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原田武夫 「故・後藤田正晴氏の「遺訓」から考える温家宝・中国首相の訪日」
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投稿者 新世紀人 日時 2007 年 4 月 10 日 11:53:45: uj2zhYZWUUp16
 

http://blog.goo.ne.jp/shiome/

故・後藤田正晴氏の「遺訓」から考える温家宝・中国首相の訪日

「近交遠攻」を基本戦略とした中曽根外交

今週の11日から13日まで、中華自民共和国より温家宝首相が来日する(3月27日付外務省発表プレスリリースはこちら)。これを控え、日本のメディア勢は一斉に仕込みを始めたようだ。古巣・外務省を離れ、東京・国立市という、言ってみれば「後衛の位置から」(丸山眞男)世界情勢を見据える私の研究所にも、ぱらぱらと取材依頼が舞い込んできている。

そのような折、どうしても気になって手にした本がある。「国と国民を思い続けた官房長官 後藤田正晴の遺訓」(津守滋著 ランダムハウス講談社)だ。津守滋氏は1939年生まれ、外務省のキャリア官僚として活躍され、現在は東洋英和大学で教鞭をとっておられる方である。故・後藤田正晴氏が中曽根内閣において官房長官をつとめていた時代、外務省から内閣官房に出向し、総理官邸において官房長官秘書官をつとめた経験を持たれている。その時も含め、故・後藤田正晴氏から聞き、また同氏が遺した各種の記事・記録を読み解く中で、同氏が一体何をこの国=日本で成し遂げたかったのかを追究したのが、この本である。

今となってはやや違和感すら感じるが、「ロン・ヤス関係」で名を残す中曽根康弘総理が、第一次内閣を組織し、最初に取り組んだ外交課題は、米国ではなく、韓国であった。このあたりの事情を、津守氏はこの本の中で次のように描いている。

「韓国との関係は、前任の鈴木善幸内閣では、第一次教科書問題や経済協力問題で冷え切っていた。中曽根はこの問題を処理するにあたって、・・・(中略)・・・「近交遠攻」という言葉をよく使った。つまり最も重要な目的である米国との話し合いの前に、まず近隣の韓国との関係を調整しておき、ワシントンでのレーガン大統領との会談に備えて、交渉ポジションを固めておくとの戦法である」

そして1983年1月11日から12日まで、中曽根康弘総理(当時)は最初の総理外遊としての韓国訪問を実施する。その際、日本側は40億ドルの対韓経済協力を表明し、「歴史問題」などでいきりたつ韓国側を押さえ込むこととしたのである。

ちなみに、この総理訪韓にあたってパイプ役となったのが、元・関東軍参謀であり、戦後は伊藤忠を舞台に財界の大立者となった瀬島龍三氏である。後藤田氏はその後、瀬島氏が外務省とは別ルートで話を進めていたとの見解が流布されたことを躍起になって打ち消したというが(津守・前掲書)、北朝鮮を巡る外交について、肌感覚として「官邸外交」を経験したことのある私としては、このあたりの経緯にむしろ妙に「納得」させられてしまうことを告白しておきたい。いずれにせよ、瀬島氏を介して中曽根総理は当時の全斗煥・韓国大統領と「個人的信頼関係」を構築することに成功するのだ。

そして中曽根氏は、返す刀で1983年1月17日、訪米する。その際の日米間の懸案について、再び津守氏の前掲書を振り返ってみる。

「鈴木内閣時代の積み残し案件の中で、組閣後訪米前の短期間に取り組んだ問題が、対米武器技術供与と、タバコ、ビスケット・チョコレートの市場開放である。前者については、81年6月大村襄治防衛庁長官が訪米した際に、ワインバーガー国防長官からの要請を受け、『前向きに検討する』と答えている。外交用語では、これは『イエス』とほぼ同義である」

その頃の日本が「お菓子」の貿易問題で米国と争っていたというのは何とも隔世の感があるが、それはさておき、この難関を後藤田翁が果たしてどのように乗り切ったのかが問題となる。
武器技術の日本国内からの流出を阻んでいたのは、「武器輸出三原則」であり、これを守ろうとしていたのが法の番人・内閣法制局と通商の番人・通商産業省(当時)であった。両者の抵抗は激しかったが、後藤田は「これは政策変更だ」と最後は押し切ったのだという。そして、中曽根訪米の直前である1983年1月14日、後藤田氏の名前で次の一項目が入った官房長官談話が発表された(津守・前掲書)。

「米国に武器技術を供与するに当たっては、武器輸出三原則によらないことにする。この供与は、日米相互防衛援助協定の枠組みの下で実施し、これにより国際紛争等を助長することを回避するという武器輸出三原則によって立つ平和国家としての基本理念は確保されることになる」

つまり、「平和国家というのは分かるが、日米安保に則って行うのだから、特段問題は無いのだ」というわけである。
他方、貿易摩擦問題についてはどうなのかというと、「官邸の官房長官室には、加藤紘一、羽田孜らの農業関係の議員がひっきりなしに押しかけ、長官をあの手この手で翻意させようとするが、長官も、日米関係が抜き差しならぬところまできていること、中曽根訪米を成功させなければならないことを、繰り返し強調し譲らな」かったのだという(津守・前掲書)。そして、この中曽根訪米後、現在の「対日年次改革要望書」に至る米国からの要求とそれに追われる日本という構図が作り上げられることになる(その後の経緯については、拙著「騙すアメリカ 騙される日本」(ちくま新書)を参照)。

ちなみにこの本の巻末にある国正竹重の文章によれば、後藤田は1999年に次にような発言をしていたのだという。

「日本がアメリカ一辺倒ばかりでやっていると、気がついてみたときには中国中心のアジアが米国と手を結んでいたということになりかねない。アメリカ資本主義からみると、米国はアジアと手を結ばざるを得ない。そのときに、ふだんから日本はアジアに橋を架けておかないと、だめになるよ。日本は外に放り出されるよ。」

これが、中曽根外交の屋台骨を支えた故・後藤田正晴氏の「遺訓」としての、「近交遠攻」の極意に他ならない。


「歴史は二度繰り返す」―――「喜劇」としての安倍外交

さて、時代は移って現代。後藤田が「ワシは晋三が岸信介になるのを心配しとるんじゃ。君ら晋三をおだてたらアカンよ」といっていたという(津守・前掲書)安倍晋三氏が総理大臣をつとめる日本である。

安倍総理は、就任早々の2006年10月8日に訪中し、日中首脳会談を行うと共に、「日中共同プレス発表」を公表した。それまでの日中関係について、公式文書上は「友好関係」という定義づけがなされてきたが、この発表において「共通の戦略的利益に立脚した互恵関係の構築」がその目標であると再定義されたのである。問題はここでいう「戦略的互恵関係とは何か」である。―――これを読み解くことが、今回、温家宝首相は一体何をしにくるのかを考える鍵となる。

この関連で気になるのが4月4日付東京新聞に掲載された「「相互尊重」で合意へ 温首相来日受け共同文書」と題する記事にある、次の一節だ。

「日本、中国両政府は、安倍晋三首相と温家宝首相が11日に行う首脳会談で、両国が先に合意した「戦略的互恵関係」について、体制や価値観の違いを越えた「相互尊重」の関係と位置付ける共同文書を発表する方向で最終調整に入った。環境問題や省エネ分野での協力強化なども打ち出す。複数の日中関係筋が4日、明らかにした。」

ちなみに、こういった何気ない新聞記事は、実際にその内容が「事実」として生じる際に、アドバルーンとしてあげられることも多い。外務省で中国を担当する関連部局の中堅幹部は、東京新聞とかねてから昵懇の関係にある。そのことを織り込んで読むと、この小さな記事が燦然と輝いて見えてくる。

日本側は、東シナ海のガス田問題について、この共同文書での明示的な言及を求め、中国側は歴史問題や従軍慰安婦問題で「攻勢」を崩さないとも伝えられている。しかし、これらはいずれも、「体制や価値観の違いを超えた相互尊重」という中国側が求めているであろう一札に比べれば、瑣末な問題に過ぎない。なぜなら、何か問題があっても、中国側はこの文書に立ち返り、「ウチは共産主義。体制が違うから仕方が無い」と逃げ切ることができるからだ。正にオールマイティー・カード、「切り札」である。

さらにこの観点から見ると、マーケットについて中国は日本を巧みに誘い込む仕掛けを早くも作り上げていることに気付く。今回の温家宝首相の訪日を控え、北京において昨年12月19日から20日に「日中経済パートナーシップ協議・第5回会合」が開催された。
ちおなみに日本側の代表は、藪中三十二(やぶなか・みとじ)外務審議官。1989年6月からはじまった「日米構造協議」の立ち上げの際、「構造障壁に関するイニシアティブ」という米側提案の会合名を「協議」と言い換え、国内的に粉飾・偽装する知恵を出した張本人である。最近では、ゴールドマン・サックスなど米系投資銀行筋からしきりにアプローチを受けているとも聞く人物だ。

この中国側との協議において日本側は、主な議題として10項目もの対中要求項目を列挙したのだという。とりわけ、「協議の効率化」と称し、双方の要望や回答を文書化し交換するシステムの設置を提案するあたりなど、米国が日本に仕込んできた仕組みを「学習」した効果すら感じてしまうほどだ。これに対し、中国側が提示した主な議題は6項目のみで、数だけを見ると、日本側が勝っているようにも見える。

しかし、本当にそう楽観視できるのか?−−−「中小企業協力」「日本における経営環境」といった単語を見て、ピンと来る読者は必ずや個人投資家としても優れた方だろう。これから5月1日より三角合併が解禁となる日本のマーケットにおいて、もっとも米国のみならず、アジア系の外資からも狙われているのは、優れた技術力を持ちながら事業承継者が往々にいなかったりする日本の中小企業である。彼らへの買収工作を「協力」として行い、かつ、それを阻害する日本の各種制度・慣行を「経営環境」の改善という名目で追い払おうとする中国側の意図は、見えてこないだろうか。
もちろん、この5月から日本の至るところで「買収騒動」が生じれば、「中国、何するものぞ」という反論が日本中で巻き上がるであろう。中国の政財界への働きかけも強くなるに違いない。だが、彼らは「共産体制」を理由に動かない。そのかわりに、澄ました顔でいうのだ。

「戦略的互恵関係、すなわち、体制を越えた相互尊重ですから」

「自分の姿勢は一切正さず、相手から奪うだけ奪う」−−−まさに「帝国」の手法である。
もっとも、外務省の肩を持つならば、「戦略的互恵」の対象とは、何よりも共通の「脅威」である北朝鮮を巡る問題だということになろう。だからこそ、中国とは「大同団結」の精神で臨むのが、国民の生命を守る政府の立場からすれば、最終的には正しいのだというのが、外務省、さらには日本政府全体のトーンである。

しかし、これもまた本当にそうなのか。昨日になって驚くべき報道が共同通信から飛び込んできた。要するに、中国のみならず、米国までもが、「日本は拉致、拉致と騒ぐが、それならば、北朝鮮が一体何をすれば『拉致問題の進展』といえるのか、明確に定義せよ」というのである。

これはあまりにも難題だ。かつて日本政府部内では、「拉致問題の解決は、拉致被害者家族の納得のいく形で行われるべし」との合意がもたれたことがあり、その後も国会審議における政府側答弁はこれで一貫している(たとえば2003年11月14日参議院外交防衛委員会における川口順子外務大臣(当時)答弁)。しかし、「進展」について定義したことは全くない。しかも、この「進展」は同時に、前回の六カ国協議の結果、日本から北朝鮮への支援供与の条件となっているから重大だ。この報道が事実であれば、米中は日本に無理難題を押し付けるべく挟撃していることになる。

それでは一方当事者である米国はについてはどうかというと、3月25日付のこのコラムでも記したとおり、4月26日より、安倍晋三総理がおくればせながら訪米する。
それに先立って、日米関係は安泰かというと全くその逆だ。「就任早々、なぜアベはワシントンにこなかったのか」と米側が不快感を表明する中、「従軍慰安婦問題」「牛肉問題」、はては「北朝鮮問題」まで不協和音が出始めた。そうした状況を見て、冒頭に記した中曽根総理(当時)による最初の訪米の際の状況を思い起こすのは私だけだろうか。

ちなみに、どういうわけかここにきて急激に騒ぎになり始めたのが、自衛隊員による機密漏えいだ。その騒ぎの中、総理訪米と相前後して行われる閣僚レベルの日米安全保障委員会(2+2)では、軍事情報一般保全協定(GSOMIA)の締結が確認されることが明らかになりつつある(関連の日経新聞報道はこちら)。
GSOMIAにより、装備品だけでなく技術情報や作戦情報、訓練情報に関する文書や画像も含め、両国政府と民間企業の全体に秘密を守る義務が課せられる。「海自隊員による機密漏えい事件」からすれば、米国からきついお仕置きがあっても、ひたすら謝らねばならない立場にあるといえるだろう。


政治家たちが今、本当に考えなければならないこと

先日、野党第一党の中で密かな実力者の一人である領袖が主催する会食に呼ばれ、出席してきた。もっとも、この手の会合にありがちな密談のためなどでは全くない。人を介し、たまさか初めて正式にお会いした後、お送りした拙著「劇場政治を超えて」(ちくま新書。ちなみに絶版ではないが、アマゾンでは「品切れ」扱い)に同じく法律家として感銘を受けられたそうで、それ以来、お付き合いさせていただいているだけだ。

私は、例によって世界情勢について「放談」した。すると、陪席していた中堅議員の方がぼそっと一言漏らされた。

「あんたの言っていることを踏まえると、これまで我々日本人が学んできた歴史って一体何だったのかということになるね。ましてや、現代日本の中で進んできた政治や経済は、その背後にある金融マーケットの壮大な仕掛け抜きに理解できないのではないのだろうか。日本の国会議員とはその中で、一体何なのか・・・」

私が行っている一連の活動の目的は、「反米論」を説いたり、その延長線上で「陰謀論」を語り、立法府の住人の方々を萎えさせることではないから、その日はその辺でお話をやめておいた。しかし、国会議員の方々には、以上で述べてきた「現下の情勢」を的確に読み解き、そこにあるマネジャー国家たる米国、そしてそれを手伝うサブ・マネジャー国家たる中国の意図と行動に先んじた方向へと、この国=日本を導いていただかなくては困る。

米中双方の最大の関心は、世界的に見て最も割安な水準にある金融商品としての日本株、そしてその「母体」である日本企業なのだ。それをいかにして日本人に気付かれず、しかしありったけの分量を安値で買い付けるかにしか、彼らの関心はない。外交、軍事と分野は代わり、専門用語は変われども、この一点の目標に向かってだけ物事が動いていることを知り、ぶれさえしなければ、間違えることはないのだ。

GSOMIAによって覆いかぶされた後、実は米国の最新鋭兵器に必須な部品をつくっている日本の中小企業たちを巡る買収劇は、「防衛秘密」として表のマーケットからは一切隠されることになるだろう。「集団的自衛権の見直し」を突然語り始めた安倍総理の下、自衛隊が展開すればするほど、兵器の需要は国内で高まる。しかも、イージス艦以下、「米国標準化」された兵器がそこで大量に買い付けられるはずであり、本来であれば、その部品を提供している日本の中小企業へと「利益還元」がなされるはずであろうが、買収されて米系外資になってしまえば、もはやそのシステムすらない。NYマーケットで最大の資金供給者の一人である華僑・華人勢力の支える中国が、米国と密かにダンスを踊る中、「架空の緊張」を見せ付けられた日本は、ひたすら米系防衛ファンドへとファイナンスを続けることになるのである。

今問われているのは、金融資本主義化した世界を、アクチュアルな情報と確固たるスキームで読み解く能力である。

今は亡き後藤田翁が、「近交遠交」の次に見た世界を目指して行動すること。

それが、個人投資家であり、「新しい中間層」として未来の日本を担うことを
課せられた日本人にとって、唯一絶対の目標である。

2007年4月8日

原田武夫記

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