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2007年04月02日
イラク副大統領発言の豹変の裏側
少し前のことになるが気にかかっていた事があるので遅ればせながら指摘してみる。
今から一週間ほど前に外務省が多数のイラク人を日本に招待し、イラク安定のために日本政府が貢献している事をアピールしたことがあった。何かあるとすぐに東京に招待し、セミナーや国際会議を主催して「外交」をやっている振りをする。これは金にまかせて外務省が行うもっとも安易な「まがいもの外交」であるが、それを批判するのがこのブログの目的ではない。
招待客の一人として訪日したタリク・ハシミというイラクの副大統領の一人が、3月23日毎日新聞の単独インタビューに応じた。その内容が24日の毎日新聞に報道された。その記事は、「米軍、来秋までに撤退を」と言う見出しで、彼の発言を次のように紹介していた。
「(駐留米軍の撤退について)個人的には1年か1年半でイラク治安部隊の再編成、訓練が完了すると思う。その後は(米軍主導の)多国籍軍は必要ない」
実は私はこのニュースを新幹線のなかで流れるテロップで読んだ。そして「これは米国やそれに追随する日本にとっては都合の悪い発言だなあ。わざわざ日本に招待しておいてこんな事を日本で発言されてはたまらないだろうな。米国にも起こらやしないか」と思って読んだ。
ところが翌日の新聞各紙は、24日に行われた日本人記者クラブでの記者会見で、ハシミ副大統領が次のように発言したと一斉に報じた。
「・・・(米英など多国籍軍の撤退時期に関し)今の段階で一年先か二年先か分からない。治安の空白をつくってはならず、イラク軍立て直しが先決」と述べ、米国で強まる早期撤退論に釘をさした・・・
わずか一日で180度違う発言をしたハシミ副大統領に何が起こったのか。毎日新聞の単独インタビュー記事が誤報であったのか。それともハシミ副大統領の頭がイラク情勢そのもののように混乱しているのか。
私はこう推測している。毎日新聞のインタビュー記事を読んだ外務省が慌ててハシミ副大統領に連絡をして発言の軌道修正を求めるように圧力をかけたに違いないと。おりから日本政府はイラク特措法の2年延長を決定しようとしていた矢先であった。米国においても上下議院の早期撤退決議の動きに対してブッシュ大統領は拒否権も辞さずとして米軍駐留の長期化の構えを見せている。そのブッシュ大統領を後ろから撃つようような真似を日本がしたら大変だ。ブッシュ大統領から怒鳴られる。だからなんとしてでも多国籍軍の長期駐留の必要性をハシミ副大統領に言わせなければならない、そう考えて外務省がハシミ副大統領に慌てて伝えたのに違いない。
おりからクルド自治政府閣僚のディルシャド・ミラン氏は3月29日の朝日新聞紙上で次のようにイラクの現状を述べている。
「・・・三年前なら可能だったが、敵意と相互不信はすでに、解決から程遠い水準に達している」、「唯一の道は連邦制だ。いまやシーア派はスンニ地区に住めないし、スンニ派はシーア派地区に入れない。つまり連邦制への過程はすでに非公式に始まっている。これが現実だ」、「宗派抗争の本質はどちらが首都を奪還するかの戦いだ」、「連邦制での中央政府の役割は、各自治政府間の調整と外交などに限定される。トルコがイラクのクルド地区に介入したら、中央政府が防衛の義務を負う。クルドにとって独立より、連邦制でイラクの枠内にいた方が政治的利益は大きい」、「多数派となるシーア派の主力も連邦制推進の立場だ。一方スンニ派に選択権はない。抵抗したら完全な敗者となるだけだ」
凡庸な百人の日本の専門家の分析よりも、おそらくこれが現実のイラク情勢である。このようなイラク情勢を前にして、日本がとるべき貢献策など皆無だ。ましてや自衛隊をバクダッドへ派遣し続けることが国際貢献だなどといっているのは、現実を無視したブッシュ政権追従以外の何物でもない。しかもそのブッシュ政権の対イラク政策そのものが完全に行き詰まっているというのに。
http://www.amakiblog.com/archives/2007/04/02/#000323
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