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東京都内に住む佐藤ウメさん(75歳・仮名)は、一人暮らしで年金もない。夫と鋳物屋を営んでいたが、斜陽産業の悲しさで商売はうまく行っていなかった。そのため夫婦ともども年金に入っていなかった。
夫が肺がんで他界した6年前からは、惣菜のパック詰めと清掃の仕事を掛け持ちしながら、細々と暮らしてきた。だが心臓に持病があるウメさんは、二つの仕事のかけ持ちが体力的に無理になった。週に3〜4日、1日1時間半の清掃だけとなった。手取りは4万円足らず。
夫が残してくれた自宅があったので、ホームレスにはならずに済んだ。自宅といっても豪邸ではない。建坪、8坪の小さな家だ。電気代、ガス代、固定資産税などを払ったら、月4万円足らずで食べていけるはずがない。息子(47歳)が都内にいるのだが、鬼嫁がいてウメさんが訪ねるとスリッパが飛んでくるのだそうだ。「出てゆけ」という罵声と共に。
そこで区役所に生活保護を申請した。窓口に行ったところ言下に断られた。「持ち家がある人に生活保護は適用できません」。ウメさんは途方に暮れた。
ウメさんの事情を知った筆者は、社会福祉事務所に勤務した経験のある弁護士に相談した。「『リバースモゲージ』という制度を使えばいい」ということだ。「リバースモーゲージ」は、持ち家を担保にして区から生活費を借りる制度だ。家の不動産価値の70%まで貸し付けてくれる。
ウメさんは長年の苦労がたたったのだろう。実際の年よりも老けて見える。耳も遠い。頭も少し緩みかけているようだ。残念だが「リバースモゲージ」の制度適用を役所に申請できるだけの交渉能力はない。
筆者が同行することになった。区役所の生活福祉係まで一緒に足を運んだ。ウメさんは地下鉄の階段を登るのも苦しそうだった。息を切らしながら区役所の窓口に着いた。どうせまた同じセりフで断られるだろうと思い、筆者はいきなり「『リバースモゲージ』の手続きをしたいのですが」と切り出した。
生活福祉係の担当者は、ウメさんの家族構成、経歴、貯金、保険などを一通り聴いた。そのあげく言うには「『リバースモーゲージ』を使うには推定相続人の同意が要る」。家を担保にするのだから当然と言えば当然だ。
推定相続人は上述した一人息子だ。ところがこの息子たるや、ひと月4万円足らずで生活している母親(ウメさん)に小遣いをセビリに来るような男だ。母親が死んだ後、家は息子の物になる。『リバースモーゲージ』に同意するはずがない。こうした事情も区役所で話した。
すると区役所の担当者は無責任に言い放った。「今の家を売るとか、人に貸してご自分は家賃の安いアパートに住むとかすればどうですか?」。
売った後、安い家を探したところで差額は知れている。その程度の額の金なら、あっと言う間に使い切ってしまうだろう。人に貸しても同様だ。差額は月3万円にもならないだろう。ウメさんにどうやって生きてゆけというのか。
殴って逮捕されないのだったら、区役所の担当者をよっぽど殴ろうかと思った。折りしもその朝は福岡県の社会保険事務所で、職員の対応に腹を立てた男性が、職員を殴り逮捕されていた。筆者は拳を握った一刹那、そのニュースが脳裏をよぎった。もしテレビを見ていなかったら、殴ったかもしれない。
なまじ家があったために、ウメさんは生活保護の網の目から漏れ落ちそうなのだ。皮肉というしかない。今後の交渉は「生活保護支援法律家ネットワーク」の弁護士を頼ることになった。
(田中龍作)
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