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泥沼化するイラク情勢に足をとられる米ブッシュ政権に、日本はどこまでおつきあいするつもりなのか――
きのう衆院で可決されたイラク復興支援特別措置法の2年延長案について、こんな感想を抱く人は多いのではないか。
イラクで貨物輸送にあたっている航空自衛隊の任務は今年7月で期限切れとなるが、これをさらに2年間のばそうという法案である。
なぜ、延長するのか。政府は国連やイラク政府などの要請によると説明している。だが、最大の理由はブッシュ政権のイラク政策を支援する姿勢を崩したくないということだろう。
国会審議で、安倍首相らはイラク攻撃に踏み切った米国の判断を繰り返し弁護した。誤った戦争と認めてしまえば、自衛隊派遣の根拠が崩れると心配してのことに違いない。
だが、開戦判断の根拠となった情報が誤りや誇張の産物だったことは、米国や英国自身が認めている。なによりも、開戦の理由とされた大量破壊兵器がイラクに存在しなかったことは明らかだ。
にもかかわらず「正しい判断だった」とばかりに言い募るのは、知的退廃に近いのではないか。
日米同盟への配慮は分からないではない。中東に石油資源を依存する日本にとって、地域の安定は重要だし、イラクの混乱を放置できないのもその通りだ。
それでも、出発点での明白な誤りを認めずに既成事実の追認を続けるのは、責任ある政治のとるべき態度ではない。
英国ではブレア首相が世論の批判から退陣に追い込まれた。ブッシュ大統領も、米軍の期限付き撤退を条件とする予算案や決議を議会から突きつけられた。支持率は最低水準に低迷している。
そんな中で、日本では自衛隊の派遣延長がすんなりと国会を通っていく。これといった総括や反省もないままに、大義に欠ける、誤った米国の政策に参画し続ける。なんとも異様と言うよりない。
首相は、憲法9条の改正で自衛隊への制約を取り払い、あるいは現行憲法の下でも集団的自衛権の行使に道を開きたいと言っている。だが、軍事力の行使には政治の厳格な責任が伴う。
イラクの場合のように、結果に対して真摯(しんし)に向き合おうとしない政治を、国民は信用するわけにはいかないだろう。
さらに懸念すべきことがある。航空自衛隊がイラクで何を運んでいるのか、さっぱり分からないことだ。政府は飛行回数と運んだ貨物の重量以外、何も明らかにしない。どのぐらい国連の役に立っているのか。大半が米兵の輸送ではないのか。そんな疑問も指摘されている。
安全に配慮して隠すのだろうが、使われているのは日本の要員であり、資材、税金である。国会にすら詳細を報告しないのでは、文民統制が空文化していないか。政府はすみやかに自衛隊を撤収し、イラク支援を根本から練り直すべきだ。
クライスラー―ファンドで再生できるか
「世紀の合併」といわれた独ダイムラー・ベンツと米クライスラーとの「国際結婚」は、相乗効果が発揮できないまま8年半で破局を迎えた。
部品メーカーなどほかの候補を押しのけてクライスラー部門を買収したのは、米投資会社のサーベラス・キャピタル・マネジメントだった。日本では、日本債券信用銀行(現あおぞら銀行)に投資して再建を主導している。
世界的なカネ余りのなかで欧米を中心とした投資ファンドは、年金などの機関投資家や一般企業、さらには裕福な個人の資金を集め、企業の再編や再生で有力なプレーヤーになってきた。
それが、米国の中核産業ともいえる自動車メーカーを買収する力を見せつけた。巨大な産業が経済を主導する産業資本主義から、投資家の寄せ集め資金が経済を動かすファンド資本主義への変質。それを象徴する買収劇となった。
クライスラーは70年代後半、売り上げ不振から経営危機になり、米政府の融資保証という自由競争に反する手法で再建された。しかし90年代に入ると再び悪化し、98年にダイムラーと合併した。
それでも品質や技術で日本車に対抗できず、昨年は米国での販売台数で初めてトヨタに抜かれ、ゼネラル・モーターズ(GM)、フォード、トヨタに次ぐ4位に転落した。苦難の歴史が続く。
今度こそ再生できるか。カギは、省エネや環境問題への取り組みと、経営の重荷になってきた退職者への年金と医療費負担という「負の遺産」の軽減だ。
このところのガソリン価格の高騰や地球温暖化問題の高まりは、ますます省エネや二酸化炭素の削減を自動車メーカーに迫っている。この分野で生き残る技術を身につけなければ、日本車などとの国際競争に勝てない。
一方、年金・医療費の軽減は、全米自動車労組(UAW)にとって、軽減に応じれば同じ問題を抱えるGMやフォードへ波及するだけに、難航が予想される。しかしここに切り込めなければ、人員削減などのリストラ策を重ねても、収益力の回復は難しいだろう。
巨大合併の失敗が示す最大の教訓は、規模の拡大が勝利の方程式ではないということだろう。拡大路線に走ったダイムラーは、クライスラーに費やした数兆円の投資をふいにしたうえ、ブランド力でもかつての輝きを失っている。
これで身軽になったとはいえ、ユーロ高・円安の影響もあって、ダイムラー・ベンツは高級車の争いでトヨタ・レクサス相手に苦戦を強いられそうだ。
日本でも各産業分野で大合併が相次いでいる。心しておきたい教訓だ。
サーベラスは、環境や品質に配慮した車づくりを目指して消費者の支持を回復する以外に道はない。安易なリストラや収益部門の切り売りで短期に利益を得ようとすれば、ファンド資本主義の限界を見せるだけに終わるであろう。
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