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北海道は「日本のBRICs」なのか?
BRICsの次はミャンマー?
2003年頃から、妙に騒がれ始めた「BRICs」。言わずと知れた「4大新興市場国」の頭文字をとったものだ(ブラジル・ロシア・インド・中国<チャイナ>)。そんなBRICsも最近はやや振るわない。ロシア株は不思議な下げを5月に経たばかりであるし、中国株は2月末の「世界同時株安」の元凶扱いまでされる始末。
ところが、世間とはうまくできたもので、「BRICsはそろそろマズイかも」と言うと、どこからともなく「次に『祭り』が来るはずの新興市場国(エマージング・マーケット)」の噂が流れてくる。たとえば、米系投資銀行の雄であるゴールドマン・サックスは、「ネクスト・イレブン」と銘打った11カ国を推薦している。
そんな中、最近、「え!まさか??」と思う報道が世界のメディアを駆けめぐりつつある。6月23日付『人民網(=中国の国営インターネット新聞)』に掲載された「ミャンマーが11の国営企業を民営化」という記事。人権抑圧と軍政でイメージが圧倒的に悪いミャンマーだが、実は95年に選定した288の国営企業のうち、実に215もの企業の民営化を実現したのだという。もちろん、そこには外資勢との協力も欠かせない。さらにいえば、いよいよミャンマー政府にとって「虎の子」と言える大規模金山まで民営化に着手するのだという。
ミャンマーはたいていの読者の方々にとって、まったくの「ノーマーク」だろう。しかし、「誰も気付かない間に投資をし、気付かれた時には高値で売り抜ける」が米国流金融資本主義の定石だ。この記事以外にも外国メディアでは徐々に「投資対象」として取り上げられつつある同国は、まさにそんな米国流金融戦略にとって「格好のターゲット」であるに違いない。
エマージング・マーケットとしての北海道
実はまったく同じことが日本国内についても言える。一般に、マネーは人間が多く集まる都市部にあると思われている。都市部にある大企業にお勤めの「サラリーマン」である読者なら、きっとすぐさまうなずかれていることだろう。
ところがどっこい、実は「地方」の方がカネはある。いや、正確に言えば、給与所得者以外の自営業や中小の企業経営者の方々が一定程度いる分、「地方」では彼らがサラリーマンとは違って「自由にできるカネ」が動く余地があるのだ。現に米系外資人脈などの動きを見ていると、東京など大都市は素通りして、すぐさま地方へのマーケティングに出かける場合が多い。なぜなら、その方が「動いているカネ」をつかめるチャンスが高いからだ。
その意味で、日本のエマージング・マーケットは「地方」にある。しかも、先ほど書いたようなミャンマーのように「誰も気付いておらず、その分、先行投資をしたものの利益が十分に確保できる地方」こそが、エマージング・マーケットとしての使い手があるというわけだ。そうなると、日本での最有力候補は何はともあれ「北海道」だろう。
前回のこのコラムで述べたとおり、北海道は今や、金融資本主義化した各国に狙われている気配がすでに強い。
だがそのことに日本人のほとんどは気付いてはいないので、いざ、北海道をめぐるマーケットが『祭り』となれば、我先にと殺到することであろう。再び世界中で注目を浴びつつある石炭、あるいは温暖化の中で重要な役割を示す森林、さらには魚介類といった「資源」、そして広大かつ肥沃な大地を使った「農業」など、金融資本主義が北海道の大地に入り込む余地は数多くある。外資勢が買い占める前に目を向けておくことが「もう騙されない日本人」の必勝法だとすれば、ノーマークであった北海道こそ、洞爺湖サミット開催を待たずして本来であれば、注目すべき存だったのかもしれないのだ。
転換期の金融資本主義をどう乗り切るか?
これまで米国を中心とする金融資本主義は、国外にエマージング・マーケットを求め、それを使いまわすことで延命を図ってきた。しかし、そのルールは徐々に変更されつつある。
7月7日に札幌で開催する原田武夫国際戦略情報研究所主催の無料学習セミナーでそのあたりのことはじっくりお話したいと思うが、一言でいえば、これからの時代、米国ですら「国外」ではなく「国内」に新たなマーケットを創ることに全精力を傾注しそうなのだ。それは、一方では技術革新によるまったく新しい分野でのマーケットの創出、他方ではこれまで「見捨てられてきた地方」への集中的な投資によるエマージング・マーケットの発生といった形を採ることであろう。
前者の筆頭候補はバイオ・テクノロジー、後者の筆頭候補は米国でいえば新たに新幹線が造られることが決定したカリフォルニアだ。このように金融資本主義のヴァージョン・アップが間もなく起きる以上、私たち日本の個人投資家として国外のBRICsだけに目を取られている場合ではない。「黄金のエマージング・マーケット」は、意外にも日本のどこかにすでに仕込まれているかもしれないのだ。
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