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2007.2.28
森田実の言わねばならぬ[87]
平和・自立・調和の日本をつくるために【66】
日本再生のために何が必要か(その3)
【以下は1月26日の「社民党前議員の会」で行った私の講演録の「その3」です】
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安倍首相は小泉政治を継承しています。先日、安倍首相の側近と見られる人から「会ってお話をしたい」という電話がありました。その人は、「安倍首相は小泉前首相とは違う政治をやりたいと思っている」と言っていました。
安倍首相は総理大臣に就任してすぐ、06年10月に中国、韓国を訪問しました。このことは年の初めから時間をかけて準備していたそうです。また、安倍首相は、郵政民営化問題で自民党を離党した人たちを早く自民党に戻したいと念願していて、それらの人たちとの連絡を絶やさなかったといいます。
安倍首相は小泉前首相の強力なバックアップにより自民党総裁に当選し総理大臣になった人です。ですから、小泉前首相と違った政治をやりたいといっても、小泉路線を否定する勇気はないでしょう。小泉前首相にはまだ相当な影響力がありますから、安倍首相は小泉氏と喧嘩をするわけにはいきません。
小泉前首相の力の背景について少し説明します。2002年2月18日、東京で日米首脳会談が開かれました。アメリカのアフガニスタン攻撃前夜の時期です。ブッシュ大統領は、アフガニスタンを攻めるにあたって、アフガンと国境を接する中国と話をつけるため、ソウル、東京を経由して北京を訪問しました。北京へ行く前にブッシュ大統領は小泉首相と会談したのですが、そのとき小泉首相はブッシュ大統領に2つのことを約束します。
1つは、日本は有事立法を制定し、その法律に基づいてアメリカと行動を共にするという約束です。この重大な約束について日本の新聞はほとんど報道しませんでした。アメリカではブッシュ大統領自身が大統領府でこのことを発表しました。
当時、民主党の影の内閣の防衛庁長官だった前原誠司さん(前代表)が、この有事立法の制定を積極的に推進しました。民主党が賛成したことで、この立法をめぐり政治論争は起こりませんでした。大新聞も有事立法を支持しました。このことはたいへん重大な問題をはらんでいます。有事の際に日本はどう行動するかという法律が、論争らしい論争もなくあっさりと成立してしまったのです。
もう1つは、総額何百兆円にも上る「オール日本が保有しているアメリカ国債(米財務省証券)はアメリカ政府の了承なしに決して売りません」と小泉首相はブッシュ大統領に約束しました。このことを小泉首相はブッシュ大統領に誓ったのです。
小泉首相からこの2つの約束をとりつけたブッシュ大統領は大喜びでホワイトハウスにおいてブッシュは「アメリカ外交の大勝利だ」と演説しました。
このような小泉首相の徹底したブッシュ従属路線により、小泉首相に対する米共和党政権の評価は高まりました。レーガンに尽くし抜いた中曽根元首相を上回り、いわゆる“日本共和党議員団”のなかにおける小泉首相の格が上がりました。そして2003年11月、第43回総選挙の際に、小泉首相は中曽根、宮沢の両元首相を引退に追い込みました。小泉首相にそれができたのは、米共和党人脈の日本の第一人者が中曽根から小泉に代わったからでした。米共和党の実権をブッシュが完全に握りました。このブッシュの後ろ盾があったからこそ、小泉首相はあれだけ好き放題、勝手放題ができたのです。
しかし、いまやブッシュ体制は傾いています。ただ、衰えたりとはいえ大統領ですから力はあります。安倍首相には、いまだにブッシュ大統領と米共和党の後ろ盾のある小泉前首相に逆らってまで自分のやりたいことをやる気概はないと思います。安倍首相が小泉政治批判をやり始めれば、人気は上がるでしょう。
もう一つ、安倍首相にとって頭が痛いのは、小泉政治の「負の遺産」が最近になっていっぺんに表に出てきたことです。格差の問題、地方切り捨ての問題、医療の問題、高齢者の問題、教育の問題などなど、あらゆる問題が噴出しています。小泉政権の悪政によって日本は、働いても働いても生活保護以上の給料が得られないワーキングプア層が5500万就業労働人口のうち15%を占めるというとんでもない社会になってしまいました。安倍首相はこの問題に真正面から取り組まなければ、国民の支持が得られない状況に追いつめられています。
よほどの幸運、奇跡が起これば別ですが、このままでは安倍政権は7月22日の参院選で敗北するでしょう。自民党、公明党の議席が合計して122の過半数に達せず、総辞職する状況に追い込まれると思います。1つや2つではなくかなりの議席を減らして過半数を割り込むことになると予想されますので安倍政権はもたない。
他方、小沢一郎民主党代表は、参院選で勝てなかったら、代表を辞めるでしょう。
7・22参院選は自民党総裁、民主党代表の両方が政治生命を賭けた勝負になります。ただ、小泉政治の負の遺産が噴出してきた現在、とても自公連立側が勝てる状況ではないと思います。政局大変動の時代に入るでしょう。
1月21日に宮崎県知事選がありました。私はその翌日、講演の仕事で宮崎市へ行ってきました。宮崎県議会は伝統的に保守系が圧倒的多数を占めています。企業経営者はほとんどすべて自民党支持という土地柄です。その宮崎で東国原英夫(そのまんま東)知事が誕生しました。東国原氏は県内すべての市でトップの得票を得ました。川村候補は林野庁出身で、保守の一部と社民、民主が推した人ですが、この人は林業地帯のいくつかの町村でトップの得票を得ましたが、市部では一つもトップを取れませんでした。自民・公明両党が推薦した持永候補は惨敗でした。
宮崎県知事選の投票率は65%に達しました。保守王国・宮崎で起こったことが、これから日本全国で起こるのではないかというのが私の実感です。
選挙後、宮崎で銀行の頭取や経営者団体の幹部の方々に会って話を聞きました。彼らはこう言っていました。
「宮崎県民は東国原氏を知事に選んだ。われわれは保守系の候補を応援してきた。それだけに素直になれない人もいるが、そんなことを押し通したら宮崎はおしまいになる。宮崎県民が東国原氏を知事に選んだ以上、われわれは彼を支えなくてはならない」。
東国原知事のもとで団結して宮崎県を発展させていこうという機運が、従来保守を支持してきた宮崎県の経済界にも生まれつつあります。宮崎県の経済界には立派な人格者が多い。私は大いに感心しました。 2月4日には愛知県知事選と北九州市長選と与野党対決の選挙があります。私が聞いてる範囲では、愛知県は今は、現職の自公推薦の神田候補がリードしているが、民主党・社民党・国民新党の野党3党が推す石田候補は大変いい候補なので最後は大接戦になるのではないか。北九州は自公推薦の国土交通省出身の候補より、野党3党推薦の北橋候補の方がいいのではないか。もちろん選挙ですからどちらに転ぶかわかりませんが、野党側が善戦する可能性は高いと思います。
07年統一地方選は小沢一郎民主党代表の方針で与野党対決型選挙になります。私は民主党員、民主党の国会議員のみなさんに対して、「自民党は公明党と一体化して共闘している。民主党は社民党と国民新党と3党協力して共闘しなければ勝てない。団結して3党の協力を実現してもらいたい」と折に触れて訴えています。 民主党は、06年4月に小沢代表になるまでは、野党共闘という考えはありませんでした。小沢代表は、2006年11月の沖縄県知事選で糸数候補を当選させるためには全野党共闘しかないと判断し、それを推進し実現しました。
自民・公明の全面支援を受けて当選した仲井真候補は経済産業省出身で元沖縄電力会長という経歴の人です。そのために、電力会社の労働組合は自公側につきました。このとき電力の労働組合は、「共産党とは共闘できない」という理屈を使いました。沖縄県知事選では電力をはじめいくつかの旧同盟系の組合は自公側についたのです。このことを新聞は一切書きませんでした。
糸数候補と仲井真候補の票差は3万7318票でした。ある国家公務員の労働組合幹部が「期日前投票の約10万票は、そのほとんどが電力総連および同盟系労働組合の票だ」と言っていました。出口調査では糸数候補の方が上回っていたのですが、それが期日前投票の開票でひっくり返ってしまいました。私は、小沢代表に会ったとき「沖縄県知事選はなぜ負けたか」と聞きました。小沢さんは、「電力をはじめ一部の労働組合が自公側へ行って一生懸命に運動をした。これにやられた」と言っていました。
旧同盟系組合の行動によって全野党路線は事実上つぶれました。共産党も「全野党共闘はしない。民主党は自民党と同じ。独自に戦う」と志位委員長が宣言しました。野党として軽率な判断だと思います。自公連立側は野党の分裂を喜んでいます。
安倍首相は沖縄県知事選で憲法問題を出してきました。「憲法で戦えば民主党は割れる」というブレーンからの進言をいれたのでしょう。民主党には、前原前代表、鳩山幹事長、枝野憲法調査会長など、憲法改選論者がかなりいます。憲法改正の実現のため自民党と組みたいと考えている幹部もいます。
1年ほど前、鳩山幹事長主催の講演会に呼ばれて札幌へ行きました。講演のあと私と対談をするという企画でしたので、私は事前に鳩山さんに私の考えを伝えました。
「あなたはお爺さん譲りの憲法改正論を変えることはないだろう。しかし、野党として政権を取る前に、自民党と一緒になって憲法改正をやるというのでは、民主党はいらないということではないか。民主党の存立を否定することにならないか。せめて野党のときは自民党の憲法改正は阻止する態度をとってほしい。憲法改正はあなたご自身の政治哲学だから変わらないと思うが、それは政権をとってから考えるというのが政党人としての筋ではないか」と申し入れたことがありました。これが原因かどうかはわかりませんが、対談は取りやめになりました。
枝野憲法調査会長は「先制攻撃は憲法違反ではない」とテレビで発言しました。あのとき私は、枝野憲法調査会長のような右翼が民主党にいては民主党は永久に政権は取れない、枝野は直ちに民主党を離党すべし、離党しないのなら民主党は枝野を直ちに除名すべし、HPと主張しました。
民主党にはこういう右翼が多くなりました。そこにつけ込んで、「憲法問題を出せば民主党はバラバラになる」と進言している者が安倍首相周辺にいるのです。悪知恵です。
現在の政治課題は、小泉改革で滅茶苦茶にされた日本をどう立て直すかです。これが喫緊の中心課題です。 私は憲法改正反対の立場をとっています。しかし、憲法改正を肯定する立場の者でも、いまは憲法改正を持ち出す時期でないという程度の政治的良識はもつべきだと思います。
民主党がひっかかっているのは国民投票法案です。憲法96条は憲法改正の手続きに関して国民投票の実施を定めています。公職選挙法第9条は20歳以上の日本国民が選挙権を有することを定めていますが、自民党は国民投票権をこれと同じにしたいと考えています。民主党はこれを18歳に引き下げたい。同時に選挙権も18歳に引き下げるという対案を出しました。さらに、20歳以上を成年とするという民法の規定を18歳以上に引き下げる案も出しています。自民党は「改正のために3年間の猶予をもらいたい」と民主党に申し入れ、民主党はこれをいったんは了承しました。
小沢代表はいま、憲法改正論議を避けています。憲法改正に通ずる国民投票法案についても、民主党が自民党と一緒になってやれば、野党共闘は壊れてしまいます。そこで、小沢氏は自民党との協調にストップをかけました。しかし、タイミングが遅れ、自民党は民主党の案を取り込んで自民党単独の修正案として、民主党に賛成させるようまとめようとしています。
安倍首相は今夏の参院選で憲法改正を争点としようとしていますが、憲法改正には二つの大きな壁があります。第一は、改憲派が衆参両院で3分の2以上の勢力を占めなければならない。国会は、衆参両院における3分の2以上の賛成をもって国民に憲法改正を発議できるのです。
もう1つは、憲法改正のためには、「国民投票または国会の定める選挙の際に行われる投票で国民の過半数の賛成を得なければならない」(憲法第96条)のですが、この肝心の国民投票法がわが国にはないのです。この国民投票法案について通常国会の前半に切り抜けることができれば、俄然、安倍首相は有利になります。民主党は本当に愚かな選択をしました。小沢代表は民主党と自民党の協調をつぶそうと躍起になっていますが、民主党はそういう非常に危なっかしい状況になっています。
逆に、民主・社民・国民新の3党協力ができて自公連立勢力との争いになれば、今夏の参院選で与野党が逆転する確率が非常に高くなります。なぜなら、比例区において自民党はせいぜい15議席程度しか取れないからです。
自民党は衆議院選挙で2度、参議院選挙でも一部でやりましたが、選挙区で当選したいがために公明党・創価学会の協力を仰ぎました。選挙区の自民党候補は、公明党・創価学会票をもらうかわり、「比例区では公明党と書いてください」といったのです。05年9月11日の総選挙ではこの方式を徹底しました。その結果、小選挙区での自民党の議席はかなり増えました。反面、比例区では伸びませんでした。民主党と同じぐらいの票しか取れていません。
ことし7月の参院選において、比例区で自民党は上限が15議席、公明党も上限が8議席、合わせて、23議席ぐらいしか取れないでしょう。私はもう少し少ないとみていますが、48議席の改選ですから、比例区では過半数以下です。
選挙区では、東京の5人区で自民党は2人立てるでしょう。2人立てればよくて1人当選です。1人だけ立てれはゼロになるとも言われています。民主党は2人立てます。2人とも取る可能性があります。そうすればここで1議席差が出ます。3人区の千葉、埼玉、神奈川、愛知、大阪では自民党は1つ取るのがやっとです。民主党は愛知で2つ取ると言っています。可能性はあります。12ある2人区は1対1と見ています。
決戦場は29ある1人区です。にもかかわらず、民主党は全選挙区に候補者を擁立することが困難になっています。なにがなんでも候補者を探してきて立てるという執念が感じられません。いい候補を出しさえすれば1人区で議席を取れる状況にあるだけに、民主党の奮起を望みたい。そのためにも野党共闘が必要です。
ともかく、地方・地域は小泉構造改革によって破壊されました。中国地方の中山間地がどうなっているか、その実態調査の結果を中国新聞が報じていました。それによると、中国地方の中山間地では世帯数がどんどん減り、集落そのものがなくなっていて、その数は1950カ所にも達しているとのことです。
これが小泉政権の三位一体政策の結果です。小泉構造改革によって地方、地域は破壊されました。交付金を減らし、公共事業をやめ、市町村の合併を推進した。地方議員の数も減り、とくに自民党の選挙運動の実働部隊が地域から消えつつあります。草の根保守は壊滅状態です。保守系候補を支えてきた基盤が地域から失われているのです。55年体制の時代、社会党が自民党の壁を打ち破れなかったあの地域保守の壁が、いま、小泉構造改革の結果、壊れつつあるのです。
私は、参院選の勝敗は民主・社民・国民新の3党共闘ができるかどうかにかかっていると思います。3野党共闘の成否が7・22参院選の勝負の鍵を握っているとみています。
3党共闘ができるかどうかは、小沢一郎民主党代表が憲法改正に通ずる国民投票法における自民・民主協力をつぶすことです。そうすれば、3党共闘は可能です。これができるかどうか。多少時間はかかるでしょうが、私は可能だと考えています。そういう方向に4月頃までにもっていければ展望は開けてくると思います。
http://www.pluto.dti.ne.jp/~mor97512/C03201.HTML
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http://www.pluto.dti.ne.jp/~mor97512/C03197.HTML
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