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東京と広島の対照的な選挙結果を検証 2007/04/10
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すでに,ご承知のとおり、筆者(東京都出身、広島県在住)は統一地方選挙前半戦において、東京都知事選挙では前宮城県知事の新人・浅野史郎さん、広島市長選では前職・秋葉忠利さんに密着しました。
両者とも、勝手連が担ぎ出す形式でした。そして、与党が推す候補と戦いました。
しかし、結果は対照的でした。その原因を、改めて落ち着いて分析します。これは、決して浅野さんの支持者や勝手連を非難するものではありません。そもそも東京都外者である私が批判するのは僭越です。あくまで客観的な分析を心がけつつ与党や前総理、現総理、現知事らの「ネオコン」政治に反対するみなさんの参考にしていただきたいのです。
1999年初当選時の石原さんを上回る票、前回の民主党系候補の樋口恵子さんの倍
の票を得た、その努力を賞賛した上での、検証です。
1.秋葉さんは現職、浅野さんは新人。
この違いは大きいです。秋葉さんは1990年から代議士を3期勤め、知名度は抜群です。
浅野さんは宮城では有名で、地方自治や福祉の玄人筋には受けますが、都民全体での知名度はやはり石原さんに及びません。
2.東京のネオコン化・地方の反自民化
小泉総理は、なんども散々分析したとおり、地方の利益を東京のお金持ちや大手企業、アメリカ・中国に付け替える政策(円安やお金の流出を通じて)を取りました。
ですから、東京のインテリにとっては、自民党はありがたい存在です。一方逆に広島では市議選、県議選で自民惨敗です。私の目には、自民の組織は動いていないように見えました。運動員にやる気がないことおびただしい。候補者が演説していても運動員や応援弁士はぼけっと突っ立ているだけでした。
政党の保革問わず選挙に関わった私の経験ではふつうならビラを配るのですが、それもしない。弁士でも代議士とか名が通っている人なら握手したりしますがそんなこともない。公共事業カットなどで、自民党で選挙をやっても見返りがないので、気合も入らないのです。
一方の石原陣営は危機感を持ってやる気満々と伝え聞きました。自民、公明の組織がフル回転し、手堅く支持層を固めた。この背景には、それなりに景気が良い 、利益誘導が利くという実情が反映されています。
ネオコンの政策は本来は保守本流とはかけ離れていますが、そういう事情で保守本流も一定石原さんを支持し、インテリのネオコン支持者、公明党員とあわせ、「手堅い」(浅野さんに密着していた私としては、相手に「勢い」は感じなかったが、とにかく「守り」を固めた現職は「手堅い」なと思いました)選挙となりました。
3.有権者が受け取ったメッセージ性
庶民で生活が苦しい人は、例えば直接的な「メシを食わせてくれる」メッセージが
好まれる傾向があります。亀井静香さんが地元広島で庶民に人気があるのも、田中の角さんが圧勝していたのも、「メシを食わせてくれる」というイメージがあったからです。
一方、いわゆるインテリ層になると、新聞とかネットとか、詳しい情報を候補者から
聞いて判断する傾向があると思います。ただ、これは、ネオコン側の情報しか詳しく
入らないとそちらへバイアスが懸かってしまうという傾向もあります。「都市が田舎に
収奪されている」などは割合インテリ好みです。あるいは、「法人税減税で経済が活性化しないとどうしようもない」などで、ネオコンを正当化する言論などです。
筆者の大学の先輩・後輩にも多いリベラルな大学教授や医師、弁護士、官僚などでも下手をするとネオコンに取り込まれます。
しかし、利害得失をとけば、わかってくれる場合も多い(そうでない学歴を鼻にかけた嫌な人もいますが)。
広島の秋葉さんの場合、まず、弱者へのメッセージ性はあった。弱者に耳を傾けるという姿勢はきちんとあった。タウンミーティングなどもやった実績がある。小児医療の
充実などの実績もある。
一方、インテリ向けにも、ITなど、しっかりした経済活性化策を示していた。公共事業も削るべきは削り、しかし、これからはやるべきものはやる、という姿勢がはっきりした。
それにより、「広島は停滞していて市長を変えないとだめ」という自民党や一部大手企業の言説を跳ね返しました。
浅野さんの場合、災いしたのは、結果論ですが「みんなと考えて決める」というのを、オリンピックとかそういう問題の賛否で設定したこと。私は悪くない(例えば都民投票で決めるなど)、と思いましたが、やはり、びしっとやめる、という吉田さんのほうが良い、という人もいたでしょう。吉田さんは、国政での共産基礎票53万から10万上積みしましたが、リベラル志向の低所得者を取り込んだといえます(与党志向の低所得者層は多くの場合、公明党か棄権がおおい)。左からは吉田さんに食われた。
そして、インテリに対してのメッセージも秋葉さんほどではなかった。インテリはかくて石原さんに流れた。むやみやたらな箱物ではなく、地域を潤す福祉やITで東京を良くするという秋葉さんは出していた、明確なメッセージがほしかった。
例えば、日の丸・君が代強制反対の先生方の気持ちは大変よくわかる。私は昔の左派による物理的な日の丸「引き降し」には反対だが、天皇陛下のお言葉さえ無視した「強制」も怪しからんと思う。
しかし、それだけを訴えていたのでは支持は広がらない。意外と貧困な東京の福祉や子育てをなんとかしてほしい、飯を食わせてほしい、という人の要求。逆に長期的に東京を発展させるにはどうすればよいかを考えるインテリ。両方へのメッセージが秋葉さんほどではなかった。浅野さんのマニフェストでももっと支持者として打ち出せるところはもっとあるのにもったいないと思います。自分たちの運動目標を達成しようと思えば「他者(飯を食わせてほしい人、福祉を充実させてほしい人など)への共感」がもっと必要ではと思いました。
4.選挙戦術
秋葉さんは選挙戦術は一貫した市民中心選挙。浅野さんもそのはずでしたが途中で
民主党が前面に出ました。
これは、やはり、秋葉さんの支持者ほどは浅野さんの支持者が十分メッセージを広がらせることができないので、組織中心の石原さんに対抗するには、民主党に頼るしかなかった。それが一貫性がないとマスコミに叩かれた。しかし、そもそもは、十分なメッセージが伝えられなかったことに根本原因がありますから、3が実は4の根本原因です。戦術の失敗という評論は正しいですが、根本には対低所得者層でも、対インテリ層でも秋葉さんほどにはメッセージがはっきりはしなかったということはあると思います。
5.野党分裂
これは一番大きい。前にも述べましたが、いつもなら、誰か野党候補を選挙で応援するような人が大量に浅野さんをやるか、吉田さんをやるかで迷ってどっちもしなかった、という最悪のケースをリベラル層の中で大量に目撃しました。
その迷う気持ちはわかりますし、野党が一致して勝手に推した、「秋葉方式」でできなかったのか、という悔いを故郷・東京に残すことになってしまいました。
例えば、早い段階で、吉田さんに共産党に偏らない都政運営を保障させる(同党推薦は撤回する)ことで、民主も社民も勝手に推すとか、いうウルトラCはどうか、など。
あくまで、これらは結果論です。ただ、これも、実は3と関係しており、もし、支持者がもっと、例えば「浅野さんは柔軟で風通しが良い、政策が現実的」などとということを積極的にしていれば、勝ち目はあった。吉田さんでは勝てないから、では浅野さんへの統一の理由としてはやはり消極的です。
あるいは、反石原で予備選挙を直前で良いからやるとか。アイデアはあったと思いますが、あくまで結果論であり、自分がやれといわれてできるとは私も思いません。
国政も含めて候補者擁立にかかわった経験も何度もあるわたしは、政治とは想定どおりうまくいくものではなくどたばた劇で穴だらけということが多い、とくに野党側は不利ということは熟知しているつもりです。
しかし、ネオコン打倒で選挙に勝つにはどうしたらよいか、豊富な教訓があると思います。是非皆さんも、地元の選挙の検証をお願いします。
(さとうしゅういち)
http://www.janjan.jp/election/0704/0704093454/1.php
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