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http://eunheui.cocolog-nifty.com/blog/2007/04/post_744f.html から転載。
2007.04.16
歴史の改ざんを許さない力の弱さ
ドイツの保守政治家による「歴史改竄発言」を拠り所に、私たち自身を取り巻く状況を考えてみる。
ドイツ最南部のBaden-Württemberg州で、1966年に Hans Karl Filbinger が知事に就任した。彼は第二次世界大戦のころ、ナチスの党員であり、海軍軍事裁判所の判事を勤めていた。この過去が1978年、Rolf Hochhuth という作家の Eine Liebe in Deutschland という作品で取り上げられ、巻き起こった論争の末、Filbinger は知事を辞職した。
Filbinger は今年の4月1日に93歳で死んだ。その追悼式の弔辞(州政府のサイトに掲載されているが、ドイツ語なので私には読めない)で現州知事の Günther Öttinger は「Filbinger はナチではなかった」「彼はナチスに反対だったが、意に反して裁判官にさせられた」「彼の出した判決によって命を落とした者はいない」などと述べた。
Öttinger 知事のこの発言に対し強い批判が起こっている。Filbinger が多くの死刑判決を出したことは歴史的な事実であり、サディスティックなナチであった彼のことをナチスの批判勢力であったように描くのは、あからさまで危険な歴史の塗り替えであり、ユダヤ人などの迫害生存者にとっては屈辱的である、として辞任を要求する声があがっている。知事と同じキリスト教民主同盟に属するメルケル首相も知事を批判した(Deutsche Welle の 13日付けの記事、14日付けの記事)。
知事は14日に州のサイトに弁明を掲載した。亡くなった人を讃えるのは伝統的なことだとし、「過酷なナチスの独裁を相対化しようとしているとの批判を受けたが、そのような意図はなく、誤解を受けたことを残念に思う」というものだ。AP電は、発言を取り消したり、謝罪するつもりはないらしいと伝えている。
問題発言をしたエッティンガー知事は1953年生まれ。日本の安倍首相より一歳ほど年上の「戦後生まれ」だ。一見、この二人の保守的な政治家のやっていることは似ているようにも思えるが、よく考えると、エッティンガー知事はナチスドイツの根本的な悪を認めた上で、一人の人間をそこから引きはがそうとしているのに対し、安倍首相をはじめとする自民党などの政治家たちは日本の戦争犯罪そのものを否定しようとしているわけで、この二つの行為や意図は必ずしも一括りにできるものではない。その違いは今までドイツと日本がどのように歴史と向き合ってきたかの違いを反映していると言えるだろう。さらに、彼らの発言が受けている批判の強弱も、今、私たちがどれだけ真剣に歴史を引き受けようとしているかを映し出しているに違いない。
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