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「2007骨太の方針」にみる安倍内閣のなし崩し的政策転換とマスコミの混乱「小泉政治」と「安倍政治」の分裂(その1〜5)
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投稿者 天木ファン 日時 2007 年 6 月 30 日 23:25:03: 2nLReFHhGZ7P6
 

2007.6.23(その1)
森田実の言わねばならぬ[328]

平和・自立・調和の日本をつくるために【228】
「2007骨太の方針」にみる安倍内閣のなし崩し的政策転換とマスコミの混乱――「小泉政治」と「安倍政治」の分裂(その1――朝日社説に見る「朝日」の分析力の欠如)

「失敗の最たるものは、何一つそれを自覚しないことである」(カーライル)

 安倍内閣が6月19日の閣議で決定した「2007骨太の方針」に対する大新聞の評価は、支離滅裂であり、混乱ぶりを示した。それだけではない。大新聞が、いまだに日本を破壊した小泉政治を支持している。驚くべきことである。
 政府の「2007骨太の方針」について、5紙が社説を書いている。それぞれのタイトルは以下のとおり。
 朝日=《骨太の方針 「構造改革」の旗が消えた》
 毎日=《基本方針07 「美しい国」は経済政策か》
 読売=《骨太の方針 まだまだ詰めるべき点が多い》
 日経=《安倍改革、課題列挙より実行を問う》
 産経=《骨太の方針 改革指針たり得るのか》

 以下、各紙の社説を詳しく見てみよう。各紙が、小泉構造改革の支持者であるだけでなく、安倍内閣の方向転換に異議を唱えている。各紙の基本姿勢はアメリカ政府と同じである。 朝日社説を見てみる。同紙はこう述べている。
《こんどの方針を象徴しているのが、その正式名称だ。昨年までの「経済財政運営と構造改革に関する基本方針」を、今回は「経済財政改革の基本方針」に変えた。「構造改革」の文字を消したところに、安倍首相の本音が垣間見える。
 そもそも構造改革は、小泉政権の旗印だった。「改革なくして成長なし」と唱え、痛みに耐えるよう訴えた。(中略)
 安倍政権はこれを引き継いだはずだった。だが、じっさいには構造改革との距離をだんだんと広げてきた。(中略)
 今回の骨太の方針は、前政権の構造改革路線から抜け出したい、との意思表示と受け止めるべきだろう。(中略)
 骨太の方針は、参院選に向けて、安倍政権の経済政策面での公約である。こうした路線に対して、有権者はどんな審判を下すだろうか。》

 朝日社説は、小泉構造改革支持の立場から、「安倍首相の変節」に対して不満を述べているのである。ここに示されたのは「小泉政治」と「安倍政治」の分裂である。安倍内閣が小泉構造改革離れを起こしたことは否定できない。各紙はこの原因の分析を行うべきなのに、行おうとしない。新聞の堕落である。(つづく)

http://www.pluto.dti.ne.jp/~mor97512/C03446.HTML


2007.6.24(その1)
森田実の言わねばならぬ[330]

平和・自立・調和の日本をつくるために【230】
「2007骨太の方針」にみる安倍内閣のなし崩し的政策転換とマスコミの混乱――「小泉政治」と「安倍政治」の分裂(その2――毎日新聞の社説)

「似て非なるもの」(孟子)

6月20日付毎日新聞の社説は、「小泉政治」と「安倍政治」の分裂を、朝日新聞よりもはっきりと表現している。毎日も小泉構造改革支持である。引用する。

《経済財政運営や構造改革にまで、美しい国を持ち出す意味は、どこにあるのだろうか。美しいなどという抽象的概念を経済政策に持ち込むことは混乱をもたらしかねない。無益といっていいだろう。また、戦後レジームからの脱却を経済政策にあえて持ち込むのならば、自民党政治の総括が必要だろう。》《骨太の方針に求められているのは、時の政権が翌年度の予算編成にどう臨むのか、向こう数年の経済運営の重点をどこに置くのか、明快に提示することである。
 今回はどうか。予算編成への基本的考え方はたった2ページを割いているに過ぎない。その他に、予算制度改革や歳出歳入一体改革も盛り込まれているが、参院選後にも決定される概算要求基準に向けて、十分なものとはいえない。
 経済政策運営でも、総花的であるがゆえに焦点が定まらない。さらに、成長力加速プログラムをこなしていけば、格差問題に代表されるこれまでの政策のツケは解決されるという楽観論が全体を貫いている。》
《経済財政諮問会議の民間議員が提案していた、新自由主義的色彩の強い労働市場改革や航空自由化は内容が大幅に弱められた。
 内閣が代われば骨太の方針の性格や位置付けが変わることは、何ら不思議ではない。ただ、経済政策の根幹部分が妥協的、調整的な方向に向かっていることは見過ごすことができない。》
《今回の骨太の方針が与党の参院選対策色を帯びていることを割り引いても、明るい展望だけでは政治としての責任を果たしているとはいえない。》
《最近、政府は骨太の方針という言葉をあまり使わない。それも無理はない。今年の基本方針は骨太ではない。》

 毎日新聞の経済政策は、一貫して小泉構造改革支持だった。小泉構造改革支持者の立場から見ると安倍内閣の「2007骨太の方針」は、「骨太」とは似て非なるものである。「小泉」支持派と安倍派の分裂が始まったのである。だが、安倍のなし崩し的方向転換で事態が改善されるわけではない。安倍に求められているのは、より徹底した小泉批判である。(つづく)

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2007.6.27(その2)
森田実の言わねばならぬ[340]

平和・自立・調和の日本をつくるために【240】
「2007骨太の方針」にみる安倍内閣のなし崩し的政策転換とマスコミの混乱――「小泉政治」と「安倍政治」の分裂(その3――読売新聞の社説)

「過ちて改めざる是を過ちと謂う」(孔子)

6月20日付読売新聞の社説〈骨太の方針 まだまだ詰めるべき点が多い〉も、小泉構造改革支持派からの〈安倍2007骨太の方針〉への不満の表明である。読売社説を引用する。

《盛り込まれた施策は、素案段階から指摘されたように総花的だ。人口減でも活力を維持できるよう、日本経済の構造を変えていく。そのために、どの政策に優先順位を置き、どう実現していくのか。それがなかなか見えてこない。「骨太の方針」に盛り込まれた施策には、詰めるべき点が多い。歳出・歳入一体改革が筆頭だ。》《景気の回復や税収増を受けて、与党からの歳出増圧力が強まっている。首相の指導力が問われよう。》
《歳出削減などへの踏み込み不足も目立つのは、参院選を目前にしているからだろう。首相にとって初めての「骨太の方針」である。首相は、目指す改革の姿と手順を、より明確に示していかねばならない。》

 奥歯に物が挟まったような曖昧な言い方だが、その底に〈安倍2007骨太の方針〉への強い不満がある。読売もまた依然として小泉構造改革支持である。またに「病膏肓に入る」である。読売よ、目を覚ませ!(つづく) 

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2007.6.28(その2)
森田実の言わねばならぬ[343]

平和・自立・調和の日本をつくるために【242】
「2007骨太の方針」にみる安倍内閣のなし崩し的政策転換とマスコミの混乱――「小泉政治」と「安倍政治」の分裂(その4――日本経済新聞の社説)

「玉の杯底無きが如し」(韓非子)

6月20日付日本経済新聞の社説も、小泉構造改革支持の立場から〈安倍2007骨太の方針〉をかなりきびしく批判している。朝日、毎日、読売と基本的に同じ立場に立っている。引用する。

《安倍晋三首相が初めて手掛けた「経済財政改革の基本方針2007」の成長力を高め日本経済を開放するという方向は間違っていないが、総花的な課題の列挙では不十分だ。与党内の圧力に屈せず、改革を実行する安倍首相の意志が問われる。》
《7年目となる今年の骨太方針は「新しい日本の国づくり」を掲げ、小泉前政権の「改革なくして成長なし」と一線を画した。》
《あれもこれもと項目を詰め込んだ結果、骨太方針の中で優先順位が見えなくなった。各省審議会や教育再生会議など官邸直属機関の結論をホチキスで留めた印象もある。》
《参院選を控えて骨太方針の改革色は後退した。典型が歳出削減だ。08年度の公共事業費は景気動向やコスト削減を考えれば民間議員が主張した「3%削減」が当然だが、与党の反発で数字を明記せず「最大限の削減」という意気込みにとどめた。
 バラマキ色が残る地域活性化策が明記され、尾身幸次財務相も少子化対策で多額の支出増に言及した。経済復調で税収が伸びたのに乗じて歳出圧力が強まっており、きちんと規律を保てるかどうか疑問を残す。》《農家保護を主張する与党内勢力に配慮した。改革を主導する諮問会議が政治配慮を重ねたのでは将来に禍根を残す。
 必要なのは、強力でスピード感のある改革の実行だ。01年秋に諮問会議が出した「改革工程表」のように、首相は分かりやすい実施計画を示すべきではないか。》

 ここにも「小泉政治」と「安倍政治」の分裂が示されている。
 安倍内閣は、参院選を前にして支持率の急落に苦しんでいる。この苦しみから脱するために、安倍首相は「小泉離れ」に踏み切った。要するに選挙対策である。安倍政権に求められているのは、小泉政治との完全な訣別であり、徹底した否定である。(つづく)

http://www.pluto.dti.ne.jp/~mor97512/C03461.HTML


2007.6.30(その2)
森田実の言わねばならぬ[348]

平和・自立・調和の日本をつくるために【246】
「2007骨太の方針」にみる安倍内閣のなし崩し的政策転換とマスコミの混乱――「小泉政治」と「安倍政治」の分裂(その5=最終回――産経新聞の社説)

「他人を害する者は自分を害する」(ヘシオドス、古代ギリシアの詩人)

産経新聞は小泉構造改革を強く支持してきた。6月20日付朝刊の同紙社説にも、小泉構造改革支持の立場がにじみ出ている。ここにも「小泉」と「安倍」の分裂が現れている。

《安倍晋三政権最初の骨太方針ということで注目されたが、教育再生から環境問題まで網羅するなど、構造改革の処方箋(せん)という本来の性格は大きく変質したようだ。》
《方向性としてはその通りだろうが、残念ながら具体性と実効性は乏しい。成長力底上げの目玉はフリーター対策の「ジョブ・カード制度」だし、アジアとの連携では空の自由化程度で、ネックとなる農業では農地法改正など根本問題に踏み込んでいない。
 逆に守備範囲はどんどん広がり、教育再生や環境立国戦略にまで及んでいる。財政と関係があるとの理由かららしいが、その関連性についての言及は極めて少ない。各省庁からの要望を網羅的に盛り込んだからだろう。》《この結果、究極の構造改革である財政再建に対する姿勢があいまいとなった。消費税を含む税制改革の論議は今秋以降に先送りしたままで、歳出削減については昨年の骨太方針が示した「歳出・歳入一体改革」の実行を繰り返すにとどまった。
 とりわけ、公共事業では参院選に配慮したためか、具体的削減幅も示していない。》
《小泉純一郎前政権は骨太方針を構造改革の指針として金融再生や郵政民営化を実行した。最大の課題として残された財政構造改革は緒に就いたばかりで、その一里塚である基礎的財政収支の黒字化でさえまだ先だ。
 骨太方針は原点に返らないと、改革の指針たり得ないのではないか。》

 産経新聞は「原点に還れ」と主張している。「小泉構造改革に戻れ」というのである。
 大新聞は、いまだ「小泉構造改革の夢よもう一度」である。
 だが、これほど愚かなことはない。小泉構造改革は、東京(中央)以外では、はっきり否定されてしまっているのである。小泉構造改革は「百害あって一利なし」の誤った政策だった。大新聞の記者や幹部たちは、それすらわからない。まるで石頭である。しかし、安倍政権は、はっきりとした大転換を行うべきであるのに、それができない。中途半端は身を滅ぼすであろう。それにしても、大新聞の硬直的な姿勢は困ったものである。まるで、思考停止状況にある。(おわり)

http://www.pluto.dti.ne.jp/~mor97512/C03466.HTML

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