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昨日、参議院厚生労働委員会に安倍首相が出席して、審議が行われた。テレビ中継で国会で答弁する安倍首相をみるのは、私にとって久しぶりのことであった。総理大臣に対する質疑が行われるということは、例の年金時効特例法案も社会保険庁改革法案の審議も大詰めを迎えたということであろう。参議院の議席数を考えれば、両法案とも可決成立するであろう。自民党や公明党は両法律を成立させて、「国民の皆さん、年金はもう大丈夫です」と参議院選挙で演説したいのだろう。この前にも書いたように、おめでたい首相が演説をし易いようにするためのお粗末な法律案なのである。
ふだん私はこういうテレビ中継にはあまり興味はない。国民が大きな関心をもっているこの場面で、安倍首相がどのようなパフォーマンスを示すのかに興味があったので、ちょっとみた。ハッキリいって、馬鹿らしくなって最後まで観る気になれなかった。安倍首相が強調していたことは二つだった。ひとつは、国民のすべての記録を調査し、年金の支払い漏れがないようにするということである。もうひとつは、国民を見下すような横柄な態度をとるなどといった社会保険庁の職員には辞めてもらう。新しく設立される年金機構は、“問題のある職員”は採用しないということであった。これほど露骨な馘切りを公言する総理大臣の言い草を、私はこれまでに聞いたことがない。
まず第一点であるが、年金の支払い漏れがないようにするのは当然のことである。そんなことがあってはならない。1年以内にすべての年金記録の調査・突合・統合をやるといっているが、それも当然のことである。問題は、その方法と費用なのである。そして、信頼性ということが大切なのである。政府がすべての年金記録を調査・突合・統合をしたといっても、その結果を国民が納得しなければ何にもならないのである。証拠が見付からない場合は第三者機関で結論を出すといっているが、そんなスーパーマンのような第三者機関をどうやって作ることができるのだろうか。これらの点は、まだ全然詰まっていない。要するに、強行採決してでも上記法律を成立させたいだけなのである。なぜ? おめでたい首相自身や自民党や公明党の公認候補が、選挙で演説し易いためだと何度もいっているでしょうが……。
こういう問題が起こったのは、社会保険庁の職員がダメだったからだという。自治労という組合に支配されていたからだという。しかし、公務員の仕事ぶりなんていうのは、だいたいそんなものである。「国民を見下すような横柄な態度をとる」役人など、掃いて捨てるほどいる。それがダメだというのならば、ほとんどの役所は非公務員型にしなければならない。今回の年金記録が宙に浮いた問題は、作業手順が最初から間違っていたからである。また導入したコンピュータ・システムにも問題があったのである。そんな不完全なコンピュータ・システムのために1兆数千億円も使ったというのだから、情けなくなる。この二つとも、政治家が最後は決断しなけばならない性質の問題である。
今回このような問題状況が明らかになった訳であるが、これにどのように対処するかということも、政治マターである。政治家が問題を迅速かつ正しく把握して、適切な対策を果断に実行すべき政治的課題である。政治家は、その“骨太の方針”を示さなければならない。骨太の方針とは、こういうときに使う言葉なのである。総務省に検証委員会が設置されて、これから歴代の厚生大臣や社会保険庁長官などの責任を追及するという。結構なことだが、厚生大臣を2度もやり、直前まで行政のトップにいた小泉前首相は責任を求められても「そんな金はないよ」と早くもいっている。これが国民があんなに支持した、そして安倍首相の産みの親である小泉前首相の本性なのである。小泉首相の「人生いろいろ、会社もいろいろ」発言を改めて思う出そう。要するに、国家の最高責任者という矜持や責任感など少しもないのである。
総務省の検証委員会がこうした者の責任を追及することなどできる筈がない。永田町徒然草No.453で述べたように、彼らは会社でいうならば社長や取締役などであったのだ。商法では、こうした取締役等は株主代表訴訟で個人責任を追及できる。彼らは、国家と国民に多大な損害を与えたのである。国の株主は、一人ひとりの国民である。今度の参議院選挙は、株主総会のようなものである。おおぜいの株主が本当に怒っているというのならば、株主総会に出席して社長以下の役員を解任するしかない。先に行われたフランスの大統領選挙では、80数%もの国民が投票した。わが国で80%もの国民が投票所に足を運べば、自公“合体”政権は壊滅的な敗北を喫する。ダメな経営者を退陣させることは、賢明な株主・国民の権利であり義務なのである。
それでは、また明日。
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