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2007年06月03日
美談でごまかそうとするイラク戦争の失敗
少しも勉強にならないこのような記事を私のブログで取り上げるのは本意ではないが、あまりにもジャーナリズムの使命に反するおためごかしの記事なので敢えて取り上げる事とした。
6月3日の読売新聞に、「苦しくても未来を信じる」という見出しの「方位計」という随想記事を見つけた。イラクの混迷は残念だが、いつか平和は来る、それを信じよう、という記事である。飯塚恵子という記者の署名記事だ。
まず冒頭で、昨年6月英軍に同行しイラク南部で見つけた「外国人向けお土産セット」について次のように触れるところから始まる。「・・・その青い箱を開けると、イラクの地を再び踏みたい、という思いが湧き上がる・・・」。そしてその土産箱の中身として、イラクの硬貨、建国の王ファイサル像の写真、美しいバクダッド中心部の彫刻の絵柄などと並んで、「この男がこの国を米国の占領下におとしめた」という説明がついたサダム・フセイン元大統領の写真が入っている事を紹介する。すべてをサダム・フセインの責任にしてしまう明らかな米・英国占領者側のプロパガンダ土産だ。英国軍に同行してエンベッデド(組み込み)取材を喜んで行っているぐらいだから、飯塚記者が最初から宣伝記事を書こうとしていることは明らかだが、それにしても思い出の土産箱を見ながら「平和が戻ったら文化豊かな土地をいつか思う存分歩いてみたい」などという感傷的な文章を冒頭に持ってきて書き始めるこの記事の意図は明らかである。読者を旅情に引きずりこんで流血のイラクの現状を忘れさせようとするのだ。
続いて駐日イラク大使のガーニム・アルジュマイリ博士(56)の言葉を詳しく紹介する。小泉総理に何度もイラク訪問を招待したが、「軍服の人に守られると、イメージが薄れてしまう・・・『特別警備』のイラクでなく、各地を回り、普通の人に触れたがっている」と、いつも総理秘書官から返事が来た。しかし小泉首相自身は「心から現地を訪ねたかったと思う。大使は「いつかは訪れたいという小泉首相の熱い思いを感じ取った」などと、小泉首相の心の中を見てきたような作文を飯塚記者は行う。とんでもない美化された小泉像だ。あのイラク戦争を支持した有志連合の国の大統領、首相はすべてイラクを訪れている。ブッシュ大統領やブレア首相は何度も訪れている。唯一イラクを訪れていないのは小泉首相だけだ。その気になればいつでも、何度でも、行けたはずだ。いや戦地に自衛隊派遣を決定した自らの責任を感じるのなら危険を冒しても訪れるべきであったのだ。その気がまったくなかっただけだ。危険を恐れただけだ。もはやイラクがどうなろうと関心がなかっただけだ。総理をやめて8ヶ月もたった。その間にもいつでも行く機会はあったはずだ。それに言及することなくここまで美化した作文をよく書けるものだ。
最後は取ってつけたような次の文章で締めくくっている。
「・・・英誌エコノミストが5月30日に発表した世界121カ国の「平和度指数」で、イラクは最下位だった。それでも大使は『小泉さんや安倍首相を祖国にお連れできる日は必ず来る。両国の絆は、今後一層強まる』と力をこめる。青い箱にはこうも書かれていた。『我々は、苦しくても未来を信じる』・・・」
これがジャーナリストの書く文章であろうか。「イラクに平和は当分来ない、。それどころか耐え難い混乱が行方に待っている」というのが専門家の一致した意見である。ブッシュ大統領は「この夏は耐えられない流血となる」と公言し、更なる武力行使を宣言している。美しいバクダッドを破壊し続けているのは米国なのだ。無辜のイラク人を巻き添えにしてためらわない国が米国なのだ。その米国を今でも支持し続けている国が日本なのだ。この事にひと言も触れない飯塚恵子という読売新聞記者は、一体国民に何を訴えようとしてこの記事を書いたのだろうか。飯塚記者には、嫌われ、弾圧されても権力者の悪を糾弾するというジャーナリストとして矜持はどこに行ってしまったのだろうか。
http://www.amakiblog.com/archives/2007/06/03/#000409
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