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2007年6月26日
http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/column/tahara/070626_16th/index.html
6月18日の朝から21日までシンガポールへ行った。実はこれは8月15日に放送する特番の取材のためだった。
ところが数日留守にしている間に、国内の空気ががらっと変わっているのに驚いた。シンガポールへ行く前は、日本中の新聞やテレビが年金問題で持ちきりだった。社会保険庁が5000万件以上の年金を行方不明にしてしまった、“消えた年金”がどれだけあるのか、年金をかけたのに受け取れない人がどれくらいいるのかと、そのことで、日本列島は大騒ぎになっていた。
なぜ「会期延長はけしからん」のか
帰国したら今度は「会期延長はけしからん」という話題で持ちきりになっていた。国会の会期が12日間延長され、7月22日に投開票予定だった参院選が29日に1週間後ろ倒しになる、ということで大騒ぎになっていた。
会期延長の目的は「公務員制度改革」だ。これは渡辺善美行革担当大臣が提示した、各省庁による退職者の再就職斡旋をやめる代わりに設置する「公務員人材バンク(新人材バンク)」の審議のために、会期を延長するということだ。
しかし、一度決めた会期、投票日を変えるとはけしからん、という声が強い。「人材バンクを設置することが公務員制度を改革したことになるのか、会期を延長してまで審議する問題なのか」という声もある。今は、会期延長も、新人材バンクの設置も、審議も、すべてやってはいけないようなムードになっている。
もともと新人材バンクは、官僚の天下りが談合の温床になっていることを問題視した渡辺大臣が、これを正すために提案したものだった。しかし多くのメディアは、「人材バンクを設置する法案を作ったところで国会に出せるはずがない」と報道した。なぜならば官僚たちが全員反対するからだ。
http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/column/tahara/070626_16th/index1.html
虎のどてっ腹を蹴っ飛ばした渡辺行革担当相
かつて、橋本龍太郎元首相が公務員制度改革を打ち出したが、あれは行政改革の一環というよりは、公務員の数と給料を減らすことを狙ったものだった。ところが、官僚の中でも優秀な人たちが「協力します」と集まり、実は協力どころか根底から足をひっぱって、改革を"換骨奪胎”した。
「公務員の数や給料を減らすのは枝葉末節なことであって、もっと根本的な改革をしなければならない」と言って、なんと省庁再編にすり変わった。厚生省と労働省が一緒になって厚生労働省になったり、自治省と郵政省などが固まって総務省になったり、省庁の数を減らすことにした。
ところが、公務員の数も給料も減らなかった。官僚たちは見事に橋本内閣の公務員制度改革を骨抜きにしたわけだ。
このように、公務員改革には公務員たちが束になってかかってくるし、さらに悪いことに、自民党の中にはいわゆる族議員が多く、まるで官僚たちの腰巾着のようになっている議員も多いから、そういった議員たちも一緒になって公務員改革に反対してくる。
この国会が始まる前に、渡辺善美がこの新人材バンク構想をぶち上げたとき、自民党内では彼に対して、「親の血を引いて調子の良いことばかり言うが、現実問題できっこない」、というのが大筋の見方だった。
僕はその渡辺善美大臣をサンデープロジェクトに呼んだ。そして「公務員問題という虎の尾を踏んだんだって?」と聞いた。すると「虎の尾を踏んだのではない。虎のどてっ腹を蹴っ飛ばしたのだ」と彼は言っていた。
http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/column/tahara/070626_16th/index2.html
公務員制度改革が権力闘争の具に
公務員制度改革は自民党の中でも反対が強かった。今回はアンチ旧・清和会がこぞって反対した。アンチ旧・清和会というのは旧・経世会や旧・宏池会のことだが、彼らは強硬に反対した。そんな中、ちょうど年金問題が持ち上がったため、それにまぎれて公務員改革の法案のほうは、ここぞとばかりお蔵入りにしてしまおうという動きが自民党内で起きたのだ。
しかし安倍首相は会期末ぎりぎりになって、この改革を断固やると宣言した。それまではっきりものを言わないといわれていた安倍首相が「公務員制度改革を断固やる!そのために会期を12日間延長する!」と切り出した。塩崎恭久官房長官も「断固やる」と言った。
もちろん、それに対して自民党のアンチ旧・清和会が、「そんなことを国会で審議したら参議院選挙ができなくなってしまう、中途半端な審議で終わってしまうぞ」と猛然と反対した。
そして、マスコミもこれに反対する声が強くなり、大騒ぎになってしまったのだ。どうやら情報源は、安倍首相の敵対勢力となっている旧・経世会や旧・宏池会のようだ。経世会や宏池会寄りの人たちがマイナスの情報を流しているようなのだ。
公務員制度改革についても、国会の会期延長についても、野党が反対の声をあげるのはわかる。野党というのは、与党のやることに何でも反対するものだ。そのほうが選挙を戦いやすくなるからだ。しかし、自民党やマスコミがこぞって反対するのはどうなのか。
公務員制度改革も、審議をするための会期の延長も良いことではないか。なぜ新聞もテレビもこれに反対するのかわからない。
http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/column/tahara/070626_16th/index3.html
“安倍たたき”がファッションに
僕は本当にマスコミというのは信用できないと思うのだが、社会保険庁改革のときは「たった4時間の審議で強引に採決した」と批判しておきながら、今度は会期を延長してじっくりと審議をしようとしたら「強引に会期を延長した」と叩く。この前はたった4時間で採決をしたことに怒り、こんどは会期を延長して審議をすることに怒っている。なんでも反対なのだ。
しかも、「会期を延長したらカネがかかる」という声もあるが、カネがかかるのは議員の懐であって直接国民に負担がかかるわけではない。今頃になって「新人材バンクなんていうのは公務員制度改革にはならない」というアンケート結果まで出てきている。マスコミはどこの立場に立って反対をしているのかよくわからない。
国会の会期が延長して参議院選挙の投票日がずれて村祭りと重なるとか、運動会と重なるとか、スケジュールが立たなくなるとか、「何を言っているのだ」と思う。
社会保険庁改革の強行採決に反対したように会期延長にも反対しているが、今度はじっくりと審議するために会期を延長するとしているのだ。なんでも反対・批判をすればよいというものではない。
マスコミがこぞって安倍首相を批判しているのは、おそらくマスコミはすでに「安倍が負ける」と踏んでいるからだろう。僕はよく言っているのだが、「マスコミというのは“強きを助け、弱きを挫く”」ものだ。今回の会期延長に関する批判は、その駄目な部分が現れた騒動だと思った。
イラク復興特別措置法についても、今回の社会保険庁改革についても、安倍首相のやりたいものだけをバタバタと突っ込んでいるとも批判されている。しかし、小泉元首相はすべてをバタバタとやってもむしろ評価された。ところが、安倍首相が同じことをやると自民党内部からもマスコミからも叩かれる。そういう意味で今、安倍批判が一種のファッションになっているとも言える。
http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/column/tahara/070626_16th/index4.html
権力闘争を国政問題にすり変えるな
公務員制度改革の審議のために国会の会期を延長することは、参議院選挙の対策でもある。年金問題だけで戦うのでは、今の自民党はぼろぼろの受け身状態だ。公務員制度改革は、自民党にとって一種の「攻め」の材料になるわけで、ぼろぼろの受け身状態を緩和したいという気持ちがあるだろう。
これを、野党が批判するのは当然だ。選挙日が遅れれば、本当は野党だって選挙の準備期間が増えて、悪くはないはずなのだが、安倍批判は選挙戦術のためだからこれを問題にするのだろう。
そして、自民党の青木幹雄参院議員会長も16日の講演で「責任者は安倍総理。責任の所在をはっきりして戦う参院選だ」と言及した。これで安倍責任論が明白になった。これまで公務員制度改革に反対していたアンチ旧・清和会というのは、つまりはこの青木幹雄参院議員会長のことだ。
マスコミはこぞって安倍首相を叩いているが、僕は責任を背負って会期延長を決めた安倍首相をむしろ評価したい。
いま早くもポスト安倍の話題が出始めている。ポスト安倍には麻生太郎外務大臣や福田康夫さんという声が聞こえている。
福田さんを推す声の中には、旧・経世会のように「安倍はもう駄目だ」という人と、旧・清和会のように「いま年金などで批判の矢面に立っている安倍さんをいったん退場させて、時機をみてもう一度安倍さんを立たせたい」という二つの立場の人たちがいるようだ。
だがこうした自民党内の権力闘争を国政の問題にすり替えてしまうのは、やはり大問題だろう。
田原 総一朗(たはら・そういちろう)
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