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□脱北者漂着事件が突き付ける「北」崩壊時の「海上ルート」 [読売ウイークリー]
http://seiji.yahoo.co.jp/column/article/detail/20070612-03-0202.html
2007年6月12日
脱北者漂着事件が突き付ける「北」崩壊時の「海上ルート」
小舟で脱北者が青森県に漂着した。脱北者が海路、日本へ直行してきた例は珍しいが、将来、北崩壊などの「Xデー」に、難民らが海上ルートで日本へと押し寄せる可能性もある。
長さ7メートルほどの木造船に乗った男女4人が青森県深浦町に漂着したのは、2日午前4時50分ごろだ。「生活が苦しく、仕事もない。今の体制では食べていけない」と考えて脱北を決意したという。
実は、これまでも海路、日本へ直接「脱北」してきたケースが皆無だったわけではない。北朝鮮帰還事業で渡った関西地方出身の元在日帰国者の男性が清津の港に停泊中の日本船に潜り込んで脱北し、下関へ上陸したケースがあった。1963年8月のことだ。
さらには、83年10月には日本への亡命を求める北朝鮮兵士が日本船「第18富士山丸」に潜んで密航した事件、87年1月には「ズ・ダン9082号」という北朝鮮船が福井港に漂着して亡命を希望し、台湾経由で韓国に亡命した事件があった。
今回の事件には、どのような背景があったのだろう。
専門家は、昨年末ごろから中朝国境付近の警備が一層厳しくなったことや、漁民の生活状況が悪化していることを指摘する。中朝国境で北朝鮮の内部事情について取材を続けるジャーナリストの石丸次郎氏はいう。
「近年、北朝鮮経済は混乱し、警察や保衛部(情報機関)、軍などの系列企業も商売に乗り出すなどして、弱肉強食の“強奪市場経済”のような状況が生まれています。そこで当局は昨年末ごろ、『112号党生活指導小組』という組織を新設し、市場経済化の最先端をいく中朝国境付近と清津で取り締まりを強化した。それに伴い国境警備が極めて厳しくなり、脱北しようとしても国境に近づくこと自体が難しくなっているのです」
もっとも、今回の4人の場合、北朝鮮では通常、個人所有がありえない船や、購入費が北朝鮮の年収の数倍以上に相当する燃料を用意していたほか、腕時計や覚醒剤も所持していたことから、「本当に生活が苦しかったのか」という疑問の声も聞かれる。
しかし、それは北朝鮮の事情を知らないことによる誤解だと、石丸氏は指摘する。最近、腕時計は安い中国製が出回り、いまや北朝鮮でも高級品ではなくなった。覚醒剤も北朝鮮では強壮剤のような薬感覚で広く使われていて、「悪」という意識はないというのだ。
「船は、外貨稼ぎのため漁業をしている軍系列企業や下請け企業などの所有船をくすねてきたのかもしれないが、燃料やエンジンは、おそらく長期間、周到に準備し手に入れたのでしょう。通常、中朝国境からは家族全員が同時に脱出するのは無理なので、漁民の彼らは、家族全員で出られる海上ルートのほうをむしろ有利と判断したのではないか。しかも直接韓国に向かうと、南下途中で北朝鮮の警備艇に捕まる恐れがあるので、日本経由になったのでしょう」(石丸氏)
一方、すでに日本に定住している別の脱北者は、4人は何らかの口実をつけて、うまく出航したのではないか、と推測する。
「北朝鮮は、ほとんどの海岸線が柵や有刺鉄線などで封鎖され、特別な許可がないと海に出られず、海上警備も厳しい。でも、地元の党幹部などと通じていると、漁民なら『近くの島に遊びに行く』などの口実で出航することもできるのです」
今回の事件は、情報統制の厳しい北朝鮮国内にもいずれ伝わるという見方が強いが、4人に続いて次々と脱北者が海上から日本へ押し寄せる可能性はあるのか。
李英和・関西大学教授は、
「今回は、日本の経済制裁で漁船の操業が減ったのに伴い海上の監視も緩んでいた虚を突いたのだろう。しかし、これで警備が再び厳しくなるだろうから、当面は海からの脱北は難しくなった」
とみる。他の専門家の多くも、そもそも失敗の危険が高い小型船での脱北が相次ぐことはないだろうとの見方だ。
ただ、問題は、近い将来、北朝鮮内部にこれまでにない混乱が生じた場合だ。最近、一部報道では、金正日総書記の健康状態の悪化も取り沙汰されているが、総書記の身辺に異変が起きれば、一気に体制崩壊へとつながる可能性がある。
「体制が崩壊するか混乱して国境線の出入りが自由になり、一方で治安の悪化など内部で危険な状況が続いたら、元在日帰国者や日本人妻、その家族たちは日本に来ようとするでしょう。今回の事件で、そうした人々に、船で直接日本に脱出できる可能性があることを知らせた意味は大きいと思います」(前出の脱北者)
そもそも日本まで自力でたどり着かなくても、いざとなれば海上からの脱出は可能だ。
ベトナム戦争などの影響で生じたインドシナ難民(ベトナム、ラオス、カンボジアからの難民の総称)の場合、発生初期の70年代後半から80年代初めごろ、ベトナム沖をゴムボートや小舟で漂流していたボートピープルを通りがかった欧米の船などが救助し、寄港した日本で上陸させたケースがあった。
北朝鮮の場合も、日本海の公海上まで小舟でこぎ出せば、日本海を頻繁に行き来する各国の船舶に救助されて日本にたどり着くことも不可能ではない。
また、北朝鮮有事の際、「富裕層や特権層のなかには中型以上の船を仕立てて日本へ逃れようとする人が出るかもしれない」(李教授)。もちろん、難民の多くは隣接する中国や韓国に向かうとみられるが、中国経由で日本へ向かう元帰国者らは増えるだろう。日本政府の94年時点のシミュレーションでは、有事の際は元帰国者ら計10万人近くが日本に来ることも予想している。
そうした「Xデー」に日本はどう対処するのか。
日本は81年に国連難民条約に加入しており、本国に帰されれば政治的迫害を受ける恐れがある「条約難民」は保護しなければならない。インドシナ難民は条約難民ではなかったが、それに準じる難民として、すでに1万人余りを受け入れている。
北朝鮮の場合は、昨年6月施行の北朝鮮人権法に脱北者を支援する「努力規定」が設けられているうえ、すでに10年ほど前から、脱北した元在日帰国者や日本人妻ら計130人を受け入れてきた経緯があり、その数は現在も増え続けている。Xデーの際、「たくさん来たから大変なので、受け入れません」というわけにはいかないのだ。
長勢法相は、5日の閣議後の記者会見で、
「今後こういう(脱北の)事態が多発すると心配する向きもある。新しい事態に備えることも念頭に置いて検討する必要がある」
と述べ、一時的な保護施設や入国管理の態勢などについて検討する考えを示した。
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