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マーケットは今年6月に「瓦落」となる
ターゲット・イヤーとしての「2010年」―――偶然の一致を検証する
世界中でごそごそと動きが出始める決定的なタイミングだというのに、どういうわけか日本だけは動きが泊まってしまうゴールデン・ウィーク。マーケットとは、「下がる」ものではなく「下げる」ものであり、また、「上がる」ものではなく「上げる」ものであるという基本的な認識に立つと、日本マーケットに仕掛けを施すことを生業としている米欧勢からすれば、これほど嬉しい日本のカレンダーはない。「せっかくの祝日なのだから、ぱーっと遊びに行こう!」などと日本人が呆けている間に、着実に彼らはシナリオを描き、次、あるいはその次のフェーズに向けて動いているのである。
もっとも、だからといって焦ったところで、トーキョー・マーケットが閉まっている以上、株式について個人投資家の手も足も出ない。そこでもがいて怪しげな海外の金融商品に手を出す暇があるのであれば、むしろ徹底した読書を通じて、1年後、3年後、そして5年以上後を見越した「大戦略」を立てるのに時間を費やすべきなのだろう。
こう考え、私は今年もゴールデン・ウィークに、これまで気になっていたものの、あえて手に取ってこなかった本、あるいは手に取る暇がなかった本を徹底的に読み漁っている。その中の一つが、吉川元忠「経済敗走」(ちくま新書)だ。
吉川元忠氏は1934年生まれ。東大法学部を卒業後、日本興業銀行に入行し、その後、コロンビア大学などで研鑽を積まれた。神奈川大学教授として活躍されていたが、惜しまれながら2006年に鬼籍に入られた方である。一貫して、日本の金融面での国家戦略の不在、米国を中心とした金融資本主義の荒波が持つ巨大なリスクとエゴイズムを描き出し、果敢にも警告を発し続けた人物である。
御経歴からいって、本来であれば、日本国内における対米協力者(いわゆる「ドメスティック・アライアンス」)として生きるべく、米国によっても選ばれた人物だったのであろう。しかし、金融マーケットにおける「米国による統治」という実態を知れば知るほど、「自分だけは黙ってよろしくやる」という生き方を潔しとせず、たとえ言論は無力であると知っても、あえて孤高の反逆をすべきだという結論に達した啓蒙人である。
その意味で、「目覚めること」ができた稀有な日本人の例だということができよう。ヘーゲルの「理性の狡知」ではないが、米国が金融資本主義を流布させるべく、世界中のベスト・アンド・ブライテストを自らの配下にしようとすればするほど、逆向きに走り始める天才・秀才たちが一定の割合で生じてしまうのだ。あるいは「歴史の皮肉」といっても良いのかもしれない。
これまで多くの方々が、吉川元忠氏の御業績については述べてきたので、ここではその詳細について繰り返すことはしない。もっとも、1点だけ、私自身が外務省を自主退職して以降、何度も繰り返してきた議論と重なる重大なポイントがあったので御紹介しておきたいと思う。
それは、「世界は2010年と2011年の狭間を境に、大きく変わる」ということだ。
吉川元忠氏は、そのことについて、前掲書の中で次のように書かれている:
「2010年を境に、アメリカのマネー経済は状況が一変する。第一にはベビー・ブーマー世代が定年を迎えて引退し、これが直接、あるいは401kや投信などを通じて間接に保有していた株式が市場に溢れ、需給は変調する。そしてさらに消費へと向かった時、経常収支は現在より一段と悪化するだろう。ここ3、4年間で劇的に悪化した財政収支については、対イラク戦の前途よりなお不透明といえようか。そして、こういう中で、日本が1980年代から始めた30年ものの米国債の償還が始まる。」
「中国が人民元を切り上げる展望はあるのだろうか?・・・(中略)・・・最大のファクターはアメリカの対中赤字の膨張である。・・・(中略)・・・かつての日本に対する貿易赤字と同じように、アメリカ議会が中国に対する警戒感を持ち、黒字削減を迫る可能性が考えられる。・・・・(中略)・・・結局、アメリカの圧力に対応する手段として、人民元の切り上げがクローズアップされる事態が、早晩訪れることになろう。人民元が切り上げられるシナリオを考えるとき、戦後日本の歩みと比較すると、興味深い「同時性」が発見できる。1945年の敗戦当初、日本の為替は複数レート制をとっていた。・・・(中略)・・・1949年にドッジ・ラインがしかれ、1ドル=360円の固定相場制が導入される。・・・(中略)・・・1ドル=360円のレートは日本にとって割安であり、その恩恵をうけて、日本は経済大国へと成長した。そのピークが1970年の大阪万国博覧会である。ところが、翌71年にはニクソン・ショックがあり、日ならずして、主要国とともに日本は変動相場制の世界に入っていくことになる。この間が25年。これを中国にあてはめると、1985年に高度成長路線がスタートし、2001年にはWTOに加盟した。そして、今後2008年に北京オリンピック、2010年には上海万博が予定されている。ここまでもちょうど25年である。・・・(中略)・・・日本とのアナロジーからすると、経済成長のスタートから25年にあたる2010年がひとつの区切りとなって、人民元の切り上げ、もしくは変動相場制への移行があるかもしれないという推測が成り立つ。」
不勉強というのは眞に怖いもので、実は私も全く同様の主張を別のところでしてきた経緯がある。
まず、前者の米国における人口動態分析については、拙著「サイレント・クレヴァーズ」(中公新書ラクレ)。日本ではどういうわけか、「団塊世代の大量退職問題」しか語られないが、米国にとって対日関係における最大の脅威の一つが、「団塊ジュニア」の存在であり、また日本の団塊世代と団塊ジュニア世代の丁度中間にあたる「ベビーブーマー世代」の大量退職である。そのことに米国のエリート層は早くから気付いており、とりわけ民主党の「裏マニフェスト」の中には常に書かれているにもかかわらず、日本の大手メディアは一切報じないのであるから、これまた不思議なものだ。
そして後者の問題については、拙著「騙すアメリカ 騙される日本」(ちくま新書)。もっとも私の場合、これは吉川氏からの「受け売り」ではなく、マーケットで大活躍している盟友から直接聞いた内容を、分析して披瀝したものである。2010年の上海万博開催直後の1、2年をターゲットにして中国沿岸部のバブル崩壊に向けた工作が行われていることは、もはやマーケットにおける「常識」であるといっても良いだろう。
さらにいえば、これはメールマガジン「元外交官・原田武夫の「世界の潮目」を知る」スタンダード版をご購読の方々には別途、特別コラムとしてお知らせしたことではあるのだが、つい先日もニューヨークを経由して、「ターゲット・イヤーは2011年」との情報に接したばかりである。つまり、それまでの期間はいってみれば「仕掛け」と「その効果」とが交互に織り成す、高揚感はあるものの、不安定な時期が継続するであろうということなのだ。
つまり、現状得られる情報・分析を重ね合わせる限り、2010年と2011年の「狭間」は、おそらく世界史上、稀に見る断層となる可能性が高い。もっといえば、日本の個人投資家にとって、残された時間はあと4年にも満たないのである。そこでの勝敗が、私たち=日本の個人投資家自身、あるいは私たちの子孫たちにとって決定的な意味合いを持つことになるであろう。
6月に「瓦落(がら)」となるこれだけの理由
もっとも、以上の大戦略を踏まえたからといって、何が出来るものでもない。ポイントは、そうした歴史の断層を常に頭に置きながらも、直近に訪れるであろう、ここの局面について、先読みをし、的確な行動を行っていくことである。
現状を見る限り、今年6月のいずれかの段階で、世界的に株式マーケットの大幅な下落が見られる可能性が高いと弊研究所では見ている。これは現在、大手のメディアあるいはシンクタンクなどが全く口に出していないことではあるが、以下の理由からすれば、論理的な帰結としかいいようの無いものである。
(1)高騰を続けるNY市場が、日本以外の主要マーケットにおける「高揚感」を演出する最大の舞台装置となっているが、実は6月4日に米国で施行される内部統制関連法令のため、とりわけ欧州大手各社がNY市場での上場を取りやめる事態が相次いでいる。いわばキャピタル・フライト(資本の逃避)が生じているわけであり、これを一部の欧州大手メディアは報じているものの、米系はもとより日本の大手メディアは一切こうした大きなうねりについて報じてきてはいないのである。もちろん、「資本の逃避」はマネーがNY、そして米国から去っていることを意味し、これが顕在化すれば、パニックのような下げになる可能性すらある。
(2)6月6日から8日にドイツ・ハイリゲンダムでG8サミットが開催される。これまで紆余曲折はあったものの、この場でかねてより議長国・ドイツが主張してきた「ヘッジファンド規制」についてなんらかの結論が出される公算が高くなってきている。ヘッジファンドは英米法由来であり、米英は共にこうしたドイツの動きを牽制してきた経緯があるが、
―欧州勢はEU全体としての提案をまとめつつあり、
―ヘッジファンドが世界中で荒稼ぎした資金の流れはもはやNYではなくロンドンへと向かうのが主流になりつつあること(したがって、米国としてなんらかの規制が加わった場合の「痛手」への対処がなされている気配があること)、
―ヘッジファンド規制が比較的強いといわれるシンガポール市場に対し、英国がさらなる透明性確保のための措置を求めるといった「テスト」が行われていること、
などからいって、表向きは議長国・ドイツの体面を保つ形で、なんらかの結論がもたらされる可能性が高い。
(3)「大幅な下げ(瓦落)」の前には「大幅な上げ」が演出されることは、今年2月28日からの「世界同時株安」で私たち=日本の個人投資家も学習済みであるが、今回もまた「大幅な上げ」が演出される可能性が以下のファクターから見えつつある。
―北朝鮮情勢の急激な「好転」がみられること。焦点は、英国系投資家たちを中心とした欧州勢が、北朝鮮における鉱山開発ファンドへの出資を行うために利用してきたバンコ・デルタ・アジア(マカオ)にある北朝鮮関連口座の資金に対する米国の凍結措置の解除にあるが、これが結局、ロシアとイタリアの金融機関へと移送されることとなり、いつの間にか「大団円」となりつつある。麻生外務大臣にいたっては、早くもこうした問題解決後の六カ国協議の開催にすら言及するほどである関連報道(5月5日・朝日新聞)。当然、地政学リスクの「低減」となり、日本マーケットは「上げ」となる。
―イランについて、米国がイランとの直接対話を行う兆しを見せつつあること。これについては、4月1日付のこのコラムでも分析したとおり、米国による動きを乗り越える形で英国が「人質解放」を理由に直接交渉に乗り出し、その後、EU全体としてイランとの直接交渉を再び行い始めた経緯がある。4日には米・イラン両国の大使級会談が行われたという情報もある関連報道(5月5日・毎日新聞)。米・イランの「和解」演出は、当然、原油価格の下落へとつながり、株式マーケットにとっては「地政学リスク」軽減による上げへとつながっていくことであろう。
―日本マーケットについていえば、これまで「放置」、あるいは「放棄」されてきた感があった新興株マーケットが、「超割安金融商品の巣窟」として注目を集め始めている。私は今年のはじめの段階で、「三角合併解禁(5月1日)直後には、米国との関係で三角合併の主戦場となる大型株ではなく、むしろ意表をつく形で初夏にかけて新興株相場が演出される可能性が高いとの情報がある」と既に述べてきた。したがって、現状は「想定内の展開」ということになる。
もっとも、この点についてはこの連休中にも、何人かの熱心な個人投資家の方々から、「新興相場になっているというが、どこを見ればそれが分かるのか?」という疑念の声をいただいている。確かに、画一的な指標のない新興株マーケットは「エニグマ(謎)」の一つであり、動向が分かりにくいものではあるが、たとえばJASDAQ指数のチャートをごらんいただければ、私が何を言いたいのか、たちどころにご理解いただけることであろう。現に、連休中の1・2日の相場で大型株が冴えなかった一方で、新興株マーケットは着実に、素人目には目立たない形ではあっても、「上げ基調」であることは明らかとなっている。―――これに連休明けの決算発表ラッシュの中で「嬉しいサプライズ」が続いたら、どのような事態になるかは、おのずから明らかであろう。これまで誰も振り返りすらしなかった金融商品が「お宝」であることが分かった瞬間、個人投資家たちは一斉にどよめくのである。そこが、「仕掛ける側」にとって最大の見せ場となる。その結果、何が生じるのかは、たとえばセイクレスト(8900)を見れば明らかだろう。
仕掛けられた金融資本主義の中であなたは生き残れるのか?
しかし、以上の「シナリオ」が見えたからといっても、喜んでばかりいてはいけない。怒涛の歓喜の中だからこそ、冷静に「さらにその次のシナリオ」が見えていなければ、金融資本主義の中で生き残ることは出来ないのである。
そして、冷静に考えれば、これからの2ヶ月ほどの間、ヘッジファンド勢もまた、決算期を迎えることに気付く。世界中の機関投資家から余り金をわたされ、掃除人よろしく、世界中のすみずみまでマーケットに入っていっては、根こそぎ富を吸い尽くしてくるヘッジファンドも、ここで一旦小休止に入ることになる。そして決算の直前には、「上げ」による「高値売り抜け」が演出されるのが常套手段であり、またさらにいえば「その直後の強烈な下げ」による「ジェットコースターのようなショート(空売り)での短期的な高利益の獲得」を行うのもまた、ヘッジファンド勢のいつもの手段である。そこにきて、日本の新興株相場である。連休後の1ヶ月ほどの間に、急上昇・急降下があることはありありと見えている。
さらにいえば、こうした新興株マーケットでの高揚と失望こそ、本命である「日本の大企業に対する三角合併」という今年秋のビッグ・イベントに向けた陽動作戦であることに気付かなくてはいけない。したがって、連休明けから生じるジェットコースター相場は心臓に悪くていけないという方は、その直後の「谷底」を狙うのがよろしいであろう。下手をすれば、人生を左右するほどの一財のチャンスがそこに眠っている可能性すらある。
ただし、それを見抜けるのは、あくまでも仕掛ける側、すなわち米国を中心とした外資勢と「同じ目線」で自らのことを見ることができる日本の個人投資家だけである。このセンスを身につけるには、日々の努力がいる。しかし、彼らもまた、私たちがゴールデン・ウィークで呆けている間にもさらに自己鍛錬を重ねてきているのである。ここで私たちが自らネジをまかなければ、到底おいつくことができないのは明らかだろう。
繰り返しになるが、勝ち抜くためには「米欧勢の目で日本を見るセンス」を養うしかない。弊研究所では、そうしたセンスを養いたいと切望される方々のため、「まず何をすべきなのか」を学ぶための機会として、5月20日には福岡、7月7日には札幌、7月22日には名古屋でそれぞれ無料学習セミナーを開催予定である。ここでは「基礎中の基礎」を学んでいただき、さらに日常的に「世界の潮目」をメールマガジン「元外交官・原田武夫の「世界の潮目」を知る」で学ばれている方々を対象に、個別の局面についての情勢分析だけに特化したセミナー「原田武夫塾LITE」を6月に東京・大阪で開講予定である(弊研究所HP上のご案内は5月9日朝より開始予定)。
勝ち残り、いや、「生き残る」ため、是非、弊研究所を使い倒していただければ幸いである。
2007年5月6日
原田武夫記す
[新世紀人コメント]
近い将来について私が見通せる訳ではない。
しかし、長い歴史の変転の有様については、如何なる学問的方法を採っても、
得られる"結論"は同一である。
採った方法により表現の形が変わるだけの事である。
歴史学的方法を採っても
経済史的方法を採っても
軍事史的方法を採っても
精神・宗教学的方法を採っても
人類史を見通す結論は同一である。
導き出されたものが同一である故に、その結論は正しいのである。
無駄な思考は行うべきではない。
肉体の遊びは肉体を高めるが、頭脳を遊ばせる事は頭脳の力を退化させる。
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