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浅野曰く、障害者「自立」支援法は「法律の名称そのままに、障害者の自立を支援しようという目的が明確」(浅野史郎 夢らいん)
http://www.asyura2.com/07/senkyo31/msg/960.html
投稿者 heart 日時 2007 年 3 月 10 日 08:51:00: QS3iy8SiOaheU
 

http://www.asanoshiro.org/sinbun/06/060703-asahi-jiryujiron.htmより転載。

2006年7月3日
朝日新聞 時流自論  
執筆原稿から

障害者が真に自立するには

 障害者自立支援法が4月に施行された。10月からの本格施行を前にして、現場では、自立支援法の趣旨には賛同しつつも、悩み多き日々を送っている。

  自立支援法が目指す方向に間違いはない。法律の名称そのままに、障害者の自立を支援しようという目的が明確だ。これは特筆すべきことである。

  「自立」の究極の形は、就労による経済的自立である。その手段として、福祉的就労を含めた雇用の推進、実践的な訓練などが用意されている。

 就労しなければ、障害者は自立していないというものではない。ふつうの場所で、ふつうの生活をしたい。住む場所も含めて、自分の生活のありようを自分で選び取ること、これも「自立生活」と呼んでいい。そういった自立生活をあきらめざるを得ない環境に置かれている障害者がいかに多いことか。

 自立支援法は、障害者の地域生活支援が柱である。宮城県は、04年2月に「みやぎ知的障害者施設解体宣言」を発した。その趣旨は、知的障害者が入所施設で何十年も暮らさざるを得ない状況は望ましくない、「ふつうの場所で、ふつうの生活を」の夢をかなえるために、地域生活支援が大事というものである。自立支援法は、そのため の力強い援軍であると私は受け 止めた。

 自立支援法では、夜問ケアと 日中ケアの分離が示されている ので、日中の活動は、街中の施 設で行い、夜は宿泊のために戻 ってくるという生活パターンが 可能になる。利用者にとって は、生活の幅が広がり、望まし いことである。宮城県の船形コ ロニーは、重度の知的障害者の 入所施設として73年にできた が、02年11月に「解体宣言」を発した。この宣言に基づく利用者の地域移行の取り組みは、自立支援法の目指すことを先取りしたともいえる。

 夜間・日中ケアの分離によって、船形コロニーに限らず、施設解体は実現してしまう事態が予想される。施設側から見れば、夜間ケアの提供で施設が得る単価は、これまでの入所施設の運営単価と比べて格段に低くなり、夜間ケアの実施だけでは施設の経営は成り立たなくなるからだ。何十年も施設入所をするのが当然と思われていた利用者にとっては、新しい生活への可能性が、この面から大きく開けていくことが期待される。

  自立支援法では、精神障害者も対象になる。03年度からの支援費制度でも、精神障害者は対象外だったから、大きな前進である。遅れていた精神障害者への福祉施策が、やっと他の障害区分の人たちに追いつくことができた。

  こういった特筆事項が多い自立支援法であるが、本格施行を前に、関係者が悩み多い日々を送っているのには理由がある。

  単純に、財源の問題である。具体的には、障害者に対するサービス単価が低く設定されているために、サービス提供に十分な人員配置がむずかしくなる。このことに、障害程度区分の認定の問題が加わる。

 問題は、知的障害者、精神障害者の障害程度が低く認定される傾向があることである。精神障害者の多くは、日常生活において介護を含めた支援を常時は必要としない。一部の知的障害者も同様である。それでは、そういった障害者が一人で生活できるかといえば、そんなことはない。身体に重い障害を持った人への介護は目に見えて、誰にでもその必要性はわかるというのとは対照的である。

 近年、知的障害者、精神障害者の地域生活を支えてきたグループホームはすごい勢いで伸びているが、その動きが自立支援法の下で頓挫しかねない。グループホームを利用する知的障害者の障害程度が軒並み低く認定されようとしている。障害程度が軽いと認定された知的障害者については、1人あたりの単価が低いために、グループホームとして必要な人員を配置することができなくなる事態が十分に予想される。私が会長を務める宮城県杜会福祉協議会が運営するグループホーム・ケアホームでの試算では、そういった結果になる。どうやって打開するか頭を痛めているところである。

 一般企業への就労は困難であるという障害者が多い。そんな障害者が通ってくる作業所の運営についても、問題は提起されている。そもそもの単価が低いことのほかに、「1カ所20人以上」といった定員要件が設けられるので、市町村単位ではそれだけの人数を集められずに、作業所の運営を断念せざるを得なくなるおそれがある。

  実施主体となる市町村の職員の専門性をどう確保するかも課題である。市町村の担当者が、そもそも自立支援法の実施にあたっての問題点を認識していないという問題も無視できない。

 実践面での懸案山積の自立支援法であるが、そのことを糾弾しようとは思っていない。この時期に、障害者の自立、地域生活の支援という方向を明確に示したことは、高く評価している。75点の出来の法律とすれは、25点分足りないところを、現場から適時適切に、具体的に指摘すべきものである。その意昧では、「ご無理ごもっとも」と物分かりをよくするのではなく、「ここがおかしい、これでは動かない」と早い時期に提言することこそが、現場の責任であると痛感している。

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