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建築&住宅ジャーナリスト 細野 透氏
2007年7月17日
柏崎原発の被災を許した大ポカ答弁書
7月16日の新潟県中越沖地震で、柏崎刈羽原子力発電所3号機の変圧器に火災が発生した。変圧器から炎が吹き出し、黒煙がもうもうと吹き出す映像を見て、「最悪の事態が起こったか」と肝を冷やした人も多かったのではないだろうか。
地震の発生は午前10時13分。それから1時間経っても、火災は収まらない。発電所内の自衛消防隊が駆けつけて消火に当たっているというが、映像を見る限りでは、その姿をなかなかとらえることができない。
東京電力の担当者は、「消防署に連絡したが、あちこちに出動していて、なかなか到着しない」と説明している。柏崎原発と地元の消防署で、大地震時の優先順位について、打ち合わせができていなかったのだろうか。
その一方、テレビでは、「被災して自動車が通れない道路もある」と伝えている。消防車がどうにか駆けつけて、火災が収まったのは12時ごろだろうか。悪寒を覚えた2時間だった。
すぐにでも改善してほしいことは、大地震の際に、原子力発電所で火災が起こったとき消防署に頼ろうとする体制だ。外部から消防車が駆けつけられるとは限らない。原発の自衛消防力がこんなに貧弱だったとは知らなかった。
この事故でわたしの頭をよぎったのは、3年前、新潟県中越地震が起きた際に、当時の小泉総理が柏崎原発に関して提出した答弁書だった。今回の地震をまったく見逃した、いわば大ポカの答弁書である。
木で鼻をくくった答弁
2004年10月23日、新潟県中越地震が発生した。震源は新潟県のほぼ中央に位置する小千谷市で、マグニチュードは6.8。67人の死者と4800人の負傷者を出した。
柏崎原発に被害はなかったが、新潟県選出の近藤正道参議院議員が11月18日に、「原子力発電所に関する質問主意書」を提出した。ポイントは2点だ。
耐震設計審査指針では直下地震の規模をマグニチュード6.5と想定している。これは過小評価につながらないか
耐震設計審査指針の定める地震の速度・加速度の算定式を改めなくてよいのか
当時の小泉純一郎総理大臣は同年11月26日、扇千景参議院議長に次のような答弁書(内閣参質161第7号)を提出した。
「敷地の直下または近傍に、マグニチュード6.5を超え、敷地に大きな影響を及ぼす可能性がある地震の震源となり得るような活断層がないことを確認している。マグニチュード6.5という直下地震の規模を見直すことが必要となるとは考えていない」
「耐震設計審査指針では、地震の速度・加速度の算定式を定めているわけではないので、お尋ねの点にお答えすることは困難である」
いわば門前払いである。この答弁書を小泉総理が自分で書いたとはもちろん思わない。それにしても、木で鼻をくくったような答弁は、国の原子力行政と電力会社の原子力発電事業への不信感を抱かせてしまう内容ではないか。
10キロの「近傍」で812ガルを記録
その答弁書から2年8カ月後の2007年7月16日、新潟県中越沖地震が発生した。地震の震源は、気象庁の発表によると、新潟市の南西約60キロ、深さ17キロだった。マグニチュードは6.8だ。
今回の地震の震源は、本当は柏崎刈羽原子力発電所の北方10キロ程度と言った方が分かりやすい。
マグニチュード6.8は、マグニチュード6.5のおおよそ3倍の大きさだ。柏崎原発から10キロ程度という距離は、はたして「敷地の近傍」に相当しないのだろうか。
防災科学技術研究所の強震ネットワーク「K-NET」によると、柏崎市では実に812ガルの加速度を記録している。柏崎市の震度は6強と伝えられているが、812ガルならギリギリで震度7と言えなくもない数字である。
今度の地震を経験して、我々が求めたいのは、きちんとしたデータの公開である。
今回の地震で、原発では何ガル、何カインが記録されたのか。
今回の地震で原発にはどの程度のダメージがあったのか。
変圧器は何ガル、何カインで設計されていたのか。
変圧器はなぜ破壊したのか。
また、前回、近藤正道参議院議員が提出した質問にも、誠実に答えてもらう必要がある。
今回の地震は原発の「近傍」なのか、そうでないのか。
原発設計の最大速度は何カインで、最大加速度は何ガルなのか。
最大速度、加速度に襲われたとき、原発はどんな状態になるのか。
もう、木で鼻をくくって済む段階ではない。
http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/column/ba/22/index2.html
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