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http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20070228/mng_____tokuho__000.shtml
熊本市の慈恵病院(蓮田晶一院長)が計画中の赤ちゃんポスト「こうのとりのゆりかご」の設置について、厚生労働省が事実上容認したことに対し、政府首脳から異論が噴出、波紋を広げている。捨て子を助長し、安倍政権が掲げる「美しい国づくり」にふさわしくないというのがその理由のようなのだが、ポスト設置は本当に捨て子を助長するのだろうか。
「命一つ一つを大事にするのが美しい国ではないでしょうか」
政府首脳からの相次ぐ反対論に対し、慈恵病院の蓮田太二理事長は二十七日、こう語った。
昨年十一月に明らかになった赤ちゃんポスト構想が大きく動いたのは今月二十二日。厚労省が、医療法上の施設の用途変更の許可申請を受けている熊本市の幸山政史市長に「児童福祉関係法令などに違反するとは言い切れない」と説明。辻哲夫事務次官も記者会見で「変更許可を認めない合理的理由はない」と話し、事実上の容認と報道された。
ところが、翌二十三日になって、政府首脳から相次いで異論が噴き出した。
安倍晋三首相は「私はポストという名前に大変抵抗を感じる。子どもを産むからには、親として責任を持って産むことが大切」と発言。別の形態のものを考えるのか、との質問には「既にそういうお子さんたちに対応する施設もある。匿名で子どもを置いていけるものをつくるのがいいのか、私は大変抵抗を感じます」と消極姿勢を見せた。
高市早苗少子化担当相も子どもを捨てる風潮を助長する懸念を表明。塩崎恭久官房長官は「美しい国づくりを目指す安倍内閣としても、一般の日本人からしても、親が子どもを捨てる問題について法律以前の問題と考えなければいけない」と不快感をあらわにした。
厚労省は「(二十二日と)基本的な考え方は変わっていない」と説明。しかし、今後の方針については「子どもが命を落とす事件があることは考慮しなくてはならないが、容認すると言っているわけではない。保護者が子どもを放置する行為は認められないという点では(首相らと)一致している」と言葉を濁す。トーンダウンした印象は否めない。
こうした首相らの発言を、当事者である慈恵病院関係者はどう受けとめているのか。
蓮田理事長は「異論があるのはもっともだが、人間は追い詰められると、思考力がなくなってしまう。よく考えたら分かってもらえると思う」。首相が反応した「ポスト」という呼び名は、ドイツの赤ちゃんポストを紹介したビデオから取られたもので、慈恵病院では「こうのとりのゆりかご」と命名している。
捨て子を助長するという見方については、田尻由貴子・看護部長は「そうは思わない。十カ月もおなかにいた赤ちゃんを簡単に捨てられない。預けた後、電話があると思う」と強調する。
匿名性の問題についても「両親にも誰にも話せず、困窮する女性の心理がある。『ゆりかご』に捨ててくれということではなく、相談しやすい雰囲気をつくりたいんです。一般の方にはなかなか分かっていただけないが、これからも説明していきたい」と決意に揺らぎはない。
一方、思わぬ政府首脳からの反対論に、許可権限を持つ熊本市も困惑気味だ。同市の担当者は「私たちは(設置の)是非ではなく、法律に抵触するかを検討している」。厚労省には正確を期すため、文書での回答を求め、「正式回答を待って総合的に判断したい」としており、依然として運営開始のめどが立っていないのが現状だ。
ところで、赤ちゃんポストはそもそも捨て子助長につながるのか。
「現状でも捨て子はたくさんいるし、捨てる親はポストの有無に関係なく、捨てる。助長することはありえない」と話すのは、里親などで組織する「東京養育家庭の会」理事で里親でもある竹中勝美さん(50)だ。
■養子縁組や里親「早いほどいい」
厚労省の二〇〇三年二月の調査では、児童養護施設にいる児童三万四百十六人のうち、在所年数が五年以上が約三割で、十年以上も全体の一割を超えており、竹中さんは「施設に五年以上いる子は事実上、捨て子同然だ」と言い切る。
また、国内で赤ちゃんポストの設置が検討されているのは今のところ、慈恵病院だけ。竹中さんは「仮に認められても、報道で全国的に注目される中、そんな目立つ施設にわざわざ子どもを捨てにくるだろうか。また、遠方から来るのも考えにくい」と疑問を提示した上で、「問題は助けた子どもをどうするかだ」。
そう話す竹中さん自身も現在、高校一年生の息子(16)のほかに、八年前に、乳児院から里子として引き取って養育中の小学五年生の男の子(11)がいる。
「施設で親や特定の大人とかかわりを持たずに育ったことで、当初は里親に反抗的な態度を取る一方で外で愛情を振りまくなど、人間関係でさまざまな愛着障害があった。養子縁組や里親の元に行くのは早ければ早いほどいい」と指摘。その上で「早く養子縁組ができるよう、赤ちゃんポストに預けた時点で、親権放棄し、養子縁組の手続きに入れるなどの法整備が必要。保護するだけではなく、保護後の論議が重要」と主張する。
ドイツでは二〇〇〇年に赤ちゃんポストがスタート。昨年夏時点で、約九十の病院や福祉施設に赤ちゃんポストが設置され、年間約四十人が保護されているが、赤ちゃんポスト設置で捨て子が増えるなどの変化があったのか。
■相談できぬ人の一つの「窓口」に
大阪大の阪本恭子特任研究員(生命倫理学)は「赤ちゃんの遺棄も殺害件数も増えていない」と指摘。その上で「子どもを育てられず、誰にも相談できないという人の一つの窓口になっている。ポストに関係なく、捨てる親は捨てるし、殺してしまう親は殺す」とポスト設置と捨て子の因果関係には懐疑的だ。
ドイツでも「捨て子を助長する」「まず青少年の性教育をすべきだ」「里親の資格認定がきちんとされていない」などの反対論が依然としてあり、「今も法制化はされていない」という。
では、ドイツの赤ちゃんポストとどこが違うのか。
ドイツの場合、八週間内に親が名乗り出ない場合は親権放棄とみなし、積極的に養子縁組の手続きに入れるのが特徴だ。阪本氏も「日本でも、赤ちゃんポストの場合に限らず親権放棄や養子縁組についての検討が必要」と指摘。その上で、今後の課題について「なぜ子どもを捨てるのか、社会的背景に何があるのか、根本原因を考えるべきだ。妊娠に関するカウンセラーなど専門家との連携も含め児童相談所の機能拡充も必要。また、遺棄される子どものために、せめて捨てる前に親が名前を付け、少しでも出生が分かるものを託してくれるものがあればいい」と話す。
そして、最後に赤ちゃんポストの論議を通じてこう提言する。
「生みの親が育てるのが理想だが、児童虐待でも分かる通り、生みの親が育てるのが必ずしもいいとは限らない。生みの親が育てて当たり前という従来の家族観から社会が脱却することも必要だ」
<デスクメモ> 「反応性愛着障害」という言葉を最近知った。乳幼児期に育児放棄や虐待などで親と密接な関係を持たないことで、小さいころから人を愛せなくなるなどの症状だ。さまざまな事情で施設に預けたまま、現れない親も少なくない。ならば、生みの親より育ての親の方がいいのかも。子どもの視点で考えれば。 (吉)
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