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怒りの長崎 広岩近広
大阪と西部両本社の共同企画「ヒバクシャ」の打ち合わせで、広島と長崎を時々訪ねる。被爆地としてよく言われるのが「怒りの広島」「祈りの長崎」だろう。後者は教会の多い長崎らしいと感じていた。
両市とも原爆の惨状を伝える資料館をもっているが、館内に入ったときの印象はちがった。長崎原爆資料館は、まず原爆が投下された直後の写真映像がながれる。何度見ても、人間の尊厳を奪う原爆のむごたらしさに胸をふさがれる。
広島平和記念資料館は軍都であった事実に目を向け、原爆が落とされるまでの歴史の展示からはじまる。資料館全体としては両市に遜色(そんしょく)はないものの、一歩入ったときの衝撃は長崎のほうが強く、このとき私は「怒りの長崎」ではないか、と映像の向こうにあるものを推量した。
−−アメリカは一度ならず、なぜ二度も原爆を落としたのか。ウラン原爆とプルトニウム原爆を製造したので、どちらも使ってみたかった、そういうことではないのか。ならば、たとえ戦争とはいえ、このような行為が許されるのか。
そんな声が、頭のなかで響いた。やはり「怒りの長崎」なのだ、そう私は思った。
そして長崎は、今また怒っているに相違ない。90年に続き、長崎市長がまたも銃撃されたからだ。今回は選挙期間中の暴力で、伊藤一長市長は銃創による大量出血のため無念の死を遂げた。
これは民主主義と非暴力平和主義への挑戦である。許してはならないし、こうしたテロに屈してはならない。「怒りの長崎」を共有したい。(専門編集委員)
毎日新聞 2007年4月22日 0時03分
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