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二〇〇八年の暮れから〇九年初頭にかけて、裁判所から突然の出頭命令が届く。「裁判員候補登録済」の通知である。裁判所からの呼び出しなど一生縁がないと思っていた市民には、衝撃の手紙である。「そういえばそんな光景を以前、テレビで見たな」などと初めて思い出す。
同封の冊子を見てさらに不安に駆られる。凶悪な殺人事件の裁判だ。素人にそんなことができるか、と突っぱねてもムダ。これは「国民の義務」であり、出頭を拒否すれば罰せられる。さて仕事はどうする。親の介護はどうする。なぜ自分が選ばれたのかとあわてても、もう遅い。
〇九年春施行予定の「裁判員制度」の模擬裁判が五月末から三日間、東京地裁で行われた。この初リハーサルで、制度の問題点が改めて浮き彫りになった。ひとつは裁判員選任の方法である。第一段階は選挙人名簿から無作為抽選で選ばれるが、絞込みの際には、さまざまな選別が行われる。たとえば裁判長による最終面接。密室で「警察を信用できるか」、「死刑制度に反対していないか」などが質問されるという。これはまさにプライバシーに踏み込む思想調査であり、制度が謳う公平公正に反する。検察と弁護士はそれぞれ四名まで候補者を排除できるが、その理由は非開示だ。無理に仕事を調節して出席したが結局「不適格」と烙印を押されることもある。その心理的打撃は想像に難くない。さらに参加するのは極刑を含む重大な刑事事案の一審のみ。なぜ軽微な民事紛争ではないのか。無意味であり理解できない。
「裁判員法」は〇四年、与野党全会一致の賛成で成立した。日弁連は「司法への市民参加」を積極的に推進、成立は悲願であった。だがこれは欧米の「陪審員」とも「参審制」とも違う。両者の欠点だけを併せたような、日本独自の体系なのである。「裁判の公正」を主張するなら、前述のような思想調査は許されない。そもそもこの制度じたいが、司法の独立・裁判官の職権の独立を定めた憲法に違反する。さらに法廷で知った秘密を他人にうっかり漏らしても罪に問われる。判決への疑惑や後悔を、生涯独りで墓場まで持ち込まなければならない。共謀罪に匹敵する悪法である。
とんでもない実体が知れわたるにつれ、参加を望まない人が増え続けている。それでも制度を強行しようとすれば、資格要件の緩和で裁判員の質を落とすしかない。現に法務省は「死刑反対」による辞退を認める構えだ。人々は被告の生死を決める重責を、国家権力から「義務」として背負わされる。ずさんな審理が横行し、いま以上にえん罪は増え続ける。「裁判員法」は人権と民主主義とは相容れない、現代版「国家総動員法」なのである。 (隆)
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