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原田武夫 「懲りない面々―――対北朝鮮政策を巡る米国の真意を考える」(半周遅れの対米・対ロ協力者の悲しき性)
http://www.asyura2.com/07/senkyo34/msg/741.html
投稿者 新世紀人 日時 2007 年 5 月 15 日 17:58:36: uj2zhYZWUUp16
 

http://blog.goo.ne.jp/shiome/
BREAKING NEWS―――元外交官・原田武夫の先読みコラム(その10)

BREAKING NEWSコラム / 2007-05-13 12:10:37


懲りない面々―――対北朝鮮政策を巡る米国の真意を考える

半周遅れの対米・対ロ協力者の悲しき性

先日、新装刊された雑誌「クーリエ・ジャポン」(講談社)が拙宅に届けられた。これまで隔週刊だったものが、月刊となっての再登場である。今回の新装刊にあたって、これまでの編集方針を変え、日本人の執筆人によるオリジナルのコラムを掲載すると聞いていたので、興味をもって早速ページを繰ってみた。
すると、第74ページに「新連載・海外ニュースの「楽しみ方」」というコーナーがあった。執筆者は、「起訴休職中外務事務官」である佐藤優氏。今回のお題は「北朝鮮「公式サイト」から”偽ドル札”情報戦を読み解く」である。

あらかじめ重ねて申し上げておくが、私は何も個人的に佐藤優氏をなんらかの理由に基づき、非難・批判するものではない。彼には彼なりの「個人としての生活」があり、そのためにも書き続けることを生業として選んだことには、ある意味、同情すら抱くものである。
しかし、だからといって、明らかに不十分な分析に基づき、意図して、あるいは無意識に世論をミスリードするのは、およそ「情報のプロ」として評価されたいのであれば絶対に避けなければならないことだと考えている。ましてや、数々の受賞歴を誇る「言論人」であり、かつ、外交官(であった)という自負心があるのであれば、私たちの国=日本のために「やって良いことと悪いこと」の区別は、厳格にしなくてはならないのである。―――この観点からすると、今回の佐藤優氏のコラムは看過できない「問題作」なのだ。

このコラムの中で、佐藤優氏はまず、北朝鮮政府のホームページとして見られている「ネナラ・朝鮮民主主義人民共和国」の存在を紹介する。そしてこのサイトに2006年4月19日付の「朝鮮民主主義共和国人民保安象代弁人」の談話が掲載されていることに触れるのである。
その内容について詳しくお知りになりたい方は、こちらをご覧いただきたいのであるが(ただし、アクセスすると同時に北朝鮮側に個人情報が流出する危険性があることにも注意願いたい)、要するに米国が北朝鮮の仕業だと糾弾している「偽米ドル札」騒動は、「米中央情報局」による自作自演であると北朝鮮側はここで反論している。これを受けて、佐藤優氏は次のように「分析」する:

「これは、06年3月に外交ジャーナリストの手嶋龍一氏(元NHKワシントン市局長)が上梓した『ウルトラ・ダラー』(新潮社刊)が小説という形態で北朝鮮の偽米ドル作りについて告発し、ベストセラーとなった同書が、国際政治に影響を与えるようになった情勢を踏まえて北朝鮮が出したメッセージだ」言い換えれば、「アメリカや日本よ。今回はよくもやってくれたな。いまに見ていろ。北朝鮮を犯罪国家に仕立て上げるために、アメリカが偽米ドル札を刷り、北朝鮮に送り込み、再流出させているという話をインテリジェンスの手法を用いて流してやる」という北朝鮮の決意表明だ」

さらに続けて、次のように佐藤優氏は書き連ねる:

「日本ではほとんど報じられていないが、ドイツの保守系高級紙「フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング」が本年1月8日付(日曜版なので実際の発行は1月7日)にクラウス・ベンダー記者の手になる、精巧な偽100ドル札”スーパーノート”を北朝鮮が製造しているとする根拠は薄弱で、米CIAが謀略工作に用いるために秘密裏に偽札を印刷していることを示唆する調査報道記事を掲載している。紙幅の関係で詳しく論じることができず残念だが、この調査報道には情報源が記されていない。結果として、北朝鮮の思惑に合致した興味深い報道だ。」

筆力を誇る佐藤優氏である。巧みな言い回しで断定を避けているが、以上の文章を常人の理解力をもって読めば、彼のメッセージは次のように理解されよう:
1)「偽米ドルを刷っているのは米国だ。北朝鮮ではない」とする北朝鮮側の主張は謀略宣伝工作である。
2)北朝鮮が躍起になって反論する重大な契機となったのが、手嶋龍一氏の「著作」である。
3)ドイツの主要紙が北朝鮮の主張と同様の趣旨を述べているが、これには「情報源」が示されていない(⇒したがって、信用ならない)

実は、とある場所において有名ジャーナリストにドイツの当該新聞記事の「真偽」について直接尋ねらた佐藤優氏が、即座に上記に引用したラインと全く同じラインで最近応答したことがあるとの情報が、私のところに入ってきていた。さらにいえば、こうしたドイツにおける報道について、間接的に佐藤優氏へ伝達するようにあらかじめ仕向けたのも私である。したがって、私から見れば、今回のコラムでの佐藤優氏の言明は、佐藤優氏とのキャッチボールの第1ラウンドということになる。

もちろん、ここでこのキャッチボールは終わらない。なぜなら、「情報のプロ」であるはずの佐藤優氏は、この段階でいくつかの決定的なミスを犯しているからだ:
(1)3月25日付のこのコラムでお伝えしたとおり、米国がこれまで「北朝鮮による不法行為の数々だ」と表向き糾弾してきた事柄について、実は米国自身による謀略であった可能性が高いと報じているのは、何も佐藤優氏が指摘しているフランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング紙に掲載されているこの記事だけではない。欧米のさまざまなメディアが報じているこうした「事実」について、網羅的に紹介することなく、「紙幅の関係で詳しく論じることができず残念」の一言でかわすのはいかがなものであろうか。

(2)とりわけ、偽米ドル問題とならんで米国が主張してきた「偽タバコ問題」について、3月21日付産経新聞が、むしろ米国による深い関与を調査し、報じている点について言及しないのはアンフェアだ。なぜならば、佐藤優氏自身が「北朝鮮が日本に対して送っているシグナルやメッセージを読み取ることができる」サイトとして認める上記「ネナラ」の日本語HPで、産経新聞は糾弾される側の常連だからだ。そうした産経新聞すら、北朝鮮による謀略宣伝工作にかかっていると結論づけることは、常識的に考えて極めて困難であろう。

(3)佐藤優氏の上記コラムでの論理構造を素直にたどれば、
・まず、手嶋龍一氏の「著作」の発表があり、
・次に、これに対する反論が「ネナラ」HPでなされ、
・さらに、ドイツの有力紙で北朝鮮の主張を支えるかのような「調査報道」があったということになる。
しかし、ここで「マエストロ」佐藤優氏が作り上げたミクロコスモスにとらわれてしまっては真実を見誤ってしまう。

なぜなら、この一連のストーリーは何も手嶋龍一氏の「著作」によって始められたものではないからである。というのも、クラウス・ベンダー氏の記事には、同氏による「タネ本」があるからだ。
この「タネ本」は、「Moneymakers」(英訳・Wiley社 2006年)である。リンク先をご覧いただければ分かるとおり、この本は世界中のどこにいても、また、誰でもネット販売で購入できるものである。さらにいえば、この本の原本に相当するドイツ語版も同じくこちらから購入することが出来る。そして、このドイツ語原本の刊行期日は、2004年7月16日なのである。ドイツ語については「辞書の助けを借りながら読解する」レベルでしかないと自ら告白する佐藤優氏にとって、この原本を読破するのは少々きついかもしれないが、英訳本ならば十分理解されよう。したがって、この「タネ本」の存在に言及することなく、「この調査報道には情報源が記されていない」と断言するのは、「手抜き」であるか、あるいは「意図的な言論操作」としか考えられない(「インテリジェンスのプロ」と評価されたいのであれば)。

それでも気になる「情報源」についてであるが、この点について、上記の英語版のカバーには次のように記されている:

"Moneymakers(注:この本の英訳タイトル) has been researched over a five-year period in Europe, the USA and Latin America. The book is based exclusively on personal interviews and confidential material normally not accessible to outsiders. There were attempts to stop this research project. Many witnesses interviewed spoke under condition of strict confidentiality for fear of reprisals by their employers. As a rule therefore, the author refrained from verbatim quotes and, as far as possible, tried to confirm every piece of information by two independent sources."

ベンダー氏の議論について「情報源」を云々するのであれば、「直接引用はしないが、可能な限り二つの異なる情報源によって確認するようつとめた」とする、この出版社からのメッセージを吟味すべきであろう。少なくとも、「これは事実のような小説です」と主張し続けた、元大手放送局の大物ジャーナリストによる、同じく偽米ドル問題に関する「著作(小説)」よりは、誠実ではなかろうか。

「情報源が記されていない」と主張するのであれば、まずはこの本を熟読されてからが良かろう。また、ベンダー氏はフランクフルター・アルゲマイネ・ツァィトゥング紙の東京支局にも勤務していた経験を持っている。彼の東京での足跡は、それこそお得意の「インテリジェンス手法」をすればたちどころに分かるのではなかろうか(逆に分からなければ、世間的な評価はともかく、「それ程度のレベル」といわれても仕方なかろう)。
ちなみに、佐藤優氏は今回のコラムより前に、今年3月22日の段階で別のコラムにてより直裁にこの問題について論じたことがある。当然、結論は「ドイツの報道は、北朝鮮による謀略宣伝工作によるものだ」というもの。しかし、このように「断言」することの「情報源」を佐藤優氏こそ記していない。そしてまたさらに別の場所では、ロシアとの連携によってこそ、北朝鮮による日本人拉致問題は解決するとの主張すらしている(こちらを参照)。

意図して、あるいは無意識であるにせよ、佐藤優氏の「議論」は要するに、「米国が言っているこそ真実。それに疑いを挟んではならない。それと同時にロシアを盟友にすることによってこそ、日本は北朝鮮問題を解決することができる」ということになろう。彼の「議論」を信ずる熱心な日本人ファンたちは、次々にそうした親米・親露の方向へと誘導されていくことになる。


ゴールドマンサックス社のペーパーから米国の真意を読み解く

しかし、実際には米国こそ、「ゲームのルール」を変え始めているのだ。5月12日付朝日新聞によれば、今年4月末に行われた日米首脳会談において、ライス米国務長官より、米国による北朝鮮に関しての「テロ支援国指定」について、日本人拉致問題の解決を法的には条件としないとの通告があったことがリークされた。つまり、裏返せば、米国としては自己の都合によって、北朝鮮に対する「テロ支援国家」との糾弾をやめ、経済制裁を解除して、一気に米朝国交正常化へと走る可能性があるということになる。―――「拉致問題」を梃子に政権の座についた安倍晋三総理にしてみれば、正に悪夢のシナリオである。

日本の外交当局者たちにとっては「驚愕のライス発言」であったかもしれないが、米国が早晩、北朝鮮のテロ支援国家指定解除に動きはじめるとの情報については、3月18日付のこのコラムでも記したとおりであり、正に「想定内」である。次は北朝鮮に亡命中の「よど号事件犯人の取り扱い」へと焦点は移っていくことであろう。

「一体、いつの間に米国は日本を捨て、北朝鮮を取るシナリオへと転換したのか?」

そうお嘆きの読者のために、誰にでも入手が可能な米国の重要な「政策ペーパー」を一つご紹介したい。米系の世界最大の投資銀行であるゴールドマンサックス社が出した"How Solid are the BRICs?"(Global Economics Paper No; 134)だ。

このペーパー、一見したところ、いわゆるBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)による更なる経済発展を語るもののように見えるが、実はそうではない。ポイントはむしろ、BRICsに続く経済発展が見られる可能性がある国として11カ国を列挙し、これをNEXT ELEVEN(次の11カ国)と称している点にある。

このペーパーのシリーズ第66巻で「BRICs」という概念をゴールドマンサックス社が打ち出すのと相前後して、米国は政府の外交政策としてもこれら四カ国に対するアプローチを積極化したことから分かるとおり、このペーパーは金融国家戦略が政府としての行動の全てを規定している米国が今後、どちらに向くのか、より直接的にいえば、「どの国のマーケットで国富を収奪すべく、策動していくのか」を指し示すものである。したがって、果たして「次の11カ国」としてどの国がノミネートされているのか大いに気になるのだ。

"We call this larger developing-country set the Next Eleven (N-11), though whether they will "emerge" is still an open question for many. This group shows broad representation by region and includes Bangladesh, Egypt, Indonesia, Iran, Korea, Mexico, Nigeria, Pakistan, Philippines, Turkey, Vietnam."

問題はここから始まる。―――このペーパーでは「朝鮮(Korea)」とだけ記されており、韓国(ROK)と北朝鮮(DPRK)を一切区別していないのである。ゴールドマンサックス社が独自に策定したさまざまな指標に基づく世界の全ての国のランキングが巻末につけられているが、そこも含め、本文中の至るところに「朝鮮(Korea)」という単語はちりばめられていても、南北朝鮮を個別に分析してはいないのである。

果たして、これは一体何を意味しているのだろうか?

その答えは、米国が「南北朝鮮の統一」シナリオを追求していると考えればすぐさま理解できよう。仮に南北が統一することがあれば、それより前に北朝鮮系の国営企業、とりわけ、統一後も続けられていくであろう鉱山開発などに関連した企業の債券(リスクの高さゆえに、現在は文字通り「紙切れ」当然の状態にある)を買いあさっておくことにより、巨万の富を得ることになる。なぜなら、統一によって韓国という準・先進国が保証する債券へとその「紙切れ」が一夜にして変わるからである。

「まさか」と思われるかもしれない。

しかし、注意してみるとここにきて、世界中で「北朝鮮系債券マーケットの活況」がさまざまに報じられてきていることに気付くのだ。たとえば5月8日付NB Onlineは、90年代後半よりフランスのBNPがアレンジした債券が大量に出回っているとする。また、5月10日付ハンデルスブラット紙(ドイツ)は、カナダのファンド(Jutland Capital Management)が北朝鮮系債券を買いあさろうとしている姿を活写している。―――彼らは、「高リスク商品が低リスク商品になる瞬間の巨利」をよく知っているからこそ投資するのである。そしてその先にあるシナリオは「南北統一」であろう。

つまり、金融資本主義からすれば、北朝鮮は立派なマーケットなのだ。そしてそのバックには明らかに米国による密やかな「方向付け」がある。CEOであったポールソン氏を財務長官に送り込んだゴールドマン・サックスがその「保証人」になっていることは間違いない。

そして、この「方向付け」が一体いつなされたのかというと、このペーパーには「2005年12月1日」との打刻がある。つまり、米国による意思決定は既にそれ以前に行われていたのであって、それ以降のブッシュ政権の振る舞いは壮大な演劇だったというわけだ。その巧みな演技の前に、日本政府、そして日本の世論は完全に翻弄され、今やは仕事を外されそうになっているというのが現状に他ならない。

日本の個人投資家、そしてビジネスマンにとって、本当に必要なのは金融資本主義の実態を知らぬ、「情報のプロ」と呼ばれる観念論者の議論を追うことではない。

「まずはマネーの織り成す「潮目」をしっかりと読み込むこと」

そこから、日本の明日に向けた偉大なる第一歩が私たちの足元で始まるのだ。

2007年5月13日

原田武夫記す

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