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「核廃絶」「核の傘」 久間氏発言 理想と現実浮き彫りに【東京新聞】
2007年7月4日 08時04分
日本は戦後、唯一の被爆国という立場から核兵器の放棄を宣言し、核廃絶を世界に強く訴えてきた。その一方で、安全保障面で米国の「核の傘」に守られてきた現実がある。米国の原爆投下を容認する久間章生防衛相の発言は、核をめぐる日本の理想と現実の矛盾を浮き彫りにもした。
日本は1967年、当時の佐藤栄作首相が「核を持たず、つくらず、持ち込ませず」の非核三原則を表明。その後、安倍晋三首相に至るまで歴代首相は、三原則を堅持する意向を繰り返し表明している。
国際社会で日本は94年以来、核兵器の全面的廃絶を訴える決議案を毎年国連総会に提出し、多くの国の支持を得て採択されている。このほかにも、包括的核実験禁止条約(CTBT)の署名を各国に働き掛けるなど、核廃棄に熱心に取り組んできた。
しかし、米国の核抑止力に頼るということは、核兵器の効用を認めることにもつながる。実際、日本の実情は、他国からも見透かされている。95年にフランスが核実験を強行した際には、日本の抗議に対し、仏側から「日本が平和を享受したのは、米国の核の傘の保護下にあったからだ」と返答された。
ただ、米国の原爆投下を容認してしまえば、核廃絶を世界に呼び掛ける日本の訴えは一層、説得力を失う。日本には対米追随のイメージがつきまとうだけになおさらだ。
最近は、核拡散防止条約(NPT)に加盟せず核実験をしたインドに対し、民生用原子力の技術協力で合意した米国の対応についても日本の態度はあいまいなままだ。北朝鮮核問題を考えれば、日本の姿勢は「ダブルスタンダード」(二重基準)と指摘され始めている。
国際司法裁判所は96年、核兵器の使用・威嚇に関し「一般的に国際法に違反する」との勧告的意見を出している。これを念頭に久間発言に対しては、防衛省幹部でさえも「防衛相が原爆使用容認なんて取られたらたまらない」と漏らした。久間氏の発言は、被爆地の広島、長崎に衝撃を与えたが、日本にも国際社会で大きなマイナスを与えたといえる。
(東京新聞・中山高志)
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2007070490080417.html
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