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2007年05月07日
武器輸出禁止三原則見直し発言の背景にあるもの
久間防衛大臣は5月2日、訪米先のワシントンで、武器輸出禁止三原則を緩和する意向を、ワシントンの研究機関であるヘリテージ財団での講演で表明した。その前日の5月1日には、同じく額賀福志郎・前防衛長官が同じ場所で同様の発言をしている。これらの発言は勿論偶然ではない。米国政府に向けて「日米同盟の一層の強化を誓います」とメッセージを送っているのだ。
その根底にあるのは、核保有議論の解禁、集団的自衛権の見直し、国民投票法案の強行採決という、改憲に向けてまっしぐらの、安倍首相の「戦後レジームの変更」という強硬策である。しかしそこで終わっていては理解不足になる。それぞれの動きの裏には、それぞれの固有の理由がある。武器輸出禁止三原則の見直しの動きについても、極めて明確な理由から、こうした政策変更がこのタイミングで言い出されてくる理由があるのだ。5月4日の読売新聞の解説記事、「点検 安倍政権」はそれを見事に説明してくれている。
そもそも武器輸出禁止三原則は1967年佐藤栄作首相が衆院決算委員会で表明したことから始まった。その内容は@共産圏諸国A武器などを輸出してはいけないと国連決議で禁じられている国B国際紛争当事国、の国に対して、武器輸出を禁じたものだ。冷戦真っ只中での国際紛争助長回避策からスタートしたものだ。それが76年の三木内閣の下において、対象を事実上すべての国に拡大した。その形式も政府統一見解という形に格上げされた。平和志向三木内閣下での、より明確な憲法9条国家の表明である。ところが中曽根内閣の83年には、官房長談話の形でこの政府統一見解に例外が設けられた。米国に対する武器技術供与だけは例外としたのだ。日米貿易摩擦の圧力の下での、親米中曽根首相の対米配慮外交の結果である。
このように考えていくと、武器輸出三原則の変遷は、その時の自民党指導者の心情と、その時の国際情勢、対米関係といった国際環境の二つが微妙に組み合わせで変遷していったことがわかる。
それでは今回の武器輸出禁止三原則の見直しの背景にはどのような理由があるのであろうか。もちろんその一つには、戦後の歴代自民党首相の中でも、ここまで右傾化の方針を全面に打ち出した首相はいなかったと思われるほどの、安倍首相の軽々しい改憲体質がある。
しかしそれだけで説明を終わっては不十分である。久間、額賀発言の背景には、米国軍事装備の高度のハイテク化と、それにともなって生ずる莫大な金額のハイテク技術産業に後れてはならじとする日本の大手企業の要請がある。必ずしも積極的に米国に武器輸出したいということではない。必ずしも諸手を挙げて死の商人を目指そうというのではない。武器輸出禁止三原則の見直しは日米軍事同盟をこれ以上進めていく結果としての帰結であり、グローバル経済の中で生き残るための止むを得ない資本主義経済の要請なのである。
読売新聞の記事は言う。米国では「軍艦革命」が始まった。これまでのイージスシステムよりはるかに革新的な技術が必要になる。それは日本の技術なくしては開発できない。そしてその技術の所有権はすべて米国に帰属させなければならない。共同開発する武器技術はこれまでのような個別的例外では対応できないような多岐にわたるものだ。ここに、武器輸出禁止の根本的見直しが必要となってくる。見直しをしなければこれからの日米軍事同盟そのものが成り立たなくなってしまうのだ。
その一方において軍事技術の開発は欧米間でどんどん進んでいる。それにともなって欧米企業の技術力がどんどん進む。平和にこだわるあまり企業を衰退させる事は認められない莫大な商談を前に、指をくわえて眺めていることは耐えられない。綺麗ごとではすまされない、こういう事だ。
このように考えていくと、武器輸出禁止三原則の見直しは今の政・官・財の支配体制の下では防ぎ難い時代の要請である。だからと言って一気に武器輸出禁止が解禁される事はない。それはあまりにも憲法9条の精神から逸脱するからだ。例外を一つ一つ増やしていくことになるだろう。しかも極めて複雑なやりかたで。それはまさに官僚の知恵の出しどころだ。それはあたかも日米軍事同盟優先の政策が時代を経てなし崩し的に憲法9条の精神を侵食して行った過程と瓜二つである。すべては日米同盟関係を最優先にするこの国の姿勢から生ずるものだ。
一気にこの流れを断ち切る事はできない。一気に日米軍事同盟を破棄する事は現実的ではない。しかしこれ以上進めていけば日本は無条件で米国に飲みこまれてしまう。歯止めをなくしてはならない。それが「憲法9条を変えない」という事の本当の重要性である。
http://www.amakiblog.com/archives/2007/05/07/#000369
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