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またもやデマ選挙か(経済コラムマガジン)-今回の二つのデマ、「社保庁解体で年金問題は解決する」「構造改革は正しかった」
http://www.asyura2.com/07/senkyo38/msg/588.html
投稿者 JAXVN 日時 2007 年 7 月 17 日 08:20:58: fSuEJ1ZfVg3Og
 

経済コラムマガジン07/7/16(490号)

・またもやデマ選挙か

年金想定問答集
今週号は予定のテーマを変更する。参議院選挙が公示され、与野党の選挙戦が本格化してきた。選挙にまつわる話も急増してきた。そんな中で7月13日のZAKZAK(夕刊フジ)の自民「年金想定問答集」
(http://www.zakzak.co.jp/top/2007_07/t2007071301.html)という記事が興味を引いた。自民党が野党との討論や選挙戦に使う年金に関する想定問答集を、渋谷のプラップジャパンという大手PR会社に作成させているという話である。しかも夕刊フジがその6ページからなる現物を入手したというのである。

そして上記の記事に想定問答集の一部が紹介されていた。何とその内容が自民党の政治家が連日テレビに登場し喋っていることと全く同じなのである。

(例:
「民主党が昨年から問題提起していたのに政府与党は放置していた」→「社保庁解体(改革)案を提示し、非公務員化しない民主党との違いをアピールする」
≪どちらが社保庁に甘いか、厳しいかは法案をみればわかるでしょう。われわれは社保庁を6つの小さな組織に解体して、職員をいったん全員解雇する。(中略)民主党は公務員の労働組合を説得してクビを切れるのですか?≫

「半年で200万人中2万人が社保庁に記録がないといわれた」→「根拠のない憶測であることを主張する」
≪あなたは週刊誌の記者ですか? 政治家なら、根拠のある数字をもとに責任ある対策を考えたらどうですか?≫

「民主党などの野党にとって労組は大切な票田。野党の弱みでもある労組の存在を突き、年金批判をかわすべし」
≪現実には年金問題が一朝にして生じたわけではないことは明白であり、その責任の
多くが民主党ときずなの深い自治労にあることも周知となりました。朝日新聞はそのへんは 追及しないのです。≫(産経新聞 古森義久氏)(古森氏もプラップジャパンのアドバイスを受けている?))

筆者はずっと自民党議員が皆同じデマっぽい発言をしていることを不思議に思っていたが、その裏にはこのPR会社作成の「年金想定問答集」の存在があると睨んでいる。

先の衆議院選挙から自民党の選挙戦術がガラッと変わった。05/9/19(第405号)「デマの検証」(http://adpweb.com/eco/eco405.html)で取上げたように、デマっぽい発言を繰返して野党を攻撃するというものである。「郵政民営化によって26万人(38万人と言っていたケースもあるようだ)の公務員が削減される」とか「郵政を民営化すれば、郵貯・簡保の340兆円の資金が民間に回り、日本経済はスランプが脱出できる」と言ったデマがあった。これらは単純なデマで「嘘」であるから、簡単に野党から反論される。しかし自民党の政治家は、皆そんなことを全く気にせずこれらのデマをずっと繰返していた。

不思議なことに大手のマスコミやメディアは、自民党のこのデマに乗っかかった報道姿勢を取り続けた。そしてこのデマが効果があったのであろうか、B層の大量票を獲得し、自民党は空前の大勝利を得た。冒頭のZAKZAK(夕刊フジ)の記事によれば、先の衆議院選挙からこのPR会社プラップジャパン社は関わったという話である。つまり先の郵政改革選挙でも、デマで固められた「郵政改革想定問答集」というものがプラップジャパン社で作られたということが容易に想像される。

政権与党の自民党は、ずっと野党から攻撃される立場であった。しかし昔は、自民党の政治家は不器用であったが、どこか誠実なところがあった。むしろデマで自民党を攻め立てたのは野党の方であった。ところが今日では逆転しているのだ。

ともあれ先の衆議院選挙での功績を認められ、今回の参議院選でも「年金想定問答集」の作成がこのプラップジャパン社に丸投げされたのである。しかし実に情けない話である。本来なら想定問答集は自民党の政治家や党の事務局が作るものである。せいぜい役所の助けを借りることまでは許される範囲であろう。

ZAKZAK(夕刊フジ)は、厚生労働省や社会保険庁に頼らなかったは自民党がこれらの役人を信用していないからという声を紹介している。しかし筆者は、役人が関与したならこれほどデマだらけの想定問答集はとうてい作れなかったと考える。いやしくも公務員のプライドがあれば恥ずかしくって作れない内容である。それにしても自民党は落ちぶれたものである。

・参議院選の争点

 今回の参議院選の争点になっていることを二つばかり取り上げる。一つは年金制度の根本に関わる問題である。自民党・公明党は公的年金を保険方式で続けると主張し、民主党を始め野党は全て税方式の併用を主張している(国民年金の国庫負担分の話を除き)。税方式を導入は、公的年金に社会保障政策であり所得の再分配の要素を取入れるということを意味する。

そもそも現行の公的年金制度を保険料だけで維持することは不可能である。今日の給付額は積立てた保険料の5、6倍もある(以前はもっと大きかった)。5、6倍の給付水準を続けるには開発途上国並の人口増加率と、中国並の経済成長率が必須である。さらに極端に日本人の平均寿命が短くならない限り、現行の保険方式を維持することは出来ない。誰が考えたって無理な話である。

つまり今日の年金給付水準をどうしても維持しようとすれば、かなりの国庫負担が必要となる。国庫負担を行うということになれば、国民一律に給付する年金の新設という考えが出てくるのが自然である。だいたい与党自民党・公明党も保険方式を続けるのは不可能であることを承知しているはずである。

しかし自民党は「自己責任」「小さな政府」を念仏のように唱える構造改革派、ネオコンもどきを抱えている。簡単には方針を転換できないのである。しかし保険方式をずっと続けることを無理だと十分分っていながら主張し続けることは、これも一種のデマになる。

政府・与党は年金制度の改定を厚生労働省に任せている。しかし厚生労働省からはろくなアイディアが出てくるはずがない。せいぜい給付水準の引下げ(マクロスライドによる)、保険料アップ、そして未納率の低減策ぐらいである。筆者は、公的年金制度の抜本改定は、厚生労働省の責任の範疇を大きく超えていると認識している。今のようなことを続けることは本当に時間の無駄である。

年金制度抜本改定は政治主導で行うものである。関係する省庁も厚生労働省に止まらず、財務省や総務省そして日銀などにも及ぶ。厚生労働省だけに任せておけば、保険料アップによる積立金の増額といったつまらない案しか出てこない。しかも厚生労働省から出てくる案は、どれも日本経済にとってデフレ圧力になる。

また政府・与党はさかんに「景気は良くなった」「これは小泉・安倍政権の経済政策が正しかったから」と言っている。たしかに日経新聞を始め大マスコミもさかんに景気が良くなったと喧伝している。しかし国民にはその実感がない。自民党はそれを気にしてか「景気回復を実感に」と言い始めている。

本当は景気が良くないことを承知していながら、このような主張を繰返しているのである。これもデマと言える。野党は景気が良いのは大企業、そして儲かっているのは会社だけであると主張している。また野党は従業員や中小・零細企業の所得は増えていないと言っている。そして労働分配率の低下を指摘している。

野党の主張は事実である。しかし筆者はそれだけではないと思っている。日本全体の景気自体が良くなっていないと考えるのである。政府・与党は、実質経済成長率が欧米並だから景気が良くなっていると主張している。

たしかに発展途上国の経済が好調である。この恩恵が日米欧の先進国に及んでいるのである。しかし筆者は、この恩恵が有りながら日本経済だけはほとんど成長していないと見る。実質経済成長率が欧米並と言っても、欧米先進国はある程度物価が上昇しているのである。一方、日本の場合ほとんど国内物価は上昇しないか、あるいは時おりマイナスを記録している。したがって両者を実質経済成長率の数値で比べること自体に問題がある。名目の経済成長率では欧米と大きな開きがある。おそらく日本は世界で一番名目成長率の低い国と見る(戦乱が続いているような国を除き)。

筆者は、日本ではデフレ経済が続いていると考える。デフレ経済が続いているのに景気の判断を実質GDPの伸びで計るのは誤解を招く。また筆者は、輸入品の物価が上昇しているのに輸出品の物価が上昇しないことが、実態以上に実質GDPと実質経済成長率を大きく見せていると考える(輸入のデフレータは大きく、輸出のデフレータは小さくなる)。特に日本のGDPに対する輸出・輸入額の比率が年々大きくなっている。

つまり「景気が良くなった」というのはGDP統計のトリックと筆者は考える。これについてはもっと詳しく調べ、後日本誌でも取上げたい。もし筆者の考えが間違っていて、本当に日本の景気が良くなっているなら、日本から欧米に資金が逃げて行くことはない。そして今度の参議院選挙では自民党が大勝するはずである。

来週号は、今週のテーマに考えていた「参議院選のポイント」を取り上げる。」
http://adpweb.com/eco/eco490.html

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