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社説
米軍再編推進法・アメとムチの押し付けだ
米軍基地を押し付ける「アメとムチ法」ともやゆされる米軍再編推進特別措置法が、12日の衆院安全保障委員会で可決され、13日にも衆院通過の見通しとなった。
政府は、地元の頭越しで合意された「米軍再編」協議に対する不満や疑問にふたをした上で、懐柔策のアメと牽制(けんせい)策のムチを盛り込んだ「特措法」で、米軍再編計画を強行しようとしている。
米軍再編推進特措法は、米軍再編に関連する特定の防衛施設を指定し、当該市町村に「再編交付金」を支払うものだ。
交付金は、受け入れ表明や環境影響評価の実施、工事開始、基地運用開始による新たな負担発生などの各段階で、「出来高払い」方式で支給される。
言葉を変えると「基地受け入れに対する協力の度合い」に応じて、政府がさじ加減を調整できる。「自治体が政府の言いなりになることも招きかねず、自立を大きく損ねる危険性がある」(新崎盛暉沖縄大名誉教授)との批判が出るのもうなずける。
一方で、同法に賛成する声もある。「米軍再編協議は基地を抱える自治体の負担を大幅に減らし、日米同盟を強化発展させたことに大きな成果がある。法案を通すことによって成し遂げられる」(川上高司拓殖大教授)というものだ。
そもそも米軍再編協議は米軍の「抑止力の維持」と基地所在地の「負担の軽減」、とりわけ基地被害の重圧にあえぐ沖縄の負担軽減を政府は喧伝(けんでん)してきた。
だが結果は、米陸軍第一軍司令部のキャンプ座間移転、厚木基地の米空母艦載機の岩国移駐と夜間離着陸訓練の実施など、危険な米軍基地や訓練の国内分散。加えて飛行場や港湾など一般民間施設の緊急時の米軍使用、米海兵隊のグアム移転経費など新たな財政負担を国民に強いるものとなった。
普天間飛行場移設問題一つをとっても沖縄にとって負担軽減とは到底思えない。名護市東海岸への新基地建設は、豊かな海岸線と海を壊し、海洋生物にダメージを与え、さらに「欠陥機」と指摘される垂直離着陸機「オスプレイ」の配置で県民は生命財産を脅かす新たな危険も抱えることになる。
8000人の在沖米海兵隊員のグアム移駐での日本側負担は7000億円とみられる。移転経費の算定根拠や日本側負担の根拠は何か。納得のいく回答もないままに、根拠なき負担は、今回の米軍再編特措法で既成事実化される。
12日の衆院安保委での法案審議では、野党議員のやじや反対の声を押し切り委員長が採決を強行。騒然とした中での法案可決だ。
十分な論議を避ける理由は何か。一事が万事。日本の政治、議会と民主主義の質も問われている。
(4/13 9:46)
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