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参院選直前 自民党の風景/“安倍広報戦略”奏功せず(しんぶん赤旗)
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投稿者 熊野孤道 日時 2007 年 7 月 14 日 14:21:38: Lif1sDmyA6Ww.
 

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2007-07-10/2007071001_04_0.html

2007年7月10日(火)「しんぶん赤旗」

参院選直前 自民党の風景

“安倍広報戦略”奏功せず

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 「安倍君を総理総裁に選んだ十カ月前のわれわれの判断の当否を、いま問われると答えに窮する。『ちょっと勘違いしたかな』という思いもあるね」。自民党の閣僚経験者はつぶやきました。

 自民党は今回の参院選を乗り切り、次期総選挙で絶対多数を維持し、宿願の九条改憲へ王手をかける“切り札”として昨年九月、改憲タカ派の安倍晋三氏を総理総裁に担ぎ上げました。

 ところが―。最初のハードルの参院選を前に安倍首相は苦境に立たされています。安倍首相を「党の顔」にすえて盤石の態勢を構えたはずの政権戦略は、その前提が崩れた格好です。

 参院選直前の自民党の今を探りました。

逆に安倍離れ

 二〇〇六年九月二十日―。安倍氏が自民党の新総裁に選出された、その日、自民党に今後の広報戦略を提案する企画書が大手広告代理店二社から示されました。

 「広報戦略のご提案―新総裁のもとに、07年参院選を照準とした圧倒的優位なブランド構築を目指して」(電通)、「新総裁誕生を契機とし第21回参議院通常選挙に向けた自民党総合広報戦略の考え方」(アサツーディ・ケー)

 安倍新総裁の誕生を参院選での勝利に結びつける――そのために、どんな広報戦略を展開したらよいか、自民党広報本部からの注文に応じたものです。

 「『リトル小泉政権』ではない、『ビッグ安倍新政権』の定着化〜次期参院選での自民党勝利へ!」(電通)

 「(小泉)前総裁が持つ『実行力・決断力』イメージが獲得できていない。前総裁が持っていた支持率を継承するには、上記イメージの獲得が第一の課題」(アサツーディ・ケー)

 今年二―三月、内閣支持率が落ち込んだ時期に改憲タカ派の“安倍カラー”を前面に出す作戦で巻き返しに出ました。「(一―三月期のキャンペーンでは)新総裁の理念を理解してもらう具体的な行動を起こす」(電通)との提案を受けたものでした。

 しかし―。自民党が新広報戦略を展開して約十カ月。皮肉にも安倍内閣支持率は内閣発足時の60―70%から30%前後へ半減。数十億円とされる巨費を投じる広報戦略はいまだ功を奏せず。逆に「安倍離れ」が広がっています。

疑惑次々 党員は半減

“女性層の安倍離れ痛い”

 安倍・自民党が国民世論を獲得できない理由はなにか。

 「広報戦略ではカバーできないマイナスを安倍・自民党政治そのものがいくつも重ねているためです」。自民党系の選挙や候補者PRに携わるPR会社社長は指摘します。

 安倍内閣発足時、支持率を60―70%まで押し上げた要素の一つは、五年五カ月に及んだ小泉前政権による国民負担九兆円増と大企業最優先の“構造改革政治”、つまり貧困と格差から“脱却”できるのではないか、との国民の多少の期待感でした。

 ところが、安倍内閣は貧困と格差の是正に関心を向けないまま。そしてこの間、年金記録漏れ問題、原爆問題での久間発言に見られる閣僚の暴言や「事務所費」問題など「政治とカネ」にまつわる疑惑の頻発――など。政権一年に満たない間によくぞここまで出るというほどのほころびぶりです。

三正面作戦

 「年金問題が浮上したあとの女性層の安倍離れが痛い。女性はいったん嫌うとヨリを戻してくれないから参院選前に深刻だ」と自民党本部関係者はまゆをひそめます。

 時事通信調査(六月)によると、安倍内閣支持率を支えてきた女性層と二十、三十代の若者層の支持率はそれぞれ20%台、10%台に急落しています。

 このため自民党は、参院選へむけて、かつてない数の“タレント(高知名度)候補”を立て無党派層の獲得を狙いつつ、他方、従来型の業種・業界・企業系列ぐるみ選挙を並行してすすめ、さらにその上に友党・公明党の選挙支援に期待する――“三正面作戦”を展開して有権者の「安倍離れ」を引きとめる作戦に切り替えて巻き返しを図ります。

 しかし肝心の自民党自体の「エンジン」が小さくなっています。小泉前政権の“自民党をぶっ壊す”五年半を通じて自民党員数は小泉政権前の二〇〇〇年の二百三十七万人から〇六年末現在の百十九万人に半減。なかでも業界・団体・企業系列選挙を担う職域党員は百六十万人台から五十万人台に激減し、この傾向は加速しています。

 「一体、政府はなにをやっているのか、という不信が頂点に達している。何十億円かけた広報戦略も肝心な不信を払しょくする中身でなければ有権者には効果はない」

 大手広告代理店の政党広報担当者の指摘です。

首相の口癖

 「いまやらなくて、いったいいつやるんだ」。今年の春先からの安倍首相の口癖です。自民党議員や各省官僚が幾人となく首相から、このことばで叱責(しっせき)されています。

 改憲手続き法や社会保険庁解体法など自民・公明両与党が強行につぐ強行をはかった通常国会の異常は、安倍首相の「いまやらなくて…」のことばに促された結果であることを自民党国対関係者は否定しません。

 五日の記者会見でも安倍首相は「私には改革をすすめていく、新しい国づくりを何がなんでも進めていかなければならない使命がある」と、せく気持ちをあらわにしました。

 安倍首相のご意見番ともいえる存在の塩川正十郎元財務相は「(安倍内閣は)何もかも決定がちょっと早過ぎる」(『公研』五月号)と、その暴走ぶりをたしなめるほどです。

 何が、安倍首相を、こうもせかせているのか。

改憲へ執念

 自民党の閣僚経験者は「安倍の頭にはカイケンの四文字しかないからだよ。改憲だよ。ただ自民党もやせ細ってきたし、メディアの世論調査によると改憲に反対する国民が安倍内閣になってかえって増えた。だから安倍は焦っている」と解説します。

 識者のなかにも「急ぐ安倍」と「改憲」と結びつける見解は少なくありません。添谷芳秀・慶応大法学部教授(国際政治)は、民間団体のホームページで「一有権者から見ると、安倍政権は憲法改正をずいぶん急いでいるな、という感想を持ちます」との見方を示しています。

 世論が九条改悪反対で固まる前に、国政選挙で後退し政権を追われる事態の前に、政権在任中にレールを敷いておきたい――改憲への執念と時間との競争が安倍首相のすべての政治決定を急がせている理由です。

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