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最近のニュース・報道番組は、昔とまったく様相が変わった。ニュースといえば、かつてはNHKの独壇場だった。民放もニュースは放映していたが、まず全国カバー率がNHKに比べ問題のならないくらい低かった。だからニュースといえば、NHKと考える人が多かったのではないだろうか。NHKには、すべての国民が受信できるようにする義務があった。全国各地に中継局を設置して難視聴地域を解消してきた。しかし、離島や山間地などすべてをカバーするとなると中継局設置のために莫大な費用が必要であった。全国に40万世帯ほどあった難視聴地域を一挙に解消するために打ち上げたのが、放送衛星であった。
東京ではNHKの外に全国ネットの地上波放送局が5局ある。それらの放送局もすべてニュース・報道番組をやっている。従って、NHKのニュースをみなくてもほとんど用が足りる。最近では、民放のニュース・報道番組の方がNHKの放送時間よりはるかに長いのである。私は夕方のニュース・報道番組などは、TBSの『イブニング5』かテレビ朝日の『Jチャンネル』でみることが多い。こちらの方は、午後4時53分からはじまって7時近くまでやっている。NHKは、午後5時から5分間と午後6時から10分間、ニュースを流すだけである。もっとも民放の方は、芸能界の“ニュース”もスポーツ界の“ニュース”も「一般のニュース」と同列である。ゴッチャ満載である。だからどんなニュースがあったかを確かめるために、午後5時と午後6時に一応NHKのチャンネルに合わせるのは私の習性になっている(笑)。
そんな習性から昨日も午後6時にNHKのチャンネルに合わせた。そうしたらわれらの安倍首相が長々と演説しているではないか。なぜなのかと怪訝に思った。これは偏向報道ではないかと思ったところ、国会閉会の際には定例記者会見をやるようである。昨日の新聞のテレビ欄をみると「安倍首相国会閉会で記者会見」と書いてあった。
この永田町徒然草の常連の皆さんはあまりこの番組をみていないと思うが、中にはみられた方もおられたであろう。そう、安倍首相の冒頭の演説は本当にひどい内容だった。選挙にはじめて出る新人候補が、前の晩に必死に覚えた原稿を思い出しながら喋っているという感じであった。笑ちゃったのは、宙に浮いた年金記録を5000件といったことである。5000件(万が抜けているのだ)ならば、それは来年の3月までに十分照合できるだろう。もうひとつ、なぜ昨日の記者会見ではクールビズ・スタイルでなかったのだろうか。いつも無神経と思われるほどノーネクタイにこだわっているのに!?
まあ、内容は紹介する価値がまったくないので省略する。それにしてもあれほど空疎で自信のなさそうな総理大臣の演説を聴いたのは久しぶりだった。「巧言令色は、鮮ないかな仁」と論語にあるが、まさにそのとおりである。諸橋轍次の『中国古典名言事典』によると……
巧言令色は、鮮(すく)ないかな仁
<子日>、巧言令色、鮮カナ仁。(注:カナ――矢の上にムと書く。例によって私のパソコンからは出てこない)
巧言も令色も、それ自身は必ずしも非難すべきことではない。しかし、口にきれいごとを並べ、容貌、態度をものやわらかく美しく見せることが主になると、その種の人には、とかく、人間の根本の道である仁の心が薄くなりがちである。
政治家の演説の良し悪しは、言葉を通して伝わる気迫と内容である。またその言葉を発する人間そのものの魅力である。だから、政治家の演説というのは、コーディネーターがついたくらいでそんなに簡単に変わるものではないのである。国会が閉幕し、今日から参議院選挙一色になる。しかし、安倍首相の演説は投票日まで変わらないであろう。あの演説ならば怖くはない。野党は自信をもって堂々と安倍首相と自公“合体”政権を倒さなければならないと訴えればよい。必ず勝てる。ただ、どの程度勝つかが問題なのである。徹底的に勝たなければ、国民が望んでいるような方向に政治は動いていかない。昨日の新党日本のような変な動きも始まりだした。要注意!!
それでは、また明日。
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