★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK31 > 740.html ★阿修羅♪ |
Tweet |
□徹夜の攻防 [国会TV]
http://seiji.yahoo.co.jp/column/article/detail/20070306-01-0601.html
2007年3月6日
徹夜の攻防
平成19年度予算案が徹夜の与野党攻防を経て3日未明に衆議院を通過した。予算案が未明に可決されたのは20年ぶりというから、与野党馴れ合いの55年体制末期以来ということになる。55年体制では、選挙で勝つことを放棄した野党が、時の政権を揺さぶる唯一の手段として予算を成立させない戦術をとった。予算委員会の審議に一切応じず、会計年度が始まる4月を過ぎても予算を成立させないと政府の機能は麻痺状態になる。よく「刑務所の飯が出なくなる」と言われたが、行政の長である総理大臣は責任を取らなければならない。1989年、5月に入っても予算が成立しなかったため、竹下総理は予算の成立と引き換えに自ら退陣した。しかし総理の首を取ったからといって野党が権力を握れるわけではない。自民党の他の実力者が権力者になるだけで、野党は自己満足のために国民生活にもプラスにならない審議拒否をやってきた。
20年ぶりという異例の予算審議について、与党は「大義なき抵抗戦術」と野党を批判し、野党は「数の暴力で採決が強行された」と与党を批判している。一体何が起きたのか、3月2日の出来事を時系列で紹介する。
この日与党は午前9時から始まる予算委員会で平成19年度予算案の締めくくり質疑と採決を予定していた。予算の年度内成立にはこの日がタイムリミットである。野党は事務所費問題で辞任した佐田前行革担当大臣と違法な就労形態が指摘されているキャノンの御手洗富士夫会長の参考人質疑を行わない限り採決には応じないとして、これを拒否していた。しかし前日に金子一義予算委員長が職権で開会を決めた。
午前9時、締めくくりではなく一般質疑ということで野党も出席し委員会が開かれた。冒頭、馬淵澄夫議員が松岡農水大臣と高市内閣府担当大臣に質問を求めたが、二人とも委員会に出席していなかったため2時間にわたって審議がストップした。11時すぎに二人が出席して審議が再開され、午後1時すぎまで質疑が行われた。午後2時過ぎからいよいよ締めくくり質疑が行われたが、質疑者は自民党議員一人で、30分ほどで質疑は終了、委員長は野党に質問を求めるが野党は質疑者の名簿を提出しない。委員長席を野党の理事が取り巻いた状態のまま3時間近くが経過した。午後5時半、金子委員長が質疑終了を宣言すると野党議員が委員長席にどっとつめかけ、マイクを奪うなどしたため、委員長は討論なしで採決を行い、怒号が飛び交う中で予算案は可決された。その後総務委員会と財務金融委員会が相次いで開かれ、いずれも与党議員だけが質疑を行い、野党議員が委員長席を取り巻く中で予算関連法案が可決された。
午後5時から予定されていた本会議は開会が夜の10時半にずれ込んだ。野党は予算委員長、総務委員長、財務金融委員長の解任決議案を提出、いずれも「記名投票」を要求したことで、これだけでも4時間以上の審議が必要と思われる。野党は徹夜の国会にする覚悟だ。しかし既にこの時点で参議院では5日の月曜日に予算委員会を開くことを与野党が合意しており、予算が衆議院を通過することは与野党とも全員が了解している。分かってはいるが「抵抗する」姿勢を野党は見せようというわけだ。誰に見せるかと言えば国民である。それならば国民の共感を呼ぶ見せ方をしなければならない。
本会議ではまず民主党の枝野幸男議員が予算委員長解任決議案の理由を述べた。これがいけない。時間を長く引っ張って予算の採決時間を先延ばししようと言う意図なのだろうか、だらだらと冗漫な演説が続いた。これでは国民の共感を得るどころか、民主党の支持率がまた下がってしまうような演説だ。
外国議会でも長い演説を行って野党が抵抗する戦術はある。しかしその場合でも、演説によって議場にいる議員達に訴え、支持を得ようとする情熱がなければ、ただ反発を呼ぶだけで何の効果もない。
演説をするのも政権批判をするのも政治家だけではない。評論家やジャーナリストも同じ事をやっている。しかし政治家が他と違うのは、常に「命がけ」でなければならないという事だ。政治家の言葉は選挙の当落に直結するという意味で政治生命にかかわる。また文字通り命を狙われることもある。だから政治家には演説に魂を込めて欲しいと思う。口先ばかりの人間は本来政治家には最もふさわしくない。ところが最近の政治家には弁舌をテクニックと考えるタイプが多いように思う。テレビのアナウンサーやタレントの言葉が耳には心地良くとも心に残らないように、政治家の弁舌もさわやかなだけで心に響く言葉が少ない。むしろ年配議員の方に木訥でも印象に残る言葉を吐く人が多い。
いずれにしてもだらだらと1時間半ばかり演説が続いたところで河野議長が延会手続きのため休憩を告げた。日をまたいで午前0時半に本会議が再開され、自民党の二階国対委員長らから解任決議案の説明を15分以内に制約する緊急動議が提出された。枝野議員の長演説に対する対抗措置である。ところが休憩の間に民主党の小沢代表が議場から退出したようで、反対討論に立った自民党の馳議員がそのことを指摘する。確かに徹夜の攻防は体にこたえる。それならば何故そんな戦術をとるのか辻褄が合わない。午前1時50分、予算委員長解任決議案は大差で否決。続いて2時半頃に総務委員長の解任決議案も否決。河野議長が退場し横路副議長に交代したところで、なにやら与野党折衝が始まり、しばし議事は中断。結局、財務金融委員長の解任決議案は提出されないことになる。徹夜も辞せずだった筈が、結局は早くやめようという訳だ。何がなんだか分からなくなる。
午前3時前にようやく平成19年度予算案が議題となる。民主党の馬淵澄夫議員の反対討論は良かった。怒りが伝わってくる討論だった。松岡農水大臣の秘書が二つの名前を使い分けているという奇怪な事実の暴露もあった。この人の演説はうまくはないが、何かを伝えようという気迫がある。これが政治家の弁舌だと思う。こうして午前3時52分、予算案が可決された。
本会議後の民主党鳩山幹事長のコメントの中に「こうなったら選挙で国民に判断を求める」というのがあったが、ちょっと待ってくれと言いたい。国会はまだ終わっていない。予算が衆議院を通過しただけだ。それで山場を超えたという考えは55年体制の「予算を人質に政権を揺さぶる」という悪しき慣行に毒されてはいないか。これから安倍政権が「安倍カラー」と考える重要法案が次々に出てくる。それに対して国民の心に響く弁論を展開出来るかどうかが野党に問われている。最後は多数を占める与党に勝てるわけはないのだから、成立を阻止は出来ないが、国民の心に残る言葉を発する事が出来れば、それが選挙で生きてくる。それこそが野党のやるべき事ではないか。
今度の参議院選挙の争点は、実は憲法でも格差是正でもないと私は思っている。衆議院で三分の二を占める巨大与党に、今後もやりたい放題やらせるようにするかどうかが最大の争点だ。与党が参議院を制すれば、それこそ何でも出来るようになる。それを国民に問うのが野党のやるべき事ではないか。そう考えれば、与党にはやりたい放題にやらせ、その上で問題点を浮き彫りにし、それに対するメッセージを国民に発する事が必要なのだ。
政権交代を求めなかった野党の時代は終わり、政権交代を求める時代が始まったのだから、野党の抵抗戦術も国民の共感と離れたところで行われるのではなく、選挙に有効な戦術・戦略を組み立てて行うべきだと徹夜の攻防を見ながら考えた。
▲このページのTOPへ HOME > 政治・選挙・NHK31掲示板
フォローアップ: