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顔を見せた安倍と姿を隠す小沢 [文芸春秋]
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投稿者 white 日時 2007 年 5 月 10 日 16:08:51: QYBiAyr6jr5Ac
 

□顔を見せた安倍と姿を隠す小沢 [文芸春秋]

▽顔を見せた安倍と姿を隠す小沢(1)

 http://seiji.yahoo.co.jp/column/article/detail/20070510-01-0701.html

2007年5月10日
顔を見せた安倍と姿を隠す小沢(1)
夏の参院選の前哨戦は一勝一敗。
首相の「賭け」が沖縄決戦を制した
 春の嵐は永田町には吹かなかった。だが、首相・安倍晋三は自ら打って出た賭けの結果が、「凶」と出なかったことに安堵していた。
 各地で時ならぬ強風が吹き荒れた四月二十二日、七月参院選の前哨戦・参院補選は、沖縄では自民、公明両党推薦の前那覇市議・島尻安伊子が辛勝、福島では民主党公認の元衆院議員・増子輝彦が大勝する結果に終わった。
 票差はともかく一勝一敗。事前の予想通りの結果だった。ただ、元々、福島も沖縄も民主党が議席を持っていた選挙区だ。これで参院選で与党が過半数を維持するため必要なのは六十四議席。公明党が十三の改選議席を保てば自民党に求められるのは五十一議席だ。「五十議席からどれだけ上積みできるか」が、自民党選対関係者の共通した読みだ。それだけに、勝敗ラインが一議席下がる重みは誰もが承知していた。
 加えて、沖縄で負ければ、米軍・普天間飛行場の移設にも影響を及ぼす。初の訪米を間近に控えた安倍には、それも気がかりだった。側近の官房副長官・下村博文が「負ければ五敗分のダメージがある」と危機感を募らせるほど、安倍にはのどから手が出るほど欲しかった議席だった。
 その意気込みが周囲も驚く安倍の「賭け」につながったのを知る人は少ない。
 前日二十一日夕、安倍は沖縄に応援に入った。午後六時過ぎ、全日空機で那覇空港着。那覇市の商店街を島尻とともに約五十分間、練り歩き、街頭演説をして東京にとんぼ返りするという駆け足応援だった。
 沖縄入りは十五日に次いで二度目。前首相・小泉純一郎の時代は、補選で首相が同じ場所に入るのは一度だけというのが一種のルールだった。そこに「小泉ルール」などお構いなしに、突如、「もう一度行く」と言い出したのが安倍だった。
 首相補佐官・世耕弘成らは大慌てになった。前例がないだけではない。情勢は有利とはいえ、二度も、しかも選挙戦最終日に行って負ければ、安倍は「選挙の顔として自民党総裁に選ばれたのに、その実、強くない」との烙印を押されることになる。「補選二連敗」では、消えたはずの内閣改造論も再び自民党内にもたげてくるはずだ。世耕らは「万一負けたら、大変なカウンターパンチになる」と思いとどまるよう安倍を説得した。だが、安倍は制した。
「それでもいい。長崎で市長が銃弾に倒れた、こんな時こそ、首相は大衆の前に姿をさらさなければならないんだ」

温家宝との攻防
 一方、その前日の二十日、三度目の沖縄入りをした民主党代表・小沢一郎は、那覇市の住宅地でみかん箱の上に立ち、「沖縄の補選は日本の将来を左右する参院選の帰趨に大きな影響を持つ」と訴えた。しかし、二十一日は代表代行・菅直人や幹事長・鳩山由紀夫に任せ、自らは東京に戻った。安倍との直接対決を小沢が避けた時点で、「沖縄決戦」の勝負はついていた。
「今年に入って総理はふっ切れた。国民の支持を肌で感じることがパワーの源になっている」と下村は言う。確かに安倍には一時の迷いがなくなり、「自分は自分」といった開き直りの強さを示し始めている。
 例えば中国首相・温家宝の来日だ。
「今日は和食と日本酒を用意しました。これを機会に日本の米と肉を含め日本料理が中国でも一層広まるように、温総理の指導力を発揮していただきたい」
 四月十一日夜、首相官邸で開かれた歓迎晩餐会は、安倍のこんな乾杯のあいさつで始まった。老舗料亭・なだ万が用意したメニューは、桜海老の玉子焼き、花びら百合根、本マグロの中トロ、生ウニ、和牛ステーキなど。酒は安芸の賀茂鶴大吟醸。あいさつは、この日、日本の米の中国輸出再開に合意したのを受けたものだった。
 晩餐会は歌手の谷村新司が中国でも根強い人気の「昴」を熱唱するなど、温が強調した「日中間の氷を解かす」ムードに包まれた。だが、この直前まで安倍と温の間では、ぎりぎりの駆け引きが続いていた。
「この表現でまとまらなかったら文書を出さなくても構わない」
 安倍が外務省アジア大洋州局長・佐々江賢一郎に指示したのは前日十日だった。


▽顔を見せた安倍と姿を隠す小沢(2)

 http://seiji.yahoo.co.jp/column/article/detail/20070510-02-0701.html

2007年5月10日
顔を見せた安倍と姿を隠す小沢(2)
夏の参院選の前哨戦は一勝一敗。
首相の「賭け」が沖縄決戦を制した
 安倍と温との会談後に出す共同プレス発表。中国側がこだわったのは「台湾独立を日本は支持しない」との文言を入れることだった。台湾問題は中国外交の中核であると同時に、親台派だった元首相・岸信介のDNAが色濃い安倍と中国との距離を測るリトマス試験紙でもある。一方、安倍からすれば、これは一九七二年の日中共同声明で「中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府」と認めた時点で決着した話だ。
 今年一月の東アジアサミットの際、フィリピンのセブ・マクタン島での温との会談は、温が宿泊しているホテルで行われた。自らが表敬訪問する形になってしまったことに安倍は屈辱を感じ、外務省に激怒した。そんな安倍が今回、「中国に押し切られた」と見られる文言の文章化を嫌うのは無理もなかった。
 十一日、温が来日し、歓迎行事が続く最中も、佐々江と中国の外務次官・武大偉は首相官邸で激論を続け、決着は首脳会談に持ち越された。そして最後は安倍の主張通り、文書は「台湾問題に関し、日本側は、日中共同声明において表明した立場を堅持する」という従来通りの表現に抑え、安倍が口頭で「二つの中国の立場を取らず、台湾独立も支持しない」と伝えるにとどまった。
 逆に温は、これもまた文書には盛り込まなかったものの、北朝鮮による拉致事件について「日本国民の拉致に対する感情を理解し、同情する」と表明した。従来、ためらってきた「拉致」という言葉を中国首脳がこうした席で明確に使うのは初めてだった。得点は安倍が稼いだ。
 安倍がもっともこだわったのは、自らの訪中についてだった。会談で「本年中に訪問したい」と表明はしたが、具体的な時期は明らかにしなかったのだ。
 安倍は靖国神社参拝について「行くとも行かないとも、行ったとも言わない」との戦略を保っている。「最近、安倍が開き直ってきた」との話は中国側も承知していた。安倍が参院選で大敗し、退陣するのならやむを得ない。だが、勝って自信をつけ、あるいは退陣しないまでも政権浮揚策として「自分らしさ」を出すために、と八月十五日に参拝されたら、中国では再び激しい反日デモが起き、来年の北京五輪を前に国際的批判が高まる不安がある。安倍の参拝は「小泉との話し合いはあきらめ、安倍と関係改善する」と舵を切った胡錦濤政権の外交の失敗を意味し、今も磐石ではない政権を揺らがせる可能性があった。
 温の来日は「氷を解かす」ではなく、「安倍への疑心暗鬼をどこまで払拭できるか」が目的だったのである。できれば訪中時期を日中共同声明三十五年となる九月に確定し、その前の参拝を事実上不可能にする。狙いは明白だった。だが、安倍はそれに乗らず、参拝のフリーハンドはどうにか確保した。笑顔をふりまき続けた温は、疑心暗鬼が解けぬまま帰国したのだ。
 

塩崎vs.片山
 各省庁の天下りあっせんを禁止し、官僚再就職は「新人材バンク」に一元化する。行政改革担当相・渡辺喜美がまとめた案が、霞が関と自民党の猛反発を浴びた公務員制度改革も安倍は踏ん張った。
「たかが特命大臣じゃないか」
 自民党側の責任者、参院幹事長・片山虎之助は、官房長官・塩崎恭久に何度も渡辺をこき下ろし、食ってかかった。
 新バンク設置は天下りを前提に人事構想が動いている公務員制度の根幹を揺るがす。談合事件で天下りが再びクローズアップされ、その批判をしのぐための選挙目当ての人気取り策だ――。渡辺構想は片山らにはそう映っていた。
 ところが、従来、与党との交渉をまともにこなせず、「安倍官邸フールファイブの一人」と散々な評判だった塩崎だが、今回は「人気取り」と批判する片山の心理を逆手に取る計算高さを見せて迫った。
「でも、選挙がありますから」
 参院補選を前に官邸と党が対立し続けるのは得策でないとの理由だけではない。自ら参院選候補者でもある片山にも「古い自民党の改革抵抗勢力と思われてはかなわない」という不安があるのを塩崎は見抜いていた。念を押したのは安倍だ。十日夕、公邸での塩崎らと党幹部との夕食会で、安倍は「行革担当相と私は同じ考えだ」と片山に伝えるのを忘れなかった。
「見直し条項を入れてくれないかなあ。そんな法律はいくらでもある。法案の中身をいじろうというんじゃないんだから」
 十一日昼前、片山は国会内から塩崎に電話した。安倍の決意を知った片山は、もはや懇願口調だった。塩崎は安倍と連絡を取り、要請を受け入れて「バンク設置後、見直しを行う」と盛り込むことで折り合った。少なくともバンク設置までは骨格は動かないという意味だ。昨年の道路特定財源の見直しで党側にズタズタに骨抜きにされた時と比べれば変化は明らかだった。


▽顔を見せた安倍と姿を隠す小沢(3)

 http://seiji.yahoo.co.jp/column/article/detail/20070510-03-0701.html

2007年5月10日
顔を見せた安倍と姿を隠す小沢(3)
夏の参院選の前哨戦は一勝一敗。
首相の「賭け」が沖縄決戦を制した
 この話には、もう一つポイントがある。地方自治体を含めた公務員制度改革は自民党幹事長・中川秀直の持論だ。公務員改革は自治労をバックにする民主党が容易に手を出せない課題であり、「公務員を大事にする民主党」と叩けば、参院選の有効な手段となると中川は考えていた。
 安倍は「左にウイングを広げよ」という中川を決して好ましく思っていない。中川自身、安倍とサシで話す機会が少なく、参院選で何を旗に掲げるか、安倍から指示がないことを最近は不安に感じていた。安倍からすれば、利用するところは利用するということなのだろう。安倍は、この件で、そんなしたたかさも示した。
 憲法改正手続きを定める国民投票法案も、「安倍らしさ」をアピールするだけでなく民主党を揺さぶる格好の材料だった。
 法案を審議する衆院憲法調査特別委員会の理事である民主党元政調会長・枝野幸男と自民党の元経済企画庁長官・船田元。彼らの間では昨年末、ほぼ合意する段階に来ていた。「改憲手続き法の制定は、政局を絡めない」が双方の了解事項。違いは、国民投票の対象を憲法改正に限定するか(自民党)、拡大するか(民主党)などに絞られてきていた。それらを今後の検討課題とすることで歩み寄りが可能とみていた。
 ところが今年一月、安倍が「憲法改正を参院選で訴える」と語って、様相が変わる。枝野と船田らは舌打ちした。それは、政局に絡めた安倍への批判というより、小沢に「反対の口実」を与えてしまうと思ったからだ。不安は的中した。かつて政界でいち早く国民投票法案の必要性を説いていたにもかかわらず、そもそも小沢には、合意する気など毛頭なかったのだ。
「私が『慎重に検討する』といったのは、反対という意味だ」
 小沢は三月二十二日、菅、鳩山との会談の席で、あっさり言ってのけていた。
 小沢は自民党との対決姿勢を打ち出すことこそ、参院選で与野党逆転を実現する道だと信じている。この法案に反対することは「改憲より、生活維新」をアピールするチャンスだと考えていた。憲法改正に積極的で、枝野らが頼りにしていた鳩山も小沢の前では黙ってうなずくだけだった。
「安倍さんが総理である限り、与党とは憲法論議をしない」
 四月十三日の衆院本会議。法案が与党の賛成多数で可決した際、枝野はそう語ったが、本音は「小沢が代表である限り、憲法論議はできない」だった。同じ改憲派の前代表・前原誠司は本会議を欠席し、「参院選までは自重する」と、外遊に出発した。
 当の小沢は国会の騒ぎをよそに、連合幹部を引き連れ、全国行脚を繰り返していた。無党派層より頼りは労組。前原や枝野にはその「組織重視」も民主党のイメージダウンと映る。不満ばかりがうっ積した。
「小沢が福島に来なければ勝てる」
 民主党の長老で地元福島で参院補選勝利の功労者となった最高顧問・渡部恒三は、こううそぶき、小沢が五月に至るまで党首討論に応じないことに、「困ったものだ」と言い放った。参院選に勝とうが敗けようが、民主党には確実に分裂の火種が残った。
 しかし、これで安倍・自民党に参院選の流れが一気に傾いたというわけではない。
「鉄の意志で拉致問題を解決していく」
 参院沖縄・福島補選の投票が進む二十二日午後、安倍は東京・日比谷公会堂で行われた拉致被害者家族会などの集会に出席し、力説した。拉致こそ安倍の切り札だ。だが、解決の見通しが立たないことは、会場を埋めた二千人の参加者も知っていた。
 沖縄補選の勝利も決して「らしさ」がアピールしたからではない。島尻は元は民主党から離党した那覇市議。選挙で訴えたのは四十二歳という若さと四人の子供の母であることを強調した「子育て支援」。安倍も遊説で平和問題に敏感な沖縄県民感情に配慮して、憲法改正など本来訴えたいテーマは封印した。統一地方選で自民党は県議選では大幅に議席を減らし、特に地方ではベテラン議員の落選が相次いだ。自民党が金城湯池としてきた農村部でも有権者は「古い自民党」を見放し始めている。
 それは、取りも直さず参院会長・青木幹雄が牛耳る「参院自民党」のイメージであり、参院選の勝敗を決すると言われる「一人区」が危ないということだ。ところが、「無党派層をどう攻めるかが大事」という安倍に対し、青木は「無党派」と聞くだけでムッとなり、ライバル視する小沢同様、「組織が大事」と言って譲らない。安倍にとっては、いつ嵐が起きてもおかしくない。
「顔を見せ始めた」首相と、「一向に姿も見せない」野党第一党党首。二人の戦いは最終局面に近づいてきた。(文中敬称略)

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