記のような記事を載せたのは、この日本の世論に対して、アメリカの原爆投下の正当性の論拠を改めて主張するためであると受け取れる。

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔eye155:070718〕

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