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http://www.nishinippon.co.jp/nnp/column/syasetu/20070503/20070503_002.shtml
社説 2007/5/4
きょうは「みどりの日」です。4月29日が「昭和の日」となったため、今年から変わりました。
この日を中心に各地で植樹祭や緑化推進大会などが開催され、自然保護への関心も高まっているようです。
しかし、私たちの身の回りを見渡すと、無秩序な開発で緑地がはぎ取られ、赤土がむき出しになった場所がまだまだ少なくありません。都市部では、高層マンションの建設で景観が損なわれたという声もよく聞きます。
長崎県の諫早湾干拓事業のように、埋め立て工事によって干潟の生物が大量に死滅したところも出ています。
こうした環境破壊に歯止めをかけるために、「環境権」を確立しようという意見があります。これは「良好な環境は人間の生活の基本であり、われわれには良き環境を享受しうる権利がある」というものです。
■学者間でも意見割れる
環境権は1960年代に米国で提唱された考え方で、72年にスウェーデンのストックホルムで開かれた国連人間環境会議で採択された「人間環境宣言」の中で「人間の基本的権利である」と明記されたことから、世界的に認知度が高まりました。
これを受けて、環境権や環境保全規定を憲法の条項に盛り込む動きも広がっています。すでにスイスやドイツ、スペインなどでは、憲法の規定に環境保護義務が入っています。
ところが、日本の現憲法には環境に関する記載はありません。政党間で行われている憲法改正の論議では、憲法の条項に環境権を新設し、「良好な環境を享受する権利」や「環境保全に対する国の義務」を明確化しようという声が上がっています。
自民党は2005年11月にまとめた「新憲法草案」の条項に「国は、国民が良好な環境の恵沢を享受することができるようにその保全に努めなければならない」と書き込み、環境権を明記しています。
公明党は現行憲法に環境権やプライバシー権などの条項を加えた「加憲案」を策定中で、夏の参院選後に正式な案を取りまとめる予定です。
民主党も05年10月に取りまとめた「憲法提言」の中で、環境権を「新しい権利」として確立することをうたっています。
いま、国会で審議中の国民投票法案が成立すれば、今後の焦点は憲法改正をめぐる論議に移ります。しかし、憲法九条の改正に関しては国民の意見が割れていて、改正へ向けた展望は描けていないのが現状です。
そこで、政府・自民党の中で浮上しているのが、公明党や民主党も基本的に賛成している「環境権」を先行させて、改憲の議題に乗せようというシナリオです。
環境権を「露払い」役にして憲法改正の地ならしを行い、改憲への抵抗感が薄れたところで本丸の九条改正を目指そうという戦略なのです。
これに対して、護憲を旗印に掲げる社民党は「環境権については、解釈によってすでに憲法上の根拠が与えられており、あえて憲法に明文規定を設ける意味はない」と主張しています。共産党も、環境権を明記することに反対の立場です。
現憲法は「環境」に関して特段触れていませんが、憲法学者の中には憲法二五条には生存権が規定され、一三条の幸福追求権などの規定を踏まえると、憲法解釈で「環境権」が導き出せると言う人も多いようです。
このように「憲法上の環境権」の概念について、専門学者の間でも意見が割れている中で、憲法改正の手続きを急ぐわけにはいきません。
■個人で意識した行動を
むしろ、いま急がねばならないのは地球温暖化対策をはじめとする環境問題への積極的な取り組みです。
環境への基本理念を盛り込んだ環境基本法が1993年に制定され、その基本施策に環境影響評価(アセスメント)の推進が盛り込まれています。
大規模事業や地域開発の構想が策定された段階でアセスメントを実施し、環境の悪化に歯止めをかけようという「戦略的環境アセスメント」が、今年に入ってやっと新制度として導入されることになりましたが、原発など発電所だけは対象から外されたのです。
どうやら、環境省が電力業界などの意向を受けて除外したようですが、これでは国民が期待する「環境重視型の社会づくり」は、到底無理です。
「美しい国づくり」を掲げる安倍晋三首相は、6月までに「21世紀環境立国戦略」を策定すると表明しています。
これは、地球温暖化対策をはじめとする環境問題に最優先で取り組む姿勢を「環境立国戦略」で明示し、来年夏に北海道・洞爺湖で開催される主要国首脳会議(サミット)の主要議題とみられている「温暖化対策」で主導権を確保するのが狙いなのでしょう。
でも、地球環境の危機はアピールだけでは解決できません。憲法に「環境権」という条項を書き込めば、すぐに環境が良くなるわけでもありません。
暮らしやすい環境を守るために、私たち1人1人がもっと「環境権」を意識した行動を取りたいものです。
=2007/05/04付 西日本新聞朝刊=
2007年05月04日10時54分
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