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怪文書で離島 座間味の“Dr.コトー”
2007/04/21
ある日離島診療所の医師に怪文書が届いた。結果、医師は辞意を表明、5月いっぱいで島を去ろうとしている。医師の名前は饒波保(のはたもつ)さん。沖縄県座間味島の診療所で唯一の医師をされている方だ。
3月15日(木)饒波さんの自宅に封書が届いた。その茶封筒には宛先が印字された朱で塗られた紙が貼られ、一見して不吉な印象を与える。中にはA4サイズの紙一枚、印字された内容はこうだ。
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(ここから文書の内容)
平成19年3月(忌)日
座間味村 ‘五ヶ字憤怒の会’
前略 日頃、座間味島内の村民の命を預かる医師としての貴殿のお働きに敬意を表します。さて、この頃座間味村の人々の口から漏れくる(記者注ママ)風評によりますと、村民に絶対的影響力がある饒波さんが現村長に反対する政治勢力のリーダーとなり、政治的活動をなさっているとのことであります。これが真実であれば極めて忌まわしい事態であり、又、診療所の公務員医師の堂々たる政治的活動は、村政上前代未聞の出来事であります。
村唯一の知識人としての行動とお考えならば、これこそ傲慢・不遜な行いであり、決して容認するわけにはまいりません。地方公務員である饒波さんが、「無責任な私憤」で法令に違反した政治的活動を行い、村政に介入しキングメーカーを妄想してはなりません。妄想の結果は悲劇的である事を知らねばなりません。かりに饒波さん自身が村長になられるご希望があれば、退職された上での政治的活動は大いに結構なことと思います。
この度の饒波さんに関わる風評は、一部の不見識・無責任な人々を野合・扇動し、いたずらに村民同士の対立を煽り村政を混乱の坩堝(るつぼ)と化し、結果として村長の「首」を取る計画であると断定されます。饒波さんにおかれては、ご自身のお立場に十分留意され、見識を疑われるような言動・行動を厳に(直ちに)慎まれるようご忠告致します。
尚、本書の写しを饒波さんの所属長を含む公的機関、及び座間味村内外の村関係者へも、送付する予定であることをご承知おき下さい。
(文書ここまで)
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まもなく村内の数箇所に同じ怪文書が送られていることが判明した。ショックを受け不快感を感じた饒波さんだが、それでも普段通り日々の医療に務めた。
4月10日饒波さんに沖縄県病院事業局からこの件について問い合わせの電話がかかってきた。怪文書が届いたのだ。病院事業局局長宛に届いたのは以下の内容の文書だった
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(ここから文書の内容)
平成19年3月19日
座間味村
有志
前略 別紙(記者注…前掲の怪文書)のとおり、貴局所属の座間味診療所の饒波保医師が、勤務地の座間味村において政争に加担し、人身の分裂を煽っている事実がみとめられますので、同人に対する人事上の処置を即時執られるよう要求します。
匿名による文書をお許しください
(文書ここまで)
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末尾には局長以下各役職担当者の確認印が押され、局内を回覧されたことが見て取れる。
数日後局の担当者が饒波さんのもとに面会に訪れた。饒波さんは事情を説明した上で辞意を伝えた。饒波さんによると、局担当者はあくまで事情を聴きに来たのであり、饒波さんの医療に対する思いを酌んでくれた上で「先生、守れなくてごめんなさい」といって悔やんでいたという。しかし饒波さんの辞意は固かった。
以下は饒波さんが眠れぬ夜を過ごし早朝書き上げ、島内に配り歩いた文書だ。
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(文書ここから)
この9年間、私は医療職と言う立場でありながら、村政に対し公的な場や個人的な場でいろいろな発言をし、苦情も申してまいりました。発言のなかには医療や福祉の問題以外にも、この地に住む一住民として、環境の問題、役場の不祥事、情報開示に関する意見など私の専門以外の事に関する注文もありました。しかし、ただの一度も自分の利益のための発言をしたことはありません。また、一時(いっとき)と、いえども公務員と言う立場を忘れたことはありません。
医療というのはとてもデリケートな職業です。医療側と患者の深い絆(きずな)がないとたとえ短期間でも成り立たないものです。この地に一つしかない診療所にたとえ少人数とは言え受診できない状況、受診しづらい状況を作ってしまったことは私の責任であり、私はそのことで非常に胸を痛めています。
また、私に対して「村長職を狙っている」と言ったり、「あれはアカだ」などと公言し、一言で片付けようとしている方がおり、それを聞いていてとがめない数名の方々がいることも知っています。また最近になって私に対する匿名の怪文書が私や村内の事業所のみならず県庁にも届けられるようになりました。匿名の文書であることに怒りを禁じ得ませんが、私はこの要求を甘んじて受けることにしました。
任期半ばにして職を辞することに非常な悔しさを感じますが、これ以上この職にとどまることは大きな失敗に繋がる可能性があります。以上のような心境ですので、私は平成19年5月末日をもって県立座間味診療所の医師としての職を辞することにいたしました。
平成19年4月 座間味診療所 饒波 保
(文書ここまで)
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昨年8月饒波さんが主催者の1人として関わり開催された「2006座間味村議会議員選挙公開討論会」を私は他媒体で取材させていただいた(注1)。その後も有志で立ち上げた座間味の諸問題と将来を話し合う「チャースガ座間味」(チャースガとは沖縄の言葉で“どうする?”というような意味)に参加し、座間味村に民主的な住民自治を根付かせようと活動される饒波さんに接した印象からして、このまま事が終わってしまうことはまったく腑に落ちない。
結論を先に述べるなら、今回の問題は饒波さん個人が診療所を辞める辞めないの問題ではなく、座間味村(民)全体の問題であると私は確信している。饒波さんが地元マスコミの取材に対して述べた「一身上の都合」という辞意理由の短い言葉の奥に隠された事の真相を探るべく、以降連載形式で徹底的に書くことにする。結果的にそれが離島の抱える様々な問題、民主主義とは何か、住民自治の困難と可能性などを浮き彫りにすることを期待しながら。
(注1)「南の島に新しい風」 http://www.ohmynews.co.jp/news/20070410/738
(西脇尚人) http://www.janjan.jp/bin/pro/pro_reference.php?id=366
◇
編集部注:
「Drコトー」とは、漫画「Dr.コトー診療所」を原作としたフジテレビの連続ドラマで知られる。主人公は五島健助(ごとう けんすけ)という医師で、わけあって、日本本土から船で6時間かかる離島で働くことになる。島で頼りにされつつも、様々な事件にも巻き込まれる。今回の記事ともオーバーラップする面がある。フジテレビのドラマでは、ロケ地として、日本の最西端に位置する与那国島(周囲約27.49kmの国境の島)が舞台として選ばれている。
饒波さんの自宅に届いた封書
http://www.janjan.jp/area/0704/0704204122/img/photo128261.jpg
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