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□【正論】ジェームス・アワー 米議会慰安婦決議案のナンセンス [iza]
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【正論】ジェームス・アワー 米議会慰安婦決議案のナンセンス
03/31 06:40
■議員の単なる意見表明に憂慮不要
≪米国人も知らない決議案≫
日本と米国は世界で最も活気に満ちた民主主義の2カ国であり、自由、独立、正義など多くの価値観を共有する。だが、民主主義の実践の仕方で多少の違いがあることを踏まえておくのは大切だ。たとえば、日本は英国に似た議会制民主主義国であり、米国は共和制の民主政府をもつ。
日本では毎年100近い議案が国会に提出され、そのほとんどが法律となる。一番重要なのは年度予算である。これに対し、米国議会は何百という議案が上下院の議員から提出されるが、その半分以下が法律として制定されるだけだ。それぞれ長所短所があるが、ともに民主的で、単に異なるのだ。
ほとんどの日本人にとって、米国議会決議案はなじみがないが、実は多くの米国人もそのようなシステムがあることを知らない。これら決議案は、単に議員がある問題について述べる意見に過ぎない。決議案が通過したとしても新しい法律ができるわけではないし、何も起こらない。議員の中には彼らの代理として秘書たちに賛否の票をいれさせる人さえいるというが、それもこれら決議案が彼らの意見表明に過ぎないからだ。
たとえば日本がこのような決議システムをもっていたとする。国会で「米国政府は南北戦争以前の米国に奴隷がいたことを真摯(しんし)に謝罪すべきだ」、あるいは「米国政府は地球環境保全のため京都議定書を受け入れるべきだ」という決議案が出されるかもしれない。もし決議案が採択されたとしても、米国議員の中には、決議案に賛成する人も、怒る人もいるだろう。あるいは無視する人がほとんどかもしれない。わかりきったことだが、日本は米国の政策に指図はできない。
≪むだに腹を立てぬように≫
現在米国議会で審議中の決議案は、カリフォルニア選出のマイク・ホンダ下院議員によるもので、「日本政府は慰安婦問題について真摯に謝罪すべきだ」としている。日本政府はこの問題に関してこれまで何度もお詫(わ)びを表明しており、米国で再びこの問題が取り上げられたことに多くの日本人は憤りを感じている。
筆者が米国防総省にいた1980年代、米国議会は日本の「中期防衛力整備計画」で日本の防衛予算をGNPの1%以上か、2%まで引き上げるべきだ、といういくつかの決議案を採択した。筆者は同計画が何であるかを知っている米国下院議員がほとんどいないことを知っていたので、これには非常に驚いた。賛成した下院議員は単に「日本はもっと防衛に力を入れるべきだ」と考えていたにすぎないから、本人や秘書などの代理人が決議案に「イエス」と票を入れたのだ。このことは日本で何日間か「ニュース」だったが、米国内で決議案のことを知っている人がいてもほとんどニュースにならなかっただろうし、今日では大方の日本人が忘れているだろう。
決議案を提出したホンダ議員の動機について憶測はしたくない。筆者にわかるのは、一部メディアがこの決議案を取り上げてはいるが、平均的な米国市民は関心もなく、決議案そのものについて知識を持ち合わせていない、採択されてもそのことを知ることさえないだろうということだ。もし筆者が日本人なら、むだに腹を立てないようにする。多くの日本人や親米的な国会議員さえも同盟国である米国でなぜこのような決議案が出されるか、いらだちを覚えるだろうが。
≪「外圧」にも当たらない≫
決議案は「外圧」にも当たらない。ほとんどの下院議員は慰安婦問題についての詳しい知識をもっていない。最終的に決議案が採決されても、この問題について勉強する人はほとんどいないであろう。また、詳しく勉強したとしても次の2つの理由からこの決議案に反対するだろうと筆者は考える。
第1に、彼らは日本がすでに何度も謝罪しており、自国の歴史を忘れることはないとわかるであろう。2番目に、日本のこの繊細な問題について米国議会で簡単に決議案を出すのは良くないと思うであろうから。
日本で国会議員が投票中にときどき「牛歩戦術」を使うのを見て変に思う米国人がいるかもしれない。同じように米国議会の決議案も多くの日本人にとっておかしく見えるに違いない。大切なのはともにあまり重要ではないということだ。民主主義国である両国にとってこれらは特殊だが、重要な意思表示ではない。日本のことを良く知る米国人は牛歩戦術を心配しない。ほとんどの米国人がその存在さえ知らない議会決議案に日本人は憂慮すべきでないと筆者は心から信じる。
(James E Auer=米バンダービルト大学教授、日米研究協力センター所長)
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