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住民の立場で「考える葦」に
豊田(*記者)矢祭町は、最近では全国から寄贈された本を収蔵する「もったいない図書館」を開館するなど、ユニークな町政で注目されていますが、これは裏返せば、ほかの市町村に特色がない証左でもあります。「根本町政」の哲学、原理原則はなんでしょうか。
根本 当たり前のことをしているだけなんですよ。公務員は努力せず、他動的で、税金をむさぼっている。私は、町民の立場から、それが見えるんですよ。公務員を全部なくして、全く別のものを育てないと、日本は駄目になる。町民は皆そう思っているし、日本中そう思っています。税金をみんなで食ってしまいましょうということが、日本にとって一番つらいことです。でも、公務員にそれが何年たっても分らないんですよ。
豊田 公務員はいつごろからそういう存在になったのですか。
根本 明治時代からですよ。明治政府が統治のため使い走りに使った官僚・公務員という組織が、いつの間にか独り歩きをし始めて、鵺(ぬえ)のような存在になってしまった。中国で言えば、宦官(かんがん)でしょうね。日本はまだ、そこまで落ちてはいませんが、志が低いんです。
豊田 志が高い人もいるのではないですか。
根本 そのレベルの問題です。全体を覆うものがどうしようもないところまで来ている。私は町の人から、町職員を尊敬しますという言葉を聞いたことがない。矢祭町ばかりではないですよ。これを直さないといけません。地方自治にとって正しいことは、住民の立場で考え、判断することです。町職員にそれがちゃんとできれば、私は言うことはありません。私が町長でなければ、町職員は楽でしょうがないでしょうね。
豊田 失政のツケが住民に回ることは、夕張市を見ても明らかです。夕張市はどうして財政破たんを回避できなかったのでしょうか。
根本 夕張市は、約12万人という最多人工を記録した1960年当時、職員が約400人いましたが、人口1万7000人の今も、職員数はそれほど変わっていません。人口が多いときと同じように、職員に給料を払い、予算を組んで、揚げ句の果てには借金しながら、観光で飯を食いましょうなんて、何寝ぼけたことを言っているのかねぇ。40近い観光施設を造って、600億円の借金をつくった。その発想がまずい。他動的なんですよ。自ら耕して生産性を持って生きていかねばなりません。でも、夕張は1秒でよくなります。
豊田 なぜですか。
根本 夕張市が破たんして、給料が減らされると知ったら、職員は驚いて、勧奨退職でドット辞めましたね。あれで決まりです。あの人たちがいなければできない行政の仕事なんて、何もないんですよ。人件費を減らせば勝負はついたんです。辞めさせようとしても、地方公務員法で辞めさせるわけにいかないんですから。
豊田 地方自治とは本来、自分たちの町のことは自分たちが決めることですが、中央集権的国家の日本では、地方が自立しようとしても、自分たちのことを決められません。このことがいろいろな問題につながっているのではないでしょうか。
根本 国が決めたことには無駄が多い。市町村合併は、その最たるものです。地方分権を掲げて合併に追い込み、素直に従えば、特例債で金をもらえるなんて。地方自治体は今、考える葦ではないんです。(国と地方の税財政を見直す)三位一体改革も邪道です。全国知事会も3兆円の税源移譲で妥協すべきでなかった。なぜ3兆円なのか、積算根拠がない。地方分権といいながら、補助金システムをどうしようとか、起債をどうしようとか、そういう議論ががありませんでした。
豊田 矢祭町政の今後は。
根本 役場は安っぽい仕事を抱え込み過ぎました。税金で仕事をするわけですから、経済行為でできるような仕事は当然、淘汰されるできです。地方自治体の形態、組織を新しい、本来あるべき姿に戻そうと思います。矢祭町は小さな地域ですが、壮大な実験をしていると自負しています。今後、自分が(町長として)やるかどうかは別にして、このルールに乗っかっていけば、半端でない町役場ができます。周辺自治体には自覚がありませんから、矢祭町が一歩抜きんでるには千載一遇のチャンスなんです。
「東京新聞」3/6 紙面より
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