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社説
2007年05月18日(金曜日)付
集団的自衛権について研究する首相の私的懇談会がきょう、初会合を開く。秋には結論を得たいという。憲法の根幹にかかわる解釈の検討が始まる。
集団的自衛権とは、自国と密接な関係にある外国が攻撃された時、自国が直接攻撃されていなくても自国への攻撃とみなし、実力で阻止する権利のことだ。
国連憲章に規定があり、どの国も持つ。しかし、日本は憲法9条のもとで必要最小限の自衛権しか行使しない。集団的自衛権はその範囲を超えるから、行使は許されない。これが政府解釈だ。
軍事力について抑制的に考えてきた戦後平和主義の中核の考え方である。
自衛隊を普通の軍隊にしたい首相にすれば、この解釈は目の上のたんこぶなのだろう。行使容認に前向きな人をずらりと並べた懇談会のメンバーを見れば、首相の意図は明白だ。
どんな場合が集団的自衛権の行使にあたるのか、それは容認されるのかという検討の対象として、四つの類型があがっている。公海上で自衛艦の近くにいる米艦船が攻撃を受けた場合の応戦など、どれも一見、なんとかしなければいけないと思わせる具体例だ。
だが、よく吟味してみると、個別的自衛権で考えるべきものや、そもそも集団的自衛権に該当しそうにないものが含まれている。これで議論を進めようというのは乱暴である。
米艦船への助太刀だが、実際に起こりそうなのは日本近海で共同行動をとっている場合だ。それは日本有事か日本有事に極めて近い状況だろう。個別的自衛権の延長で考えるべきことである。
国連平和維持活動(PKO)などで隣り合わせた外国の部隊を守るのも、安全確保のための武器使用という文脈でとらえられる。それに集団的自衛権の対象になるのは同盟国の米国だけだろうが、米国以外の国の部隊とも行動を共にするのがPKOである。
多国籍軍などへの後方支援としての武器輸送は、武力行使と一体となる場合が多く、そもそも憲法上許されない。
米国に向けて発射された弾道ミサイルを自衛隊のミサイル防衛システムで迎撃する類型もある。だが、現在の自衛隊のシステムでは、米国向けのミサイルを撃ち落とすことは能力的に不可能だ。
技術の進展によっては可能になるかもしれないが、ミサイル防衛の将来自体が不明確なうちに、そこまで突っ込んで議論する必要があるのか疑問だ。
私たちは、集団的自衛権の行使は憲法上認められないし、認める必要もないと考える。自衛隊は日本防衛以外の目的で武力行使をすることはない。その原則から逸脱してはならない。
首相の懇談会は、むしろ、冷戦後の新しい世界の状況や武器技術の変化を踏まえ、国連の下での集団的安全保障や個別的自衛権の枠で何ができるのか、を詰めるべきだ。
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