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今号は「480号 日本の公務員」http://adpweb.com/eco/eco480.htmlの続きです。
「経済コラムマガジン07/5/14(481号)
・インフレへの警戒感
インフレ(通貨膨張)とインフレ(物価上昇)
日本では異常と思えるほどインフレ(正確には物価上昇)が嫌われ、警戒される。このような国はめずらしい。そもそもその前に「インフレ」という言葉自体が誤解を招く形で使われている。元々インフレとは通貨膨張による需要増を意味するはずであった。ところが今日ではインフレを物価上昇の意味で使っているケースがほとんどである。このため物価上昇率のことをインフレ率と呼ぶ奇妙なことが定着している。物価上昇はインフレ(通貨膨張による需要増)の結果として起る一つの現象である。
しかしこんな誤解が影響してか、日本では積極財政による需要創出政策がインフレ(物価上昇)を招くと、頭から拒否されるムードがある。しかしインフレ(通貨膨張)でなくとも、輸入品の値上げや競争条件の変化で物価の上昇は起るのである。また日本のように生産余力のある国では、需要増だけでは簡単に物価上昇は起こり得ない。さらに消費構造が昔と違っており、需要増が価格上昇に結び付かないものへの支出割合が大きくなっている。
つまり必ずしもインフレ(通貨膨張)がインフレ(物価上昇)に結び付くことがないのが今日の日本経済である。だいたい物の価格が需要と供給で決まるという経済理論自体が破綻している。需要が増えても価格が変わらないものはかなりある。卵なんか何十年も一個20円である。もちろんその間に需給関係は常に変化していたはずである。
逆に通信費のように需要増に伴って安くなっているものが多い。パソコンやデジカメのような電子製品も需要増に伴い安くなるのが普通である。さらに安い輸入品のことを考えれば、インフレ(通貨膨張)が即インフレ(物価上昇)ということは絶対にない。
しかし一方に価格が需要量と供給量の変化に影響されやすいものもたしかにある。即座に供給量を増やしたり減らしたりできない財である。典型的なのは農水産物や鉱業品などの一次産品である。しかしこれらについても石油備蓄に見られるような在庫を持つことによって、価格の変動をなだらかにすることは可能である。
需給関係が価格に大きな影響を与えるのが土地である。しかし土地は再生産がほとんど不可能な特殊な財である。このように一次産品や土地のような供給サイドが硬直的なものの価格は、需要の増減がかなりストレートに影響する。しかし土地は一般の消費財ではなく、また一次産品のGDPの構成比率は今日の日本では極めて小さい。したがってそれらの価格変動が最終製品の価格に与える影響は、今日の日本経済では軽微で限定的である。
ところがインフレ(通貨膨張による需要増)がインフレ(物価上昇)を招くと人々を脅して回っている者達がいる。日経新聞を開けば、景気が回復し毎日いたるところでインフレ(物価上昇)の芽が出ていると風潮している。一部の大企業の新入社員の初任給がたった1,000円上がっただけで、明日にも日本はインフレ(物価上昇)に見舞われるような騒ぎである。
最近の日本の物価は、石油などの一次産品の値上がりの影響を除けば、依然下がり続けている。そして一次産品の値上がり状況から判断すれば、日本を除く世界各国の経済は好調ということになる。「日本の景気が良くなってインフレ(物価上昇)が恐い」と言っている大バカ者は、04/11/1(第365号)「妄言・虚言の正体」(http://adpweb.com/eco/eco365.html)で取上げたA教授だけではないのである。
・日本の歴史教科書
大体、労働組合が弱い日本ではインフレ(物価上昇)は起りにくい。バブル期においても消費者物価はわずか3%しか上昇していない。ましてやハイパーインフレなんか起るはずがない。ところが経済の専門家であるはずの経済学者やエコノミストの多くがインフレ(物価上昇)を警戒するような発言を繰返している。筆者はこのような経済学者やエコノミストは頭がおかしいか嘘つきと見ている。
過去において各国でハイパーインフレは起っている。しかしそれらは戦争で生産設備が壊滅的な打撃を受けたり、独裁政権が生産力が不足しているのに通貨を大増発したとか、極めて特殊な要因が重なって起っている。しかもハイパーインフレは政府が適切な通貨政策などを行うことで簡単に収まっている。むしろハイパーインフレを経験した国は、その後順調に経済が成長している。
官庁の経済数字も奇妙なものが多い。デフレギャップがなくなったとか逆にインフレギャップが発生したとか、とうとう役人も狂ったかという印象を与えている。インフレ(物価上昇)を警戒するあまり、数字の算出方法を操作しているのである。これについては06/3/6(第427号)「GDPギャップのインチキ推計法」(http://adpweb.com/eco/eco427.html)他で指摘してきたが、あまりにもばかばかしいのでこれ以上言及しない。そのうち官庁の数字は誰も信用しなくなると思われる。
マスコミは都心で地価が上がり始めるとインフレがやって来ると騒ぎ始める。土地は特殊な財ということを忘れているのである。そして一般の国民もインフレ(物価上昇)警戒論に簡単に乗せられ、「清貧の思想」をもてはやす。経済の基調がデフレなのにインフレ(物価上昇)を心配しているのである。
日本人のインフレ(物価上昇)に対する警戒心は異常である。そのせいかデフレ経済からの脱却に成功した政治家の評価が極めて低い。それについては03/3/3(第287号)「軽視される高橋是清の偉業」(http://adpweb.com/eco/eco287.html)で取上げた。
筆者は、これは歴史教科書の記述に問題があり、その影響が大きいと考えるようになっている。日本の歴史教科書は、その自虐的歴史観が問題となっており、「新しい歴史教科書」を作る運動が起っている。しかし経済についても公平を欠く記述が多い。実際、日本の教科書で歴史を学んだ筆者自身が、インフレは問題であり、一度インフレになると正常化するのが難しいと長い間思い込んでいたのである。
反対に通貨を増発してデフレを克服した政治家や役人の業績は教科書にほとんど記述がない。むしろ「悪貨は良貨を駆逐する」という例えで、悪徳政治家、悪徳役人というマイナスの評価がなされている。むしろ逆にデフレを招き国民を苦しめた政治家が、「潔癖な政治家」「学問のある高潔な政治家」と持上げられているのである。
筆者は「これは歴史学者にマルクス主義者が多いから」と述べたことがある。マルクス主義者は、資本主義経済は最後に世界恐慌となり、最終的にプロレタリアートが立上がり革命が起るという歴史観を持っている。このような考えの歴史家にとって、デフレを克服した高橋是清などは邪魔な存在と考えるのである。
しかし最近ではそれだけではないと考えるようになった。一体インフレ(物価上昇)が誰にとって一番不利かと考えるのである。先週号でお話したように、それは明らかに公務員や官僚である。つまりインフレ(物価上昇)を問題視する歴史教科書は、公務員や官僚に都合の良いように書かれていると考えれば良いのである。
来週は公務員や官僚とインフレ(物価上昇)の関係の歴史を取上げる。」
http://adpweb.com/eco/eco481.html
コラムマガジン筆者氏の見解では「この「極端にインフレを嫌う体質」こそが日本の公務員や官僚の最大の問題であり、それに比べれば「豪華官舎」や「天下り」の問題は大した物ではない。むしろ「豪華官舎」や「天下り」の問題を大きく取り上げる事は、この「最大の問題」から目をそらせる事になる。」という事のようです。そしてこれは最近の問題ではなく、ずっと前からの問題であった様です。確かに歴史教科書でも、デフレ政策(江戸の三大改革等)やデフレ政策を行った政治家の評価は常に高く、逆にインフレ政策やインフレ政策を行った政治家(田沼意次、高橋是清等)の評価は常に低い物でした。「江戸の三大改革は実は全て失敗に終わった」などという事も教科書には書いてありませんでしたし。次週はこの「デフレ政策が評価され、インフレ政策が嫌われるようになった歴史」について取り上げるという事です。
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