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http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/kaneko/news/20070405dde012070034000c.html
カナダのハーパー首相は、激しい中国批判で有名だ。そのために昨年11月、胡錦濤国家主席との首脳会談も流れた。なにが気に入らないのか。中国の人権抑圧である。「カナダの価値観である民主、自由、人権は譲らない」と公言してきた。
価値観外交である。だから、慰安婦問題では、矛先が日本に向く。安倍晋三首相が日本軍による狭義の強制性を否定したことは、カナダでも問題になった。マッケイ外相は「遺憾」を表明し、「カナダは、第二次世界大戦中に大きな苦痛を受けた慰安婦に深く同情する」と答弁した。「カナダも安倍批判の国々のリストに加わった」と地元メディアは報じている。
そのうえマッケイ答弁は、日本をダシにした中国向けの関係改善のシグナルでもある−−そう地元メディアは分析している。したたかな外交だ。
かくして、カナダ下院の人権問題小委員会は、日本に対して、慰安婦に公式謝罪し、補償するよう求める決議を採択した。かつて「河野談話」で鎮静化させた「従軍慰安婦」問題は、カナダにも飛び火した。「性奴隷」という北朝鮮の使う概念が、メディアに広まってしまった。
10年前、英国は植民地・香港を中国に返還した。前途に不安を感じた香港系華人が、英連邦の一員であるカナダに多数移民した。中国本土からも移民した。その結果、太平洋岸のブリティッシュ・コロンビア州を中心に華人社会が形成された。カナダは、華人が一定の政治的発言力を持つ国である。
今回の慰安婦問題は、米国のマイケル・ホンダ下院議員が火をつけた。日系人なのに日本の顔に泥を塗るのかと怒っている日本人が結構いる。
かつて日系の米国市民は、自分たちが日本軍国主義と相いれない価値観を持つことを証明するために、第442部隊に志願して欧州戦線で血を流したような苦難を味わった。それでも日系という理由で強制収容所に送られ、人権を侵害された。ホンダ氏らの運動によって米国政府は過去の過ちを謝罪した。だからホンダ氏ら日系米国人が、日本軍による人権侵害を糾弾するのは不思議ではない。
自民党に「価値観外交を推進する議員連盟」ができる。「安倍外交」の応援団だという。「価値観外交」とは、民主、自由、人権が国際常識だ。ハーパー首相が聞けば、慰安婦に謝罪する議連かと思うだろう。(専門編集委員)
毎日新聞 2007年4月5日 東京夕刊
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