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政治記事読みくらべ
2007年7月3日
「現場に責任を押し付けるな!」 社保庁のボーナス返納騒動で職員の怒り
政府は社会保険庁職員に夏のボーナスの一部返納を呼びかけている。焦る首相のパフォーマンスだろう。しかし、「なぜ急に現場に責任を押し付けるのか」と、一般職員からは怒りの声も上がっている。
誰のものかわからない納付記録が5000万件もある、といういわゆる年金記録漏れ問題の責任をとるため、6月25日、安倍首相や塩崎官房長官、柳沢厚生労働大臣がボーナスの一部を返納することを発表。また、社会保険庁の全職員約1万7000人にも、夏のボーナスを20分の1から2分の1の自主返納を呼びかけることが決まった。
これを受けて、関東地方のある社会保険事務所では27日午後4時ごろになって、A4判数枚の書類が配られた。自主返納額を書き込んだり、一括か分割かの返納方法を申告する用紙や、政府が決めた肩書に応じた返納額の目安などを説明した用紙などだ。ある職員は、
「報道で、自主返納については知っていましたから『ああ、あれだな』と思った。しかし、自主的とはいっても、強制的なものだとみな受け止めています」。
社会保険庁は、現在審議中の改革関連法案が成立すれば廃止される。現在の職員が、新設の「日本年金機構」に移れるかどうかは政府の胸三寸。再就職を“人質”に取られているだけに、自分は返納しませんとは、とても言えない。
だが、宙に浮いている年金記録があることは、前からわかっていたことだった。1997年に基礎年金番号が発行される前は転職のたびに年金手帳が発行され、加入者が複数の加入記録を持つケースが多かった。しかし、それを統合するために積極的に手を打ってこなかったのだ。また、80年代に社会保険庁がコンピューター化した際の記録打ち込み間違い、会社が社保庁に出した書類のミスなどにより、持ち主不明になったケースも多い。
このため、同庁では2004年から58歳になった時に加入履歴を通知するなど、記録漏れがあった場合でも、受給前にはきちんと統合できる前提で運営してきた。前出の職員が続ける。
「その方針で現場はやってきたのに、急にすべての持ち主を明らかにしなかったのはまずいと言われても。これまでだって、年金保険料を流用してグリーンピアなどの無駄な施設を造るのに使った金があれば、いくらでも手を打つことができたはず。それを怠ってきたツケを現場に押し付けられても困る。責任は、そういうことを決めた人たちが負うべきではないのか」
この男性職員が勤める事務所では現在、土日も相談に応じる一方、本庁が電話で行っている24時間の年金相談の応援にも人を取られる。そして、罵声をも浴びせられる。今月は街頭で年金相談を行うことも求められている。
「現場はもうヘトヘト。これが、この先何年も続きそうだし、ボーナスまで取り上げられてはたまらない」
と職員は嘆いた。年金に詳しい経済ジャーナリストの田嶋智太郎さんも、
「年金が複雑なシステムで記録管理が難しいことに加え、歴代の厚労省、社会保険庁のトップが先延ばしにしてきた問題。特に若い職員には責任があるとはいい難いだけに、今一番、大変な思いをしている社会保険事務所の人がやる気を失わないか心配」
と同情的だ。
読売ウイークリー(外部サイト)
2007年7月15日号
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