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http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/feature/tachibana/media/070629_abe/index.html から転載。
立花隆の「メディア ソシオ-ポリティクス」
女子高生も「経験不足」と嘆く 未熟な安倍首相よ、政権を去れ!
2007年6月29日
どの世論調査をみても、安倍内閣の支持率はガタ落ちである。参院選での自民党敗北はほとんど必至という状況である。
最近の「週刊新潮」は、全国29の1人区で5勝24敗して、最悪34議席(改選64議席)という予測すら出している。
自民党内では早くも勝敗ラインの線引きと、責任ラインの線引きをめぐる甲論乙駁がはじまっている。
ハードルを下げることがさらなる大敗を招く
安倍首相サイドはちょっとやそっと敗北しても、首相辞任に追いこまれたりしないように、ハードルを低く低くしようとしている。中川幹事長は「過半数割ったくらいでの退陣などありえない」などと強調している。
しかし、この手の発言がすぎると、党内には戦う前から敗北気分がみなぎってしまって、予測以上に敗ける一因を作ってしまうかもしれない。
いまや安倍首相は、人気回復に少しでも効果がありそうなパフォーマンスは何でもやりますという気分になっているらしくて、環境問題の新聞広告に出てみたり、年金問題の責任をとると称して夏のボーナスの一部を返上してみたり、戦没者の慰霊に沖縄を訪れてみたりしている。
しかし、やることなすこと裏目裏目と出てしまい、環境問題の広告では、巨額の広告費の資金の流れが不透明と週刊誌に書かれたり、ボーナス返上については、「なんで一部だけしか返納しないんだ」の声が出たりしている。
本当のところ、どれだけ返納するかは新聞報道によってちがいがあり、560万のボーナスに対して、返納額は数百万としているところもあれば、73万円としているところもある。後者が正しいとすれば、あまりにもわびしい金額で、はかりしれないほど巨額の損失を国民に与えた「消えた年金」問題の責任のとり方としては、ほとんど国民を愚弄するものといってよい。
月々巨額の給与をもらい、巨額の資産を保有している身なのだから、どうせパフォーマンスとしてやるなら、きれいさっぱり全額返納してみせるべきだったろう。
このあたりが、安倍首相の政治センスのなさである。
政治センスの欠如が意欲の空回り生む
安倍首相は決してバカでもなければ、本質的に無能な人間でもない。意欲もあれば、努力もいろいろしているようである。
しかし、やることなすこと裏目に出て、努力は評価されない。意欲は空回りする。
なぜかといえば、その言動に政治センスがないからである。
政治センスとは何か。自分の言動が生みだす政治効果をすばやく直感的に計算して、それを最大化する方向に言動をすぐに微調整する能力である。
小泉前首相はそれが抜群にあった。安倍首相はそれが悲しいほどないから、意欲も努力も空回りをするというより、逆効果の方向に働いてしまう。
パフォーマンスに終わった沖縄慰霊の旅
いま話題の従軍慰安婦問題にしてもそうだ。つい先日、米議会から突きつけられた、「責任を明確な形で認め公式に謝罪すべきだ」の決議にしても、この決議案が最初に出されたのは今年1月ごろだが、そもそもそのとき出した談話がまずかった。
その中で、強制性を認めた河野談話を踏襲する立場を表明したものの「(狭義の)強制性はなかった」などという妙に細部にこだわった但し書き付きの談話にしたために、アメリカ側の反発をまねいた。
4月の訪米時にアメリカの野党、市民団体、マスコミからこの問題をむし返され、さらにまた今回の決議案可決にまでいたってしまったのである。
謝るときめたら、細部にこだわらず、きれいさっぱり謝っておけば(河野談話を認めておけば)、ここまで問題をこじらせることはなかっただろう。
沖縄訪問でも、ちょうど安倍首相の訪問時に、戦争の最終段階での軍部からの住民に対する自殺(玉砕)の強要があったとする歴史教科書の記述に対して、文科省が、強要の証拠が十分にあるわけではないことを理由にその記述の書き直しを命じるという問題が起きた。
安倍首相の慰霊の旅は、地元の人からは、心からの慰霊心があっての旅ではなく、パフォーマンスの旅と受けとられてしまった。
このときも安倍首相がすぐに事態の重要性をつかんで適切な行動(文科省をたしなめるなど)をとっていれば、あれほどネガティブなイメージで受け取られなかったろうに、打つ手打つ手が手遅れの反応ばかりだったから、事態をどんどん悪くした。
この人の議会におけるさまざまな問題についての答弁にしても、あるいはいろんな政治的パフォーマンスにしても、妙な細部へのこだわりから、単純明快なメッセージ性を欠くことが多い。
大衆に訴えかける政治的メッセージには、単純明快さと、目の前の現実に即応して発される即時性が必要なのに、この人の言動には基本的にそれがどちらも欠けている。
そこが小泉前首相との決定的なちがいだ。小泉の政治的言動(パフォーマンス)には、いつも単純明快さと、即時性があった。それが大衆の心をつかんだ。
だが、安倍首相にはそれがない。
携帯アンケートでも最低の支持率
最近の週刊朝日にのっていた、
「アンケート調査でわかった、いまどき中高生(12〜18歳)『笑撃』の政治観」
の安倍評が面白かった。これは携帯コンテンツサービス会社の「メディアシーク」がケータイで行ったアンケート調査の結果で、正規の社会調査というにはほど遠いいいかげんな調査だが、それだけにかえって面白い。
安倍首相の評価は驚くほど低い。安倍首相を「好き」かどうか調べると、「好き」はわずか19%で、あとはみんな「NO」。
それより驚きは、「誰に首相になってほしいか」の問いに、「安倍首相のままでよい」とする人はわずか5%しかいない。それに対して、圧倒的多数(32%)が、「小泉純一郎」の名前をあげている。
安倍首相の5%は、「東国原英夫」の9%の半分程度で、「爆笑問題・太田光」「島田紳助」「田中真紀子」のいずれも4%とほとんど肩をならべる支持率である。要するに、安倍首相は、太田光、島田紳助程度の評価しか受けていないのである。
中高生からも見放された安倍首相
安倍首相を「好き」とする人の理由を見ると、「なんとなく」「優しそう」「いい人そう」「顔が可愛い」
といった感覚的フィーリングがもっぱらで、人間としての中身の評価はゼロである。逆に「嫌い」な理由は、もっぱら
「頼りない」
「優柔不断」
の2つだったというが、私もこれに賛成だ。
不支持の理由として、具体的には、
「内閣に不祥事が起きても弁護してばかり」
「身内で政治をしている感じがする」
「現実みがないことが多い。年金にしても調査期間に無理がある」
「人柄だけで当選して美しい国とか抽象的な事ばっかり」
「なにがしたいんだかわかんない。うつくしい国って何なんですか!?」
といった答えが出てきた。
なかには
「明らかに経験不足」
という声もあった。女子中高生にまで「経験不足」と指摘されるようでは、安倍首相の評価も地に落ちたというべきだろう。
安倍首相の評価は「経験不足」に尽きる
つい先日、ある新聞記者の訪問を受けて、2時間ばかりのインタビューを受けつつ、なぜ安倍首相はあれほどダメなのかを語り合った。
結局、たどりついた結論がこの女子中高生の評価と同じだった。
「経験不足」
の一語につきるということである。
どんな世界でもそうだが、一定の責任あるポジションにつくためには、どんな人でもその世界での一定の経験が必要である。
ところが安倍首相には、閣僚としても、党役職者としても、ほとんど経験らしい経験がない。閣僚としては、官房長官を11カ月。党の主要な役職としては、幹事長を12カ月やっただけなのである。
これだけの経験しか持たずに総理大臣になってしまった自民党政治家は、安倍首相以外誰もいない。
安倍首相は本当に「経験不足」そのものなのである。
内閣全体が未熟者の集まり
政治の世界では、いつでもみな激しいパワーストラグル(権力闘争)をくり広げており、その中で勝ち残ったものだけが政界実力者となる。
政界実力者間で、さらに権力闘争がくり広げられ、最終的に勝ち残ったものが総理の座を獲得する、というのが、これまでは普通の流れだった。
ところが、小泉政治の5年間の間に、派閥という実力者間の権力闘争の基盤をなしていた構造が完全に堀りくずされてしまった。
だから、実力者同士が、派閥を率いての集団戦をするという形で権力闘争を行い、実力で政権をかちとるということがなくなってしまった。
派閥を基盤とした実力者がみんな実力を失ってしまう中で、絶対権力者となった小泉が禅定によって、政権を安倍に譲る形で安倍政権が誕生した。
安倍は激しいパワーストラグルで鍛えられることが一度もなしに、政権を取ってしまった。つまり、あまりに未熟なまま、総理の座についてしまったわけである。
もし、安倍首相が組閣にあたって、自分の経験を補ってくれるような人材を集めていればよかったのだろうが、現実にやったことは反対だった。周囲に集めたのは、ほとんど自分より未熟な若手の仲間連中ばかりだった。その結果、内閣全体が未熟者の集まりになってしまったわけである。
安倍首相では日本は壊れてしまう
これからどうなるのか。
いまのところは、長期的な見通しはつかない。参院選で安倍首相が敗けることは確実だが、そのあとは、安倍首相の敗け方いかんで、どんな展開もありうると思う。
それこそ自民党も民主党も分裂して、大々的な政界再編が起こることだってありうると思う。
いずれにしろ、この未熟な総理大臣には早く退場してもらいたい。最近の強行採決の連発を見ていると、こんな人を首相にしておいては、日本は壊れてしまうと思う。
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立花 隆 著書は、「文明の逆説」「脳を鍛える」「宇宙からの帰還」「東大生はバカになったか」「脳死」「シベリア鎮魂歌—香月泰男の世界」「サル学の現在」「臨死体験」「田中角栄研究」「日本共産党研究」「思索紀行」ほか多数。近著に「滅びゆく国家」がある。講談社ノンフィクション賞、菊池寛賞、司馬遼太郎賞など受賞。
評論家・ジャーナリスト。1940年5月28日長崎生まれ。1964年東大仏文科卒業。同年、文藝春秋社入社。1966年文藝春秋社退社、東大哲学科入学。フリーライターとして活動開始。1995-1998年東大先端研客員教授。1996-1998年東大教養学部非常勤講師。2005年10月-2006年9月東大大学院総合文化研究科科学技術インタープリター養成プログラム特任教授。2006年10月より東京大学大学院情報学環の特任教授。2007年4月より立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科特任教授。
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