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□臨床政治学 永田町のウラを読む=伊藤惇夫〈第3回〉小沢神話の賞味期限 [中央公論]
http://seiji.yahoo.co.jp/column/article/detail/20070227-01-0501.html
2007年2月27日
臨床政治学 永田町のウラを読む=伊藤惇夫〈第3回〉小沢神話の賞味期限
参院選に向け、民主党の命運を託された小沢一郎だが、代表就任以来、手を尽くした選挙対策はことごとく空回り。民主党があやかろうとする“小沢神話”は果たして本物か
永田町には、時として「神話」の世界に住む政治家が現れる。おそらくその先駆者となったのは田中角栄元首相だろう。彼が「目白の闇将軍」となったあと、数々の「田中神話」が生まれた。政権の移動、政局の動向など、永田町政治の流れの背後には常に田中があり、彼の意向がすべてを決めるという「神話」が広く信じられていた。
その後も、「金丸神話」や「野中神話」などが生まれては消えていく。いずれも田中同様、政局を裏で支配している人物として、あるいは表面に現れた事象が理解不能だった場合の“真犯人”として、恐れられつつ尊敬された政治家たちである。ただ、彼らの「賞味期限」は、意外に短かった。いずれも神話の主人公として君臨していた時期は数年に過ぎない。永田町での「神話」は主に周りが虚像を作り上げることで成り立っているから、何かのきっかけで、その人物の実像が露呈すれば、「神秘のベール」は瞬時に消え去る。
そんな中で、おそらくもっとも長い年月、「神話」のベールに包まれてきた政治家が小沢一郎ではあるまいか。「小沢神話」のスタートが四十七歳で自民党幹事長に抜擢された平成元(一九八九)年だとすると、既に二〇年近くも、その世界の住人であり続けていることになる。その間、小沢がどれほど目まぐるしい動きを繰り広げ、数々の成功と失敗、栄光と挫折を重ねてきたかは、くどくどと説明するまでもないだろう。ただ、いえることは時に肥大化し、あるいは縮小したことはあっても、なぜかその神話が消え去ることはなかったという事実である。
今、永田町を見渡しても、「神話」を身に纏っている政治家は他にいない。小泉前首相でさえ、“カリスマ”ではあっても神話上の人物ではなかった。サラリーマン政治家や家業の伝達者に過ぎない世襲政治家、偏差値が高いだけのテクノクラートなどが跋扈する今の永田町を見る限り、おそらく今後、神話の世界に生きる政治家は二度と現れないだろう。自民党が参院選に向けて異常なほどの危機感を露にしているのも、結局は「小沢神話」に怯えているからにほかならない。だが、その小沢「神話」に今、急速な翳りが見え始めている。
小沢は民主党代表に就任以来、いわば党内の全権委任を受ける形で参院選対策を進めてきた。確かに、頭でっかちで体質は虚弱だった民主党の足腰強化や、自民党の支持組織の切り崩しなどは、方向性として納得できるものだが、これらはいずれも、今のところたいした成果を上げていない。郵政造反組の取り込み工作も、ほぼ失敗に終わり、共産党まで巻き込んだ共闘路線は沖縄県知事選の敗北で頓挫した。国民新党や鈴木宗男らへの協力要請は「古い自民党」への回帰を有権者に印象付ける結果となっている。
昨年九月の党役員人事で大量の旧社会党系や旧民社党系議員を主要ポストに起用したのは、参院選での労組票重視路線の表れだろうが、いまや労組票などというものは現実にほとんど存在しない、という事実を理解していないとしか思えない。昨年末に決定した政権政策は、新進党が予想外の敗北を喫した平成八(一九九六)年総選挙の際、小沢が直前に全面修正させた選挙公約を想起させる。この時、小沢は突然、「一八兆円減税」などという荒唐無稽でアメ玉に何重も砂糖をまぶしたような「大甘」公約を強引に決定し、それが「大胆な改革者」イメージに期待していた有権者を失望させることになったが、今回も年金制度改革に関連した消費税の引き上げを封印することで、同様の支持離れを生み出しつつある。なにより、民主党にとっての「生命線」である無党派層へのアプローチが欠けている点が致命的。とにかく、打つ手打つ手がすべて、微妙な“ズレ”を感じさせるのである。
これでは安倍政権がダッチロール状態に陥っているにもかかわらず、民主党が一向に期待感、存在感を高められない状況にあるのも当然かもしれない。
「小沢は有能な政治家だ。だが、それゆえに危険な存在でもある」
かつて後藤田正晴が呟いたこの言葉が脳裏をかすめる。
全面的に「小沢神話」に頼ってきた民主党が今やるべきことは、神話のベールを自ら剥ぎ取って、真の救世主か、それとも危険な破壊者か、その実像を見つめ直すことではないか。
(いとうあつお 政治アナリスト。元民主党事務局長。明治学院大学非常勤講師)
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