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国会、閉幕へ―「数の力」振り回す政治
「政治とカネ」に絡んでの現職閣僚の自殺、噴き出した年金問題と不信、そして数の力でブルドーザーのように法案を通していく与党の強引さ。この三つの点で、今年の通常国会は歴史に記憶されるだろう。
とりわけ、強引な国会運営は常軌を逸していた。5カ月あまりの会期の中で、審議の続行を求める野党の反対を押し切り、自民、公明の与党だけで採決を強行したのは20回近くにものぼる。前代未聞のことではないか。
■相次いだ禁じ手
押し切った法案の中身もすごい。補正予算を皮切りに、今年度予算、憲法改正の手続きを定める国民投票法、教員免許の更新制などを盛り込んだ教育3法。国の基本にかかわるような重要問題ばかりである。
とどめにとばかり最後は、政治資金規正法の改正、社会保険庁を分割する法律、「宙に浮いた年金」の時効をなくす特例法、国家公務員の再就職をあっせんする新人材バンクをつくる法律が、次々に採決にかけられた。
新人材バンク法は、民主党が委員長のポストを押さえていたため、委員会での採決はすっ飛ばし、いきなり本会議で可決させる非常手段に訴えた。
先日は衆院の懲罰委員会で、民主党が出す委員長を投票ではずしてまで同党議員を懲罰した。これも数の力にものを言わせて突き進む与党の姿勢を象徴するものだった。
野党側にも、参院選に向けて対決ムードをあおり、わざと与党の強引さを誘った面がうかがえた。選挙まぢかの国会は、与野党とも頭に血が上りがちだ。
だが、そこを割り引いたとしても、禁じ手に近い手法まで繰り出した与党は「横暴」との批判をまぬかれない。野党が安倍内閣に対する不信任案を出して抵抗したのは当然のことだ。
なぜ、こんなむちゃな国会運営になってしまったのか。
■「強い宰相」への焦り
安倍首相の、参院選にかける思いがあまりに強いことが原因のひとつだろう。首相が選挙のことを考えるのは当たり前だが、9カ月前、もっぱら有権者受けの良さを買われて自民党総裁の座についた安倍氏には、自らの存在理由にかかわる格別の意味がある。
小沢民主党との決戦となる参院選に、何が何でも勝たねばならない。この一念から政策を組み立てたのであり、この国会でそれを形にしてみせなければならない。そんな強い焦りが、首相を突き動かしているかのようだ。
2年前、強引な解散・総選挙で大勝した小泉前首相と比べ、若い安倍氏には「ひ弱」「リーダーシップに欠ける」といった評がつきまといがちだ。「強い宰相」を演じなければという、別の焦りも加わったのだろう。
「政治とカネ」の問題では、自殺した松岡農水相らの疑惑をかばい続け、年金問題が噴き出すと「1年ですべて照合」と大見えを切る。強気一本やりの国会運営と根は同じだ。
思い返せば、頼みとする「数の力」をもたらしたのは、小泉時代に勝ちとった衆院の巨大議席数である。だが、考えてみればあの総選挙で自民党が有権者に問うたのは、もっぱら「郵政民営化」だけだった。
だからと言って、他の政策課題に手をつけるべきでないとは思わないが、これだけ多くの重要法案で野党をなぎ倒すとなると話は別だ。そこまで信任を与えたつもりはない、というのが多くの国民の率直な思いではないか。
1週間前の朝日新聞の世論調査では、与党の国会運営について「多数決のルールに従っているから問題ない」と見るのはわずか17%で、70%もの人が「数の力で押し切るのはよくない」と答えた。
いまの「数」は前任者に対する信任である。それも郵政民営化という、ほぼ一点についての信任だ。なのに首相は、あの総選挙で追い出した郵政造反組の議員を続々と復党させ、信任の中身を変質させてしまった。
それも考え合わせれば、首相があまりに「数」を身勝手に扱いすぎていることが浮き上がる。有権者の信任というものに、もっと謙虚であるべきだ。
■品格に欠ける政治
一定の審議時間が過ぎれば採決し、政府・与党案を可決する。そんな機械的な審議がこの国会では目立った。最後は多数決で結論を導くのは民主主義の基本とはいえ、少数派もまた、有権者の信任を背景としている。それをわきまえることも与党の責任だ。
選挙で得た多数はあくまで基本であり、国会の役割は具体的な政策や法律のために、さらに大きな多数をつくるべく努力することにある。実のある修正を模索してこそ有権者の期待に応えられるのに、この国会ではまったく顧みられなかった。
河野洋平、扇千景の衆参両院議長の責任も指摘したい。それぞれ与党にブレーキをかけようとした場面もあるにはあったが、最後は禁じ手のような手法も許してしまった。
扇氏は、土壇場の会期延長を「落ち着いて審議ができない」と批判しつつ、重要法案をばたばたと採決していった。衆院の判断を改めてチェックするという、「再考の府」としての参院の役割を投げ出したと言われても仕方あるまい。
「数の力」を振り回す政治は、品格にも欠ける。大きな数を持てば持つほど、謙虚に合意づくりを目指すのが王道であるはずだ。
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