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http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20070410/122348/
中国側が好む表現に従えば、昨年10月の安倍晋三首相の北京訪問は「氷を砕いた」。日中関係は、安倍氏の前任者である小泉純一郎氏の挑発的な靖国神社参拝によって冷え切っていた。中国首相によるほぼ7年ぶりの訪日となる温家宝首相の東京、京都訪問(4月11〜13日)は、「氷を溶かす」ものになるだろう。双方に楽観論が広がっている。だが、アジアの2大国間の諸問題が水溜り程度のものに変わると期待するのは希望的観測だ。
今のところ、中国は温氏の訪日成功に全力を挙げる気でいる。例えば、いわゆる「慰安婦」問題。安倍氏は先月、日本帝国陸軍が第2次大戦中に韓国、中国その他の女性を強制売春させたことを否認して、自ら余計な騒動に巻き込まれる羽目になった。この発言は日本の強固な同盟国である米国の感情さえも害した。
しかし、いつもは歴史問題ですぐに憤慨する中国政府は、あえて騒ぎを無視した。実際、安倍氏が重視するもっと最近の拉致問題――1970年代から80年代にかけての北朝鮮による日本人拉致――について、温氏自身、日本の憂慮に共感を表明している。
靖国神社に関しては、安倍氏はかねて小泉氏よりも献身的な参拝者だったが、中国側は安倍氏から首相在任中は参拝しないとの了解を得ていると信じている。ある中国政府関係者曰く、その後のことは、彼が靖国に行こうがそこに住もうが中国の知ったことではない。
もし、この最低限の要求、つまり日本の首相が靖国参拝しない、あるいは少なくとも公式参拝しないという要求が満たされれば、中国政府は新たな「戦略的パートナーシップ」を築く用意があるようだ。日本もそれに応じる見込みで、驚くほど短期間に広範な議題が持ち上がっている。経済、環境分野での協力、ガス・石油が大量に埋蔵されている可能性によって事が複雑化している東シナ海の領土紛争の緩和措置、そして両国軍の間の信頼醸成措置さえ浮上している。
温氏の訪日で、経済協力に関する新たな閣僚協議の定期開催が正式に決まる。さらに日本企業は、北京 −上海、北京−武漢、そして(かつて帝国日本が鉄道を支配した満州の)大連−ハルビン間で計画中の高速鉄道建設の一部や原子力発電所建設プロジェクトに入札する機会を与えられる。エネルギー効率改善を含む様々な環境プロジェクトについても、日本の投資とノウハウが求められることになるだろう。
東シナ海の紛争は一触即発の危険性を秘めている。ガス・石油の埋蔵層は、日本が互いの経済水域の境界だと主張する両国間の中間線にまたがっている。中国は境界線を認めず、線をまたぐガス田からの採掘を既に始めている。一見すると紛争解決は進展が遅く、先に東京で2国間交渉の第7ラウンドが終わったところだ。それでも交渉当事者たちは、重要な分野で了解が得られたと言う。
特に大きいのは、解決策は厄介な領有権への固執ではなく、問題のガス田の共同開発に見いだせるという考え方を中国側が受け入れたことだ。協議は今、どの部分を開発すべきかが争点になっている。一方、中国当局者によれば、中国船舶は問題の境界線を越えることを注意深く避けている。さらに、船舶の混雑が増す洋上での捜索・救難活動を調整するため、日本の海上保安庁と中国国家海洋局との間に緊急通話用ホットラインを設ける話も浮上している。
厄介な記念日が続く
軍事面の関係も好転しつつあるようだ。海上での衝突事故がエスカレートするのを防ぐ意味もあって、両国海軍の間にも同様のホットラインが設けられそうだ。国防担当大臣は相互訪問を計画している。
中国の公式報道も新たな友好関係を反映している。週刊誌「南風窓」は4月1 日、隣国との領土紛争を考えれば、日本が中国の軍備増強を懸念するのは「当然だ」と報じた。日本軍国主義の復活という普段の主張からは様変わりである。今では、年内に中国海軍が日本を公式訪問する話まで出ている。実現すれば、(つい最近までは想像もできなかったことだが)東京湾に五星紅旗が翻ることになる。
温氏は異例の栄誉として日本の国会に招かれ、演説する。温氏は演説で、中国は台頭しつつあるが、平和的な台頭であると提唱し、日本も繁栄を共有するよう呼びかける予定だ。政治家や天皇との会談に加え、温氏は学生、農民との対話を希望している。彼はまた、創価学会――800万世帯を擁する日本最大の仏教組織――指導者との会談も予定している。
ある中国外交官によれば、温首相のアピール攻勢は、中国が日本に対して「新思考」を持っていることを示すのが狙いだ。中国側の姿勢が国連安保理常任理事国入りを目指す日本の努力を支持するところまで発展することはないだろう。だが、国連安保理改革には数々障害があるため、この程度のことは見過ごされるに違いない。
日本との関係改善を図る中国の取り組みは、国内での政治的リスクをはらんでいる。1つには、中国を迎え入れた安倍氏が、夏の参議院選挙を勝ち抜く必要がある。そのうえ今後数カ月は、戦時日本による中国侵略行為に関連した微妙な記念日が相次ぐ。どの記念日で、2005年に手に負えないデモに発展した反日感情が再燃しても不思議ではない。
中国の国営報道機関は、今年は日本との国交「正常化」の35周年記念として祝賀されるべきだと強調している。だが一般市民はむしろ、7月7日が日本の対中全面侵略開始の70周年であり、12月13日が日本が中国で犯した最悪の残虐行為、南京虐殺の70周年であることに目を向けるだろう。
先月、中国の国会(全国人民代表大会)のある顧問は、9月18日を「国家受難の日」とすることを提案した。日本の満州占領が1931年のその日に始まったためだ。今、氷山は溶けつつあるが、歴史問題がまだ氷山の水面下の大きな塊を形作っているのである。
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