★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK35 > 518.html ★阿修羅♪ |
Tweet |
□松岡農水大臣自殺の衝撃 [国会TV]
http://seiji.yahoo.co.jp/column/article/detail/20070530-00-0601.html
2007年5月30日
松岡農水大臣自殺の衝撃
松岡農水大臣は何故死を選ばなければならなかったのか、その死が政治の何をどう変えるのか、まだ分からない部分も多々あるが、私の目には松岡大臣の自殺の一週間ほど前から政治の舞台装置がなにやら転換しているように見える事が続いていた。
話をさらに一週間前の5月14日に引き戻してみる。
その日、憲法改正のための手続き法である国民投票法が参議院本会議で成立した。憲法改正を政権の最重要課題としている安倍総理にとって、施行60年後に実現した手続き法の成立は歴史に残る実績となる。安倍総理は憲法改正の必要条件を手に入れたことで、今後は憲法改正に邁進することが絶対となった。
翌15日、日米同盟の上から欠かせないイラク特措法が衆議院を通過、さらに参議院選挙を意識した公務員制度改革法案、いわゆる「人材バンク法案」が審議入りした。
16日には今国会初となる党首討論が行われたが、小沢民主党代表の追及は全く問題にならず、安倍総理は得点を稼いだのは自分だと確信したに違いない。
そして17日には今国会の最重要法案と位置づける教育改革法案が衆議院の委員会で可決、さらに翌18日には本会議で可決され、今国会成立が確実となった。衆議院の三分の二以上の勢力を擁する安倍総理にとって国会は自家薬籠中のものであった。
18日夜に北海道入りした安倍総理は、来年のサミットの会場となる「ザ・ウィンザー・ホテル洞爺湖」に宿泊、翌朝には湖畔の美しい風景の中で視察する様子を取材させ、地球環境に優しい総理の姿をアピールした。日曜日には大学の同窓会に出席してプライベートな時間を楽しむ余裕を見せた。昨年末以来下がり続けた支持率も3月以降は下げ止まり、最近では再び上昇に転じていた。安倍総理は長期政権を心に描き、全ては順調に推移していた。
5月21日、いよいよ問題の週が始まる。
この日教育改革法案の参議院審議が始まった。本会議場の演壇に立った安倍総理は「改革を推進して教育新時代を切り開く」と力強く演説した。最近の国会での発言には自信と余裕がみなぎっている。
翌22日、総理も出席して行われた米軍再編法案を審議する参議院外交防衛委員会でおやっと思う場面があった。公明党の高野博師参議院議員が、安倍総理が指示した集団的自衛権の解釈見直しの四類型について疑問を呈したのである。安倍総理は公海上で自衛艦の近くにいるアメリカの艦艇が攻撃された場合、自衛艦が傍観していることは同盟の信頼関係の根幹に関わるという考えだが、高野議員は「日本の自衛艦が近くにいようがいまいが、今アメリカの艦艇を攻撃する国などあるのか」、「集団的自衛権を認めないと日米同盟は維持できないのか」と疑問を呈した。野党だけでなく与党の中から安倍総理が重視する集団的自衛権の考えに異論が出てきた。これが私の感じた異変の始まりである。
この日の夜、民主党の鳩山由紀夫幹事長が国会TVの「政治ホットライン」に出演した。鳩山幹事長はその人柄からか発言は誠に正直である。参議院選挙の準備状況を聞くと、「準備万端と言いたいところだが、出来つつあるというところだ」と本当のことを言う。その鳩山幹事長は安倍内閣の支持率上昇を「総理は初めは慎重だったが、数にものを言わせて次々法案を通すなど力強さを見せつけるようになった。それを国民が好感している。それは国民のためにならない危険なことなのだが、徹底抗戦をして審議拒否をすれば国民の支持は得られない。そのジレンマの中にいる」と苦しい表現をした。硬い表情を崩さない幹事長に視聴者から電話で「鳩山さんの今夜の顔はレ・ミゼラブルですよ」と言われたほどだ。「これからは消えた年金問題を全力で追及する」と言いながら、安倍政権を攻めあぐねている様子がうかがわれた。
ところが23日に衆議院予算委員会で「政治とカネ」の集中審議が行われたところから、風向きが変わりはじめる。この集中審議は2月に与野党間で合意されながら与党がここまで開催を遅らせてきたものだ。当時は事務所費問題が中心で辞任した佐田前行革大臣や、伊吹文科大臣、それに松岡農水大臣などがやり玉に挙がっていた。しかしここまで遅れてきたお陰で緑資源機構の官製談合事件がテーマに加わることになる。追及の矛先は専ら松岡農水大臣となった。松岡大臣は相変わらずの答弁を繰り返して詳細説明を拒否、安倍総理も擁護する姿勢を示した。辞任させることが無理だと見た野党は追及の力点を「消えた年金問題」に移す。この問題で追及の矢面に立ったのは「女性は産む機械」発言を行った柳沢厚生労働大臣である。あのときはひたすら低姿勢で頭を下げ続けた柳沢大臣だったが、「消えた年金問題」では野党の追及に負けてはならじと声を張り上げ反論にでた。安倍政権の支持率が下がっていた頃の二人の問題大臣に再びスポットライトが当てられることになった。
24日、緑資源機構の官製談合事件で東京地検特捜部が機構の理事ら6人を逮捕。事件は拡大する様相を見せ始めた。
25日、重要法案を全て強行採決で押し通してきた安倍政権は「消えた年金問題」をさらに審議しようとする野党を押し切って社会保険庁改革法案でも強行採決に踏み切ることにした。「消えた年金問題」を参議院選挙の争点にさせないためにも早めに法案を通し、年金受給者を救済する法案は別途秋の臨時国会に提出して乗り切ろうとしたのだが、これが裏目に出た。
週末に行われた世論調査で安倍政権の支持率は急落した。毎日新聞の調査では支持が前月より11ポイント下がって政権発足以来最低の32%、日本経済新聞の調査では支持が前月より12ポイント下がって41%になった。
27日、これを知った安倍総理は救済法案を秋の臨時国会ではなく今国会に提出するよう自民党の中川幹事長に指示した。一方、この日テレビ朝日の番組では公明党の太田昭宏代表が、参議院選挙での憲法改正の争点化について、「公明党の主張と違う事を言えば支援については躊躇せざるを得ない」と述べて、安倍総理の方針を牽制する発言を行った。順風だった安倍政権に異なる角度から風が吹き始めた。そう思っていたところに衝撃の自殺のニュースが飛び込んできた。
就任直後は慎重すぎる対応で支持率を下げ、その後強気に転じたことで支持率を上向かせたが、それがまたつまづきを作り出した。「政治とカネ」の審議を先送りし、詳細な説明を拒否し続けたことが積もり積もって異常な事態を招いた。そんな事を考えてみたくなる。
自殺の影響で29日に予定されていた衆議院本会議での社会保険庁改革法案の採決は見送りとなった。代わりに救済の為の年金特例法案を衆議院厚生労働委員会で1日で成立させ、それと共に31日の本会議で採決を行うという。しかし社会保険庁を解体する法案と年金受給者を救済する法案とを同時に採決して、国民は混乱しないだろうか。5000万件と言われる年金記録を調査することとその記録を持っている組織を解体する事が同時に出来る事なのだろうか。
「上手の手から水が漏れる」というが、つまづきは絶頂期にやってくる。安倍政権は政権発足以来の危機を迎えた。この危機にどう対応するか、そこで初めて政治家としての真価が問われることになる。これからの一つ一つの言動が注目される。
▲このページのTOPへ HOME > 政治・選挙・NHK35掲示板
フォローアップ: