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政治記事読みくらべ
2007年7月6日
大幅低下の退陣ライン「自民四十七」で安倍続投
今回の参議院選で連立与党が過半数を押さえるためには
「自民単独で五十一議席」が必要だが、見通しは暗い。
しかし、自民には「年金で苦戦」のイメージが浸透し、惨敗しても
国民新党等を加え、過半数を得れば安倍続投の雰囲気がある
その電話を受けた時、安倍晋三首相は「エッ!」といって絶句し、その後は、腕を組んで目を閉じたままだったという。五月二十八日午後零時四十四分。松岡利勝前農林水産相が赤坂の議員宿舎で自殺を図ったとの連絡が首相秘書官から電話でもたらされたのは、安倍が千鳥ヶ淵戦没者墓苑で行われた拝礼式に出席し、専用車に乗り込んだ直後のことだった。
目前に控えた参院選。「憲法改正や教育改革を争点に安倍カラーを国民に訴える」と意気込んでいた安倍首相の目論見が崩れ、選挙の様相が一変した瞬間だった。
■失点重ねた安倍
首相にとっては、まさに「ブラック・マンデー」だったに違いない。この日朝の毎日新聞と日本経済新聞朝刊
は、そろって安倍内閣の支持率が急落し、昨秋の首相就任以来、最低になったことを報じていた。五千万件以上の年金記録が誰のものかわからない状態になっている「宙に浮いた年金問題」が、政権を直撃しているのは明らかだった。
加えて五日前の二十三日、衆院予算委員会で行われた「政治とカネ」に関する集中審議では、松岡は「ナントカ還元水」に象徴される巨額光熱水費問題に対して、相変わらず「法律に基づき適切に報告している」と繰り返すだけで、かえって国民の怒りを改めて招いていた。
そんな矢先の松岡本人の自殺。自民党内からも「なぜ、もっと早く農水相を辞任させなかったのか」「松岡をかばった責任は大きい」との声が公然とささやかれ、批判の矛先が首相に向かうのも当然だった。
従来の日本社会には、「死」を前にすると批判は控え目になる傾向があった。ところが、今回はメディアも説明責任を果たさず自殺した松岡に同情論はほとんどなかった。刑事事件に発展した緑資源機構の官製談合事件への松岡の関与をうかがわせる報道も相次ぎ、「政治とカネ」の問題に再び火がつく結果となった。死をもっても幕引きとはならなかったのである。
やはり、若さと経験不足が露呈してしまうのだろう。その後の安倍首相の慌てぶり、動転ぶりに、かえって不安を感じた人も多いはずだ。
首相はすでに五月二十七日夜、毎日新聞と日経新聞の世論調査結果を知り、当初、「参院選後、秋の臨時国会で」といっていた年金支給漏れ問題の対策を前倒しし、今国会で実行するよう自民党の中川秀直幹事長に指示していた。だが、この対策として提出した特措法は、衆院厚生労働委員会で実質わずか四時間審議しただけで強行可決し、かえって野党から「横暴だ」との反発を浴びた。
■「求心力」が低下
焦りは続く。首相は参院選の自民党公約に年金対策を重点にするよう要請する一方、参院自民党が「国会日程上、困難」としてきた公務員制度改革法案の今国会成立にこだわったのは周知の通りだ。憲法や教育改革の影が薄れる中、従来、各省庁がそれぞれ行ってきた国家公務員の天下り斡旋を禁止し、内閣府に設置する「官民人材交流センター」に一元化することを柱とする公務員制度改革は、安倍首相にとっては「国民受
け」する数少ない改革の旗印である。
ところが、中央官庁の国家公務員
は、渡辺喜美行政改革担当相が強引に取りまとめてきたこの法案に、元々、猛反発し、その意向を受けた自民党は必ずしも法案の成立自体に熱心でないという事情がある。青木幹雄自民党参院議員会長らが「今国会では無理だ」というと、安倍首相が「今国会で」と何とか押し返す――。首相の意向がすんなり通らないところ
に、支持率が急落した安倍首相の自民党内求心力の衰えが如実に表れていた。「いずれにしても参院選の見通しはまったく白紙になった」と自民党幹部はいう。「参院選を乗り切り、任期中に憲法改正を発議する」どころか、参院選に惨敗し、安倍内閣は一年足らずで退陣するというシナリオも現実味を帯びてきたということだ。
ここでおさらいしておく。参院選で自民党と公明党の与党二党が過半数を維持するため必要な議席は六十四議席。仮に公明党が現状通り、十三の改選議席を保てば自民党に求められるのは五十一議席となる。そして選挙の帰趨を決めるのは二十九の一人区だといわれてきた。
選挙区を一つ一つ詳細に検討していけば、「松岡ショック」「年金ショック」が起こる前から「決して自民党は強くない」というのが、実は党内の選挙関係者の分析だった。それが「与党で過半数はいけるだろう」(片山虎之助参院幹事長)といった楽観論が支配してきたのは、単に「小沢一郎代表率いる民主党も人気はなく、勝敗を決する無党派層には浸透していない」という理由だけだったのである。 そんなところに、「年金」と「政治とカネ」で無党派層の怒りに火がつけばどうか――。結果は明らかだろう。
■自民「四十七議席」
加藤紘一元幹事長は「自民党の獲得議席は四十五議席前後」といい、過半数には遠く届かないと見ている。
参院選の惨敗で首相が交代したのは、一九八九年の宇野宗佑首相、九八年の橋本龍太郎首相の二人の例がある。八九年の自民党獲得議席は三十六。九八年は四十四。前例からいっても「四十五」は退陣ラインと見ていいかもしれない。
前例だけでない。自民党は仮に与党で過半数割れした場合、国民新党等との連携を検討すると見られ、すでにしきりとアプローチしている。だが、「四十五」前後の場合では、国民新党を加えても、過半数の「五十一」には届かない可能性が大きい。
「安倍首相の性格からしても、その場合はあっさり退陣を表明するのではないか」と首相周辺はいう。しかし、すんなり「ポスト安倍」が決まるかどうか。 橋本が退陣した九八年は、まだ旧竹下派が絶大な力を持っていた時期
で、投開票日当日に、事実上、後継を小渕恵三に派内で決めてしまった。いま、そんなことができる党内情勢ではないし、調整役もいないのだ。
「本来なら青木さんが調整役になるのだろうが、参院選で敗北したら青木さんは当事者の一人。自分も参院会長を辞めざるを得ない」と党関係者は口をそろえる。マスコミは最近、俄然、露出度が高まっている麻生太郎外相を「ポスト安倍」の一番手に挙げているが、そんなにスムーズにことが運ぶかどうか。調整役不在の中、自民党は大混乱に陥る公算も大きい。
このレポートを書いている六月中旬、一人区十五、複数区十七、比例区十五の計四十七と、自民党獲得議席数が語られ出した。安倍人気低下で退陣ラインが下がり、安倍退陣はなさそうだが。(文中敬称略)
リベラルタイム8月号特集「年金と自殺と選挙」の研究
リベラルタイム(外部サイト)
リベラルタイム2007年8月号
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