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□世論誘導プロジェクト [国会TV]
http://seiji.yahoo.co.jp/column/article/detail/20070327-01-0601.html
2007年3月27日
世論誘導プロジェクト
1月29日、最高裁判所主催の「裁判員全国フォーラム」で、産経新聞大阪本社と千葉日報社が金を払って参加者を動員していたことが明らかになった。新聞社はフォーラムの共催団体で、一人あたり3千円から5千円で人材派遣会社などに参加者動員を依頼していた。記者会見した新聞社幹部は、空席を作らないために独自の判断で行ったもので、費用もフォーラムの事業費ではなく新聞社の経費から支出し、質問のやらせはないとしながら、報道機関としては「あるまじき行為だった」と謝罪した。
このニュースですぐ思い出したのは小泉内閣時代に行われたタウンミーティングのやらせ問題である。
小泉内閣は「国民との対話」と称して、政権のスタート当初から教育改革や司法改革などをテーマにタウンミーティングを行ってきたが、参加者を動員し、発言者を事前に用意して、一部には5千円の謝礼金を支払っていた事実が、昨年の臨時国会での教育基本法案の審議過程で明らかになった。
タウンミーティングの運営を請け負ったのは広告代理店「電通」、それに朝日新聞の子会社である「朝日広告社」で、1回のタウンミーティングに1千万円から2千万円という多額の費用が使われていた。国民の声を吸い上げる目的のタウンミーテイングで、国民の税金を使って政府の意向を代弁する人間が雇われ、それが普通の国民の顔をして発言していた。
そのときメディアは「決して許されない行為」、「あきれかえる税金の無駄遣い」、「国民軽視もはなはだしい」などと政府を批判していたが、その裏側で新聞社も似たようなことをやっていたのである。なぜ新聞社は自腹を切ってまでフォーラムの参加者を動員しなければならなかったのか。
「週刊現代」2月24日号にジャーナリストの魚住昭氏が寄稿した記事がその疑問を解き明かしてくれる。魚住氏は元共同通信記者だが、古巣の共同通信と電通が組んで巨額の政府広報予算を地方紙に流すための組織「全国地方新聞社連合会」が1999年に設立され、8年前から電通、霞が関、共同通信、全国の地方紙が一体となった世論誘導プロジェクトが作動していたというのである。
政府が世論形成を行いたい場合にシンポジウムなどの開催が決まると、共催者となった新聞社は、まず紙面に開催告知の「社告」を掲載する。次に「予告公告」を2度有料で掲載する。次に開催を伝える社会面用の記事を載せる。そして紙面の3分の2を使っての特集記事と3分の1を使っての広告を掲載する。特集記事は広告でありながら一般の記事の体裁をとる。政府公報であることが分かると世論形成に効果がなくなるためである。
こうして2005年度に裁判員制度導入のための広報で地方紙に使われた税金は3億数千万円にのぼる。裁判員制度フォーラムが1回開かれると新聞社には8百万円近い金が入る。1人5千円の金を払って動員しても十分に儲かる仕組みになっているのである。これは裁判員制度の広報の例だが、各省庁の広報でも同様のことが行われている。産経大阪本社と千葉日報に続いて河北新報社や西日本新聞社も同じような動員の事実を認めて謝罪した。
テレビやインターネットに押されて広告収入が激減している新聞社が政府広報予算に飛びつくのは分からなくもない。しかし金を払って「サクラ」を動員しながら、「会場には多数の市民が参加した」とか「聴衆は真剣に耳を傾けていた」とかの記事を書いたとしたら、これは読者を欺くねつ造である。また政府から広告費を受け取って掲載している特集記事を広告と明示しないのは、偽装によって政府の世論誘導に加担する行為である。今回の問題はそうしたことが8年前から継続して行われていたことを明らかにした。
権力が世論を都合の良い方向に導こうとするのは不思議ではない。しかしメディアが横並びで権力に協力し、しかも偽装や記事のねつ造まで行うというのはあってはならない話で、独裁国家のメディアと変わらない。いや独裁国家の国民は初めからメディアを権力の道具と見ているが、我が国のメディアはジャーナリズムの顔をしているからこちらの方が罪は重い。
こうした世論誘導プロジェクトのスタートが8年前というのが気になる。その前年に自民党は「報道モニター制度」をスタートさせた。テレビ・ラジオ・新聞の内容をチェックして、自民党にとって問題と思われる内容にクレームをつける仕組みである。こちらは世論誘導ではないが、メディアに報道内容を自主規制させる効果を持つ。それと政府広報の世論誘導プロジェクトがほぼ同時期にスタートしていた。
自民党がメディア対策に力を入れ始めたのは、93年の総選挙で野党に転じた事による。自民党はこの選挙で初めて過半数を割り込んだ。しかし数を減らしたのは小沢一郎、羽田孜氏らが自民党を割って出たためで選挙のせいではない。選挙に負けたのは社会党でこちらは議席が半減した。旧ソ連の消滅が選挙に大きく影響したのである。
過半数を割り込んだと言っても自民党は第一党で、他の野党と連立を組めば政権は維持できたのだが、小沢一郎氏の政治力がそれを上回った。いち早く8党派をまとめあげて細川政権を誕生させた。
ところがテレビ朝日の報道局長が「我々は非自民政権が生まれるように報道した。細川政権を生みだしたのはテレビだ」と豪語した。野党に転じた自民党がこれに過敏に反応する。報道局長は国会に証人喚問され、テレビ朝日はすぐに自民党に頭を下げた。報道機関の見識ではなく所詮は視聴率のために反自民を売り物にしただけだった。しかしこの時から自民党はテレビをどう利用するか、メディア・コントロールを強く意識するようになる。メディアは自ら墓穴を掘ったのである。
ところでこの最高裁判所の広報予算の問題を国会で追究しているのは社民党の保坂展人衆議院議員である。保坂議員は3月5日国会TVに出演してこう語った。
「最高裁は日本の司法の最高位の組織である。ところが裁判員制度を国民に理解させるため10億円を越える広報予算を手にしたところからおかしな事が起こり始めた。広報を請け負ったのは電通だが、選ばれる過程に談合まがいの不明朗さがあり、契約の仕方にも疑問がある。しかも予算は全額消化されておらず、3億円が行方不明になっている。やっているのが裁判官なので問題は深刻だ。これは日本の民主主義に関わる重大問題。情報をすべて開示してもらわなければならない。さらに税金を使った世論誘導が許されるのか、政府広報のあり方についても真剣に議論すべきだ」。
全くその通りでこの国の根本に関わる重大問題なのだが、メディアはこの問題をほとんど報道していない。追究している国会議員も保坂議員だけだ。そして最高裁判所の広報予算が組み込まれた平成19年度予算案はすでに成立してしまった。
今、松岡農林水産大臣の「水」の問題で、メディアも議員も大騒ぎしている。国民受けする問題だから騒いでいるのだろう。しかし忘れてならないのは国民受けする低俗な問題を騒げば騒ぐほど、実は国家の基本に関わる重大問題を国民の目からそらす事が出来るという事だ。権力はいつもそうした手法で生き延びてきた。
権力が世論を誘導しようとするのは古今東西変わらない。真理と言っても良い。一方で監視をしなければ権力は必ず腐敗する。それも不変の真理である。だからメディアと政治家が存在している。しかし「世論誘導プロジェクト」について誰も騒いでいないのはどうしたことなのか、そこにこの国の問題がある。
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