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問う2007年参院選(上) 保守の潮流 「年金」で失速【東京新聞】
2007年6月23日 09時01分
「政界は一寸先は闇」
安倍晋三首相の祖父、岸信介元首相の政権下で自民党幹事長を務めた川島正次郎の名言だ。年金問題の「闇」に突き落とされ、参院選前の国会延長を余儀なくされた安倍首相は、祖父の側近が看破した政治の怖さをあらためて痛感しているに違いない。
教育基本法の改正、防衛庁の「省」昇格、国民投票法(憲法改正手続き法)の実現、集団的自衛権行使に関する解釈改憲の研究…。「戦後レジームからの脱却」を唱える首相は昨年9月の就任以来、保守色の濃い「安倍路線」を着実に推し進めてきた。首相のブレーンの岡崎久彦元駐タイ大使は「自民党が何十年もできなかったことを、安倍政権はどんどんやっている。予想以上の実績だ」と絶賛する。
そして首相は参院選で、「安倍路線」の最終目標ともいえる憲法改正を正面から問う構えをみせていた。「自主憲法制定」は、敬愛する祖父の見果てぬ夢でもある。それが5月下旬、「政治とカネ」の問題で疑惑を追及されていた松岡利勝前農相が自殺し、社会保険庁の年金記録不備問題が火を噴いた結果、一時の低落傾向から脱していた内閣支持率は急落。「安倍路線」は一気に迷走し始めた。
自民党の中川昭一政調会長は「憲法も年金も大事な話だ。参院選では同じように訴えていく」と強調する。しかし、政府・自民党が、年金記録不備問題に怒る世論に押され、参院選最大の争点を憲法から年金へと方針転換したのは、誰の目にも明らかだ。
首相は「自分のテーマは安全保障と社会保障」と述べているように、年金問題についても首相なりの見識はあった。自らの政治信条をつづった著書「美しい国へ」の中では、岸内閣で国民年金制度がスタートしたことを誇っている。なぜ“得意分野”でつまずいてしまったのか。
政治学者の原彬久・東京国際大学教授は「安倍政権らしさを出すには、憲法や教育を前面に打ち出すのが自然といえば自然だった。社会保障では、社保庁問題などの後始末に追われ、改革の方向性を提示できないまま、参院選を迎えなければならなくなっている」とみる。
「安倍路線」の失速は、その反動性に警鐘を鳴らしてきた反安倍勢力の間に、奇妙な安堵(あんど)感をもたらした。年金問題で勢いづく野党はもちろん、自民党内からも「党内も(安倍路線に)慎重になっていくのではないか」(加藤紘一元幹事長)との声が漏れる。
中国や韓国の反発を承知で靖国神社参拝を繰り返し、排外的なナショナリズムを煽(あお)った小泉純一郎前首相に喝采(かっさい)を送った世論も、「安倍路線」にはどこか冷ややかだ。
近年の若年層の右傾化を「ぷちナショナリズム症候群」と名付けた精神科医の香山リカ氏は「みんなが小泉マジックから覚めた中で、憲法さえ変えれば『美しい国』になると言われても、まやかしにしか思えないのではないか」と分析する。
ただ与党の自民、公明両党が参院選で、改選、非改選を含めて過半数を維持するか、あるいは負けを最小限にとどめて、なんとか安倍政権が継続した場合は「安倍路線」が息を吹き返すのは必至だ。年金騒ぎの中でこそ、有権者は「安倍路線」の是非を見極める必要がある。
(東京新聞・政治部 参院選取材班)
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2007062390090000.html
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