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http://www.nissoken.jp/rijicyou/hatugen/kiji20070302.html
少し古い話ですが。『日経ビジネス』2007年2月5日号
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プロ野球、西武ライオンズの松坂大輔投手が米メジャーリーグ、ボストン・レッドソックスに移籍するというニュースは、多くの日本人を驚かせた。合意した条件の1つである報酬が6年契約で60億円を超えたと見られるからだ。
他方、日本には年収200万以下の非正規雇用者が、2006年の段階で1284万人も存在する。実は、松坂の6年60億円という話と、こうした「ワーキングプア」の問題は底流においてつながっている。我々はそのことに気づかねばならない。
上限、下限に向かう報酬
松坂の高額契約をどう考えるか。
プロ野球というビジネスモデルが日本の国境で囲い込まれていた頃、選手の年俸は国内の報酬水準で抑制されていた。しかし、この国境の壁は次第に低くなり、プロ野球はグローバルな交流を深めていった。そして、「余人をもって代え難い」実力を評価される一流選手は、メジャーリーグという市場で上限に引き寄せられることとなった。野茂英雄からイチロー、松井秀喜、松坂に至るメジャーリーグ移籍は、こうした流れが加速していった結果である。
一方で、年収200万円以下の非正規雇用者の増加をどう考えるか。
雇用環境がグローバル化する中で、「時給1000円前後の、誰がやっても同じ仕事」に対する報酬は、限りなく下限に引き寄せられ、「その労働を発展途上国で行った場合の対価は時給100円ですよ」という水準にまで落とされていく。つまり、上限、下限ともに雇用体系のグローバル化が進行していることの象徴が、松坂とワーキングプアなのである。
2006年時点での国内雇用者数は5115万人、そのうち非正規雇用者(パート、アルバイト、派遣、契約社員など)は1707万人で、全体の33.4%を占める。この非正規雇用者の比率は、1995年には20.9%、85年には16.4%であり、この20年間で倍増したことになる。例えば、従業員100人の事業所の場合、3分の1は正規の雇用者でない人が職場を支えている構造になっているわけだ。
1707万人の非正規雇用者のうち、年収200万円以下の人は先述の1284万人ということで、非正規雇用者の実に75%に達する。世帯の年収が200万円以下であれば、失業保険で生活する失業者(現在約281万人)、生活保護世帯(現在約140万世帯)に準ずる生活レベルを余儀なくされているというイメージである。IT(情報技術)革命による雇用の平準化という要因もあって、この10年で企業は「誰がやっても同じ」という仕事を拡大させ、コストの圧縮を進めたのである。
問われる連合の存在意義
日本の雇用者の中核たる「勤労者家計」を構成する主体は労働組合の組合員である。現在、労働組合運動を主導する「連合」が組織化する組合員は約700万人とされ、その家計の平均年収は700万円を超す。
これは連合の構成員が「大企業の正規雇用者の組合」「公務員の組合」という性格を強めているからである。つまり、働く者の中でも「恵まれた人たちの労働運動体」となりつつあるわけだ。
年収200万円以下の1284万人の非正規雇用者と、700万人の連合という数字は、現在の日本の雇用環境を象徴するものである。ともすると、組合構成員の意識は、従来の「革新の騎手」から「自分の権益を守る側」に反転しかねず、また日本を覆う閉塞感にもこの要因が投影しているとも言える。
連合の指導部が、非正規雇用者の最低賃金の引き上げなどを主張し始めたのも、グローバル化する経済における、分配の公正化という問題の全体に視界を広げないと、現在起きている問題の本質に迫れないことに気づいているからであろう。
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