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□【特別手記】千葉市議会議員選挙戦の裏側「稲毛駅前選挙劇場」始末記 [リベラルタイム]
http://seiji.yahoo.co.jp/column/article/detail/20070608-01-1201.html
2007年6月8日
【特別手記】千葉市議会議員選挙戦の裏側「稲毛駅前選挙劇場」始末記
今春、列島で展開された統一地方選挙。
「魔物が棲んでいる」「人生の縮図」といわれる選挙戦の裏側には、
どのような「ドラマ」があるのか――。
この四月投票の千葉市議選に立候補、
敢えなく落選の涙を呑んだジャーナリストの徳丸荘也氏に
自らの選挙戦体験記を寄稿してもらった
団塊の世代が定年になり、地域に活躍の場を求めて、統一地方選挙に立候補のラッシュだった――。
私もその一人で、千葉市議会議員選挙に稲毛区から無所属で立候補。
しかし、投票の結果、私は一千百五十八票で稲毛区最下位落選。
なぜ落選なのか。私には信じられなかった。立候補の目算では、悠々当選のはずだったが……。
前評判
千葉市の中でも稲毛区は、千葉大、千葉経済大、敬愛大のキャンパスを始め、教育施設が集まる文教地区で、生活環境に恵まれ、東京方面に通勤する「千葉都民」の家族で人口が増加。
私も二十年前に東京から移住した。
そして、七年前、有力な地場企業の支援で「まちづくり市民新聞」を発刊したのがきっかけで地域活動に取り組むようになった。
NPO法人を三つ立ち上げ、中高年のカルチャー活動を展開。その実績を足場に市会議員に立候補することになった。
有力な女性グループの支援も受けて、新人ながら相当に有望な候補者と前評判も高かった。
しかし――。なのに、なぜ?
その敗因は駅前選挙戦術の失敗にあったと反省せざるをえない。
選挙の主戦場は駅前だ。
JR総武線稲毛駅の乗降客数は一日十万人。有権者の大多数が稲毛駅に集まってくる。
ここで名前と顔を売った候補者が勝つ。
稲毛駅前選挙劇場――。私は、無党派市民代表として脱政党を強調し、稲毛駅前を選挙戦の舞台にするシナリオを描いていた。
駅前選挙劇場でいかに主役を演じ、注目を浴びるか。それが無所属無党派が政党に勝つ方法だ。
無所属新人ならずとも、候補者ならば誰もが同じように考えていただろう。だから、駅前で候補者が火花を散らし、事件も起こす。
長崎市長射殺事件ほどに衝撃的ではないが、稲毛駅前でも市議選でちょっとしたニュースの事件が起きていた。
市議同士がケンカ、傷害で市議逮捕という馬鹿馬鹿しい事件だった。新聞の千葉県版では三面記事になり、テレビの朝ワイドでも、みのもんたの嘲笑を買い、全国に報道された。
この稲毛駅前選挙事件のとばっちりで戦術が狂ってしまったと、私はいい訳したいところだ。
援軍現る
昨年十一月初め、私は立候補を決意すると、まず何はともあれ、稲毛駅頭に立った。いわゆる駅立ちである。
その時点ですでに千葉市稲毛区の選挙戦は過熱。稲毛駅前はのぼり旗が乱立。立候補予定者が出揃い、出勤する市民の群れに向かって朝の挨拶の声を張り上げていた。
私も二本、のぼり旗を立てた。すると、無所属で現職のA市会議員がニコニコと私に近寄ってきた。
「新人が名前を売るにはたった二本じゃ、だめだ。ズラッと十本ぐらい並べなきゃ」
A議員は毎朝五時に稲毛駅に現れ、ホウキ、チリトリを手に駅前掃除で五千票を集め、当選したという評判だった。
私はのぼり旗を追加注文し、八本、立てた。八本も柱にくくり付けるには三十分かかる。
朝六時の駅立ちには五時起きだ。冬の夜明け、スーツだけの駅立ちは寒さが骨まで凍みた。
たちまち私はカゼでダウン。復帰後はコートを着て立つことにした。
するとまたA議員から忠告された。
「議員は聖職だから、黒っぽいスーツで清潔にしなきゃ。市民はあなたの服装も見てるんだ」
新人の私にA議員は何かと親切にアドバイス、そして、激励、握手までしてくれた。
「ユニークな経歴といい、市民活動の実績といい、あなたこそ市会議員にふさわしい人物だ。あなたにはぜひ当選してもらいたい。当選したら、私と会派を組んで一緒にやろう」
彼は私に「演説を交代でやろう」と拡声器も貸してくれた。
私はマイクを握り、演説した。そして交代の時間になった。
が、彼の姿がない。
事件
事件が駅の裏側で起きていた。放置自転車取締りのおじさんがA議員の逮捕を知らせてきた。
のぼり旗の立て方で、A議員とB市会議員がケンカになり、A議員の旗竿がB議員の顔に当たり、駆けつけた警察官にA議員が現行犯逮捕されたという。
その真相は? となれば、A議員はハメられたのだと、陰でささやかれた。
「何が何でもアイツを落としてやる」とうそぶく、もう一人のC市会議員が存在した。C議員とA議員は地盤が同じで天敵関係だった。
C議員は本業が土建業で、千葉市の公共事業をめぐり、とかくの噂が立ち、A議員によって疑惑が追及されていた。
A議員逮捕事件の黒幕はC議員だと、陰の声の尾ひれは広がっていった。
私がその真相に触れると、A議員の地盤の女性たちにこっぴどく叱られた。
「なんでAの肩を持つのよ。あんな非常識な男の味方をするなら、あなたに投票しないわよ」
A議員は地元町内会からは総スカンを食っていた。
町内会長たちはA議員にもC議員にも愛想をつかし、新人の私を支持すると約束してくれていた。
A議員とC議員の対立は私には漁夫の利だった。
そして、裏切り…
しかし、稲毛駅前選挙事件の以後、状況は一変した。
選挙管理委員会の通達により、駅前のぼり旗は禁止された。
私たち無所属新人は名前を売る手段を失った。
そして、告示を迎えた。
私は、ベニヤ板に貼った選挙ポスターを街路樹に立てかけ、顔を売る戦術に出た。そして、ビール箱の上に立ち、演説した。歌を歌い、旗を振り、目立つパフォーマンスを演じた。朝から夕方まで、稲毛駅前選挙劇場を、私は一人舞台で演じた。
その間、なぜか他の候補者たちは駅前を避けた。
市民の私を見る目が白いと、気がついた時は遅かった。
市民感情からすれば、稲毛駅前は市会議員ケンカ逮捕で全国的に有名になった破廉恥な事件現場である。
そこで一人、はしゃいでいる新人候補に、“第二のA議員”を想像したのだろう。
「市民のみなさん。こんな人を市会議員にしてはいけません」
ビール箱に立つ私の耳に大音声が轟いた。
振り返ると、選挙カーの上でA議員がマイクで叫んでいた。
私は唖然とするばかりだった。
逮捕で落選確実の烙印を押されたも同然の彼は、それでも汚名挽回とばかり、こともあろうに、私を標的にして蹴落とす戦術に出たのだ。
そして、投票結果、私はA議員と無理心中してしまった。
作家・ジャーナリスト/徳丸 壮也
リベラルタイム7月号「LT−Report」
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