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各社の世論調査で安倍内閣の支持率が上がった。その上昇率は違っているが、それはこういうものをみる場合あまり重要ではないのだ。各社の世論調査が同じように上昇していることが重要なのである。なぜこのような傾向が現れたのか、世論調査に関心がある者はいま考えさせられている。私もその一人である。
2ヶ月くらい前、支持率低下に悩む安倍首相周辺では、開き直って安倍カラーを出そうと決めたようである。確かに安倍首相はこの2ヶ月間に安倍カラーを出してきた。柳沢厚生労働大臣の“女性は子を産む機械”発言にも結局はお構いなしだった。松岡農水大臣の光熱水費問題でも大きな非難があっても守ってきた。憲法改正の国民投票法案も衆議院で押し切った。最近の集会で憲法改正を自分の任期中に実現するといい、集団自衛権の行使を一定の条件で認めるために有識者懇談会を発足させた。いうならば急激に右カーブを切っている。これまでも急激な右カーブを切った内閣もあったが、その度に国民の強い反発をかって軌道の修正を余儀なくされてきたものであったが……。
私はわが国の国民の政治意識や価値観がそんなに右カーブしているとは思っていない。その点ではそんなに悲観していないのであるが、最近では政治的価値観だけでなく政治的センスやスタイルも重視されるようになったのではないかと考えているのだ。これは小泉首相登場以来、わが国における政治のひとつの傾向である。それが良いとか悪いとかいってもはじまらない。そういう傾向がある以上、自公合体政権に対峙する勢力はこのことを頭において有効な対抗策を立てなければならないのである。俗ないい方かもしれないが、劇場型政治というかヴィジブルな政治スタイルが、戦術として重視されなければならなくなってきたのである。野党陣営もそれを重視しなければならないということである。それはそんなに難しいことではないし、また自らを卑しめることでもない。
安倍内閣がやっていることが良いというのではないが、野党陣営のやっていることが国民からみると要するに“ダサい”のである。その典型が東京都知事選であった。石原都知事の3選出馬はかなり前に表明されていたのであるから、いくらなんでもあの戦いぶりはないだろうというのが一般国民の素直な感じである。要するに石原的なものと断固として戦うという意志というか気迫を感じることができなかったのである。それは一地方の問題ではなく、全国的にそう受け止められたのだ。酷のようだがこの際いっておきたい。浅野氏は結果として、民主党を中心とする野党統一候補となったのである。選挙後もこれまでと同じようにテレビなどに露出しているが、はたして如何なものだろうか。これなども“ダサい”と国民の目には映るのである。
国民の政治意識や価値観は、安倍首相が考えるほど甘くはない。野党はこのことに自信をもって野党としての対抗軸を提示すべきである。それも各党バラバラではなく、ある程度すりあわせた方がいい。選挙のときだけ野党共闘と叫んでみてもダメなのではないか。それから自民党と公明党との政策的矛盾を突くべきである。政党討論会などで公明党は野党の政策に理解を示すようなことを盛んにいっているが、与党として出てくる結論はいつも自民党の主張である。これは一種のまやかし・詐術である。こんなことは許してはならない。これこそが自公合体政権の最大の矛盾であるからだ。
野党側が2007年春の統一地方選を通じて最大の教訓とすべきは、“野党にとっての最大の敵は公明党・創価学会であり、とくに公明党・創価学会との対決姿勢を強め、学会批判を強めなければ7・22決戦には勝てない”ということである。野党側はこのことを肝に銘じ、「選挙宗教団体・創価学会」への警戒心を高め、批判・攻撃を強めるべきである。今日の日本の政治は、自公連立政権という形をとって、創価学会に支配されている。創価学会支配との戦いを強化しなければならない。――『森田実の時代を斬る』2007・4・23(その1)からの引用である。
森田実氏は、野党を温かく理解する数少ない政治評論家である。その森田氏が“最大の教訓とすべき”といっているのだ。野党各党は耳を傾けなければならない。しかし、いまのところそのような気配は感じられない。私はこの問題に長い間携わっているが、公明党と戦うということは正直にいって“キツい”のである。“キツい”からといってこの点を曖昧にしたり避けたのでは、自公合体政権に勝つことなど到底できない。自公は連立しているのではなく、すでに“合体”しているのである。自民党と戦うというのが本気であるならば、公明党と戦うことを避けることなどできないのである。いろいろと理由を付けてもそれはしょせん屁理屈に過ぎないのである。厳しいようだが、それは事実である。
それでは、また明日。
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